『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』インタビュー! “おわらない夏休みの裏話”
ネオスから7月15日に発売された、Nintendo Switch『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』(以下『オラ夏』)のインタビューを、ニンテンドードリーム9月号(7月21日発売)との連動企画でお送りします。
(NDW×ニンテンドードリーム9月号 連動企画)
未プレイの方は、ゲーム本編をある程度遊んでからご覧ください。
綾部 和さん
株式会社ミレニアムキッチン代表、ゲームクリエイター。代表作は『ぼくのなつやすみ』シリーズ、『怪獣が出る金曜日』などがあり、ゲームの制作本数は30本以上にわたる。
Twitter:ayabekaz
長嶋 朗さん
ネオス株式会社、CCO。本作のプロデューサー。『クレヨンしんちゃん お手伝い大作戦』や『いっしょにあそぼ〜♪コウペンちゃん』など主にキッズ向けコンテンツを制作。
『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』とは?
本作は、しんちゃんが過ごす夏休みを追体験するアドベンチャーです。
熊本の町“アッソー“を舞台に、数々の出来事が巻き起こる、ふしぎな1週間が描かれます。
現在、綾部和さんが監修された2ndトレーラーが公開中です。
詳しくはこちらをご覧ください。
ニンドリ9月号では、『オラ夏』の開発秘話やキャラクターの秘密などを、株式会社ミレニアムキッチンの綾部和さん、ネオス株式会社の長嶋朗さんに、たっぷりお話を伺いました。
NDWでは、ニンドリ本誌に載せきれなかったインタビューをお届けします。
綾部さんから見た熊本の夏の風景
―― 北海道在住の綾部さんから見た、熊本の景色の魅力を教えてください。
綾部 ふだん生活しているのが北海道と東京なので、日本の平均的な景色とはまた違うんですよね。私が九州に行って感じたのは、雲が巨大で立体的なところです。入道雲がいかにもモリモリと盛り上がって見える形をしていたり。 いかにも“夏”って風景が多くて。自然色の話で言うと、空気がきれいな分、遠くに見える森の葉の色が綺麗なんですね。北海道と比べると緑の色が濃い、中間色ではなくて原色に近い世界でしょうか。北海道の8月がずっと続いているような感じでした。あと、九州は歴史のある場所、史跡も多いですね。
―― なるほど。
綾部 そして、まっすぐな道がほとんどないので、絵作りは面白かったですね。あとは、熊本でも「とうもろこし」のことを「とうきび」と呼んだりするので、北海道と共通点もあるんですよ。魚も美味しいですし。なので、北海道と比べても、そんなに遠い世界ではないんだなぁと感じました。
歌詞のヒントはリンパ腺!? 綾部さんの独特な作詞センス
―― 主題歌の作詞を担当されていますが、どのような想像から詞に落とし込んでいったんですか?
綾部 2013年に発売した『怪獣が出る金曜日』(発売元:レベルファイブ)もそうだったんですけど、作詞はいつにまにか自分でやることになっていました(笑)。
―― ええっ!?
綾部 最初は「銀河系」ではなくて「リンパ腺が体の中をぐるぐる回る」だったんですよ(笑)。イメージとしては、作品中のあることがモチーフになっています。
―― それは?
綾部 秘密です。それをモチーフにしたくて「ぐるぐる回る」というところから、歌詞を組み立てられないかなぁと考えました。人って悲しいことがあると涙がでるじゃないですか? それって体の中のリンパ腺や血管を通ってきた水分なんですよ(笑)。
―― 確かに(笑)。
綾部 そんなバカなことをふだん考えてる人はそうそういないですよね? 「これもぐるぐる回るひとつの世界の中のことか」ということに気づいて。それでリンパ腺の話で歌詞を作ったら…ダメでした(笑)。
長嶋 正確には全員が反対という訳ではなかったんですよ(笑)。「リンパ腺」は綾部さんらしくて面白いけど…って感じでしたね。
綾部 それで、リンパ腺じゃなく、銀河系がグルグルする歌詞になりました。あと、歌、編曲、ピアノをやってくれた齊藤さっこさんが、ふだんいろんなライブなどで歌える曲にしたいという思いも、少しだけありました。これは僕が勝手に思っているだけなんですが、歌う方の世界観にもあわせたい、ということですね。今までゲームの主題歌を担当してくれた方が、普段のライブでは歌ってくれない、というケースが結構あって、それってなんだか悲しいじゃないですか。で、齊藤さんご自身が作った曲の詞をよく見ると、宇宙のイメージが印象的だったんです。そういうこともあり、リンパ腺は諦めました(笑)。
長嶋 「あの水どこにあったのかな」って歌詞は、その名残りですよね。
綾部 これで将来別の新作ゲームを作った時に、“リンパ腺”という歌詞が出てきたら「あ、あの時の!」って思い出してください(笑)。
一同 (笑)
アッソーの町のキャラクター“青山はた”をもっと深堀り!
―― 青山はたは優しい女性ですが、ちょっと謎な一面がありますよね。彼女のバックボーンについて教えてください。
綾部 彼女は他の女性たちよりも少し年上で、知性があって真面目な人です。学校の教師だった父親の影響で、どんな状況でも先生や学者のような話し方をするキャラクターです。なのに、なぜか自分のことは見えていない様子で、理屈っぽかったり延々と独り言を言ったりしています。昼間に家を覗くと鶴の恩返しみたいに影絵になっていますが、これは単純に「こういった変な人もほしいな」と思ったんです(笑)。昼間は鶴の恩返しをしているし、夜は本の朗読をしているし、実はそんなに会話をする機会がないんですよね。だけど、ゲームが終わった時に印象的なキャラクターとして、心に残っている人物になったんじゃないかなぁと思います。
―― 青山はたが織っていたタペストリーにはどんな想いが込められているのですか?
綾部 青山はたはなぜか機織りに失敗して、タコの絵が入った“タコストリー”を作ったことにしています(笑)。僕が下書きした絵日記グラフィックの時点では、まだちゃんとしたタコの絵のつもりだったのに、それを清書してくれたスタッフが何かを間違えたようで、上がってきたのを見たとき「これはさすがに形が変わりすぎているし、言うべきかな」と思ったんだけど、絵として面白かったので、そのまま使っております。
―― 青山はたとの会話中、いきなりシェイクスピアの話をしだしてびっくりしました。
綾部 あれは最初の設定の時から「こういうことを言いそうなキャラクター」ということで、いろいろ考えた中に入っていたんですね。彼女の自己紹介のセリフをちょっと削っているのでわからないかもしれませんが、このゲームのナレーションは全部青山はたが担当しているんですよ。なので、この世界はすべて彼女の独り言とか、彼女の妄想の中の世界なのかもしれません(笑)。
あくの博士が発明したタイムマシン起動のひみつ
―― タイムマシンを使うときの合言葉が暗号のようになっていますね。その秘密を解くヒントを少しだけ教えてください。
綾部 それは…秘密ですね!
長嶋 言わない方がいいですよ~(笑)。
一同 (笑)
綾部 これは裏話なんですが、たしかADKの方々にすぐ解読されてしまって、しかも一箇所間違えていたんです(笑)。ヒントは、合言葉の中に隠されているので、みなさん探してみてください。
もはや飯テロ! ひのやま食堂自慢の“オラ夏飯”
―― 作中の“ひのやま食堂”に出てくる食事が毎回美味しそうで。献立はどのように決めていかれたんですか?
綾部 基本の設定は僕が作って、グラフィックは山口県にいる弊社の女性スタッフと仙台のスタッフに担当してもらいました。女性の方は『ぼくなつ』シリーズの献立も全部担当しているので、安心して任せています。
綾部さんおすすめ!
クレヨンしんちゃんの映画作品 BEST3
―― 映画『クレヨンしんちゃん』シリーズで綾部さんがお好きな作品はありますか?
綾部 映画作品が多すぎるので迷ったのですが…『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』と『クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん』です。
―― ああ〜!(謎の納得感)
綾部 去年公開の『クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』もかなり好きです。これがベスト3ですね。
―― 好きなポイントはどこですか?
綾部 去年の『ラクガキングダム』について語らせて頂くと、ファンタジー世界とカスカベがつながってしまった設定なんですが、落書きをしたらそれがリアルな世界に出現したり、逆にリアル世界にあるものが光線を浴びると落書きになってしまったり、ふつうに考えたら荒唐無稽な設定のはずなのに、ロジックの整合性がすごいんです。「よくこれを発明したなあ」と思いました。
『オラ夏』開発者インタビュー、いかがでしたでしょうか?
ニンドリ9月号(7月21日発売号)では、ゲーム開発に至るまでのエピソードや、アッソーに住むキャラクターたちの秘密、そして“ケツだけ星人モード”の導入秘話など、ここでは見られない裏話も多数掲載しています。こちらもぜひチェックしてくださいね。
『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』
ジャンル:夏休み体験アドベンチャー
メーカー:ネオス
発売日:2021年7月15日
価格:6580円(税込)
クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~ 公式サイト
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK ©Neos Corporation
※ゲーム画面および動画は開発中のものです。