『くにおくんの三国志だよ 全員集合!』ドット絵インタビュー

2021年12月16日にアークシステムワークスから配信された『くにおくんの三国志だよ 全員集合!』。
本日、そのパッケージ版が発売されました。

くにおくんの三国志だよ 全員集合!
「くにお」たちが武将となり、三国志の世界で大暴れするアクションゲーム。
関羽となったくにおは、劉備(ごうだ)や張飛(ごだい)とともに人助けに奔走します。
関羽(くにお)のドット立ち絵劉備(ごうだ)のドット立ち絵張飛(ごだい)のドット立ち絵
[順に関羽(くにお)・劉備(ごうだ)・張飛(ごだい)]
関羽(くにお)が劉備(ごうだ)や張飛(ごだい)とともに桃園にいるシーン 関羽(くにお)が街を歩いているシーン
■アークシステムワークス
■2021年12月16日配信 ※パッケージ版は2022年7月21日発売
■くにおアクション
■パッケージ版、ダウンロード版ともに3740円(税込)
■CERO12歳以上

くにおくんの三国志だよ 全員集合!(公式サイト)

ドットと3Dや史実とシリーズ作、融合の妙

パッケージ版の発売を記念し、あらためて35周年を突破した『くにおくん』シリーズの最新作に着目。
3D背景の中でぬるぬる動く「くにお」たちに込められた秘密とシリーズもののドット絵の進化について伺った、本作のグラフィックデザイナー山本竜也さんへのインタビューを掲載します。

※本インタビューは、ニンテンドードリーム2022年2月号に掲載された内容を一部修正したものです。

グラフィックデザイナー山本さんの顔写真
山本竜也さん
『くにおくんの三国志だよ 全員集合!』の開発会社であるエープラス株式会社に所属する20代のグラフィックデザイナー。
本作では、2D・3D表現から戦闘エフェクトまで背景以外のグラフィックに携わり、ドット絵に関してはほぼ1人で担当しています。

ドット絵を描くきっかけ
ゲーム系の専門学校に通っていた時、課題のゲームに使うドット絵を制作したのがきっかけです。
色数の多いものと、色数も少なく影もないシンプルなものの2種類を使うゲームだったのですが、その時にドット絵の奥深さとおもしろさがわかって描くのが好きになりました。

好きなドット絵作品
『ファイナルファンタジーⅥ』
GBAの「ファイアーエムブレム」シリーズ
『MOTHER2』
『MOTHER3』
GBA・DSの「ポケモン不思議のダンジョン」シリーズ

使用しているソフトウェア

GraphicsGale

ドット絵歴
約6年

『くにおくん』 シリーズと三国志、両方のらしさを出すために重要なのは衣装

—— 本作では、『くにおくん』という長く続いたシリーズのキャラクターが三国志の登場人物として新しく描きおこされています。元の存在しているもの同士の掛け合わせですが、これらを描く際にこだわった点をお聞かせください。

山本 まずこだわったのは衣装ですね。シリーズでおなじみの衣装は一色かつ単色なのでそれを活かしつつ、三国志の登場人物の特徴となるデザインを取り入れるようにしました。例えばメインキャラのくにおで言うと、ひと目でくにおだとわかるように意識しつつ、熱血高校の学ランの白をベースに、蜀のトレードカラーである緑を入れてデザインしています。また、関羽のデザインを資料として集めたところ竜をモチーフにした防具をつけていることが多かったので、肩に竜のモチーフの入った鎧も装備しています。くにおが攻撃した時やダメージを受けた時に、その竜の表情も対応して変わるようにしたのもちょっとしたこだわりです。

関羽(くにお)の立ち絵イラスト関羽(くにお)のドット絵キャプチャ

—— 一番思い入れの深い、工夫を凝らしたデザインのキャラクターは誰でしょうか?

山本 りゅういちとりゅうじですね。元ネタが『ダブルドラゴン』(※)のビリーとジミーということで、そのデザインを取り入れようと袖が破けていたりグローブの色をあわせたりしました。そういうところを考えるのは楽しかったです。三国志と「くにおくん」の対応キャラ発表前に、ユーザーさん予想の的中率が一番高かったキャラでもあります。

※ビリーとジミーの兄弟が活躍するベルトスクロールのアクションゲーム。初作は1987年に登場したアーケード版。

夏侯惇(りゅういち)のドット立ち絵夏侯淵(りゅうじ)のドット立ち絵
[順に夏侯惇(りゅういち)・夏侯淵(りゅうじ)]

—— 立ち絵とドット絵はどちら先行で進行されたのでしょうか?

山本 立ち絵のデザインです。立ち絵からドット絵にした方がデザインを省略するだけで済むので、この手順が基本ですね。ちなみにゲーム内の立ち絵も自分が担当してたりします。

—— 女性キャラを三国志の男性キャラに当てはめるというところで苦労したところはありますか?

山本 あまり三国志に詳しくなかったので、最初はその人物がどういう人物で何をしたか、というのはわからずにデザインしていたんです。なので、そこまで難しいとは思っていませんでした。もちろん、後から調べて肉付けはしています。

3D背景にドットのキャラクターを馴染ませるためのポイントは「彩度」と「影色」

—— 「3Dの背景で2Dドット絵のキャラやオブジェクトを動かす」というグラフィック表現ですが、こういった場合はどのような点に注意して描かれているのでしょうか?

山本 3Dの背景は、ドット絵で作られた背景のようにパリッとした色ではなくリアルな色使いになります。なので、2Dキャラにもリアル寄りの少し彩度を落とした色を使うようにしています。あとは影色も追加しているので、その分3DCGに馴染んでいるんじゃないか、と思います。とは言いながら、『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会 ~オールスタースペシャル~』(PlayStation 3)で3Dの背景に過去シリーズのドット絵をそのまま配置した時もそこまで違和感はなかったので、実はそんなにこだわらなくてもいいのかもしれません。

—— 「計略」使用時のアニメーションも、ドット絵と3Dの入り交じる独特な表現でした。こちらは通常時のドット絵とは別に用意されたものでしょうか?

山本 計略のグラフィックも普通のキャラクターと同じように描き、見せ方を変えているようなイメージです。Adobe After Effectsを使って、アニメーション用のドット絵と3Dモデルの素材を組み合わせて作成しています。計略のアニメは笑えるように作っていたり、ちょっと変な箇所があったり、パロディっぽい雰囲気があったりと、いろいろと楽しめるようになっているはずです。

計略「水計」使用時、兵士が浮き輪をしながら水に流されるシーン

—— オブジェクトなど過去作から流用しているものはあるのでしょうか?

山本 流用したのはアイテムの石ころくらいで、その他はすべて新しく描いていますね。過去の素材を参考にしながら、新しいアイテムや料理などを追加したほか、必殺技のモーションも過去のを参考に新しくしています。オブジェクトの形は変更せず、色味や影を調整したものも多いですね。

くにおが牛車をひいているシーン

—— 戦闘エフェクトはいかがでしょうか?

山本 今回用に新しく描きおこしました。残像などのエフェクトをドットで描くパターンや3Dエフェクトとあわせて表現しているパターンなどさまざまあるのですが、雰囲気にあわせて調整しています。キャラにつくスピード表現とかダメージエフェクトは基本ドット絵で作るようにして、環境に作用するもの、例えば超必殺技の大きいエフェクトとか計略のエフェクトなどには3Dを使用しています。

関羽(くにお)が薙刀を振り回す攻撃シーン関羽(くにお)のオーラパンチで敵を吹き飛ばすシーン

ドット絵ブームが到来してほしい

—— 今後、ドット絵がどう発展していってほしいと望みますか?

山本 最近は「HD-2D」といった新しい表現まで出てきているので、このまま2Dドット絵のブームが来てもおかしくないと思っています。やっぱり、ドット絵でしか表現できないビジュアル、コミカルさ、スタイリッシュさ、温かさというのはあります。古き良きシンプルな表現も、表現の仕方次第で情報量の多い今風なデザインにもできます。表現の幅は無限だと感じているので、そういうドット絵がどんどん現代の子どもたちに刺さって、ブームになっていけばいいな、と思っています。

ディレクターさんに聞いた! くにおと三国志の融合

インタビューに同席していたディレクターさんにも、本作に込めた想いをいろいろと聞いてみました。

—— 主人公であるくにおを、劉備や諸葛亮ではなく関羽にした理由は?

開発 最初はくにおが劉備だったんです。実はその絵も山本さんに何枚か描いてもらっています。でも、三国志を知れば知るほど、劉備って自分で戦うというよりは軍隊を指揮をしたり、誰かと外交・交渉したりする方が多かった。それであれば関羽とか張飛を考えてみようという話になって調べていったら、関羽というのは非常に義理堅い武将だったというのがわかってきまして。そことくにおの熱血硬派の部分がバチッとはまったので、くにおは関羽となりました。「蜀っていったら劉備じゃないの?」と言われたりしますが、三国志の魅力、そしてくにおのハチャメチャ感とかアクションの魅力を考えると、くにおは関羽であるべきだと思っています。

くにおが劉備だった開発初期のイメージイラスト

くにおが劉備だった開発初期のイメージイラスト

開発初期のキャラクターイラスト

開発初期のキャラクターイラスト

—— 三国志の登場人物とキャラとの組み合わせはどのように決めましたか?

開発 企画担当の数名で濃密にやり取りしながら決めていきました。企画段階でキャラは決めていたんですけど、ストーリーを練っていく段階で「この配役は別のキャラがいいね」ということが何度かありました。メインのキャラはそんなに変わらなかったのですが、細かいキャラは変更されていたりします。例えば、最初は張遼がどれだけ関羽と絡む良いポジションなのかっていうのを把握していなかったんですが、話を理解すればするほど良い配役にしないと話が盛り上がらないぞ、となりまして。最終的にはメインヒロイン格のはせべが張遼だったら盛り上がるだろう、と。あとは呂布も二転三転してます。最初はアボボだったんですが、社内ヒアリングとかも行ってさまざまな意見を取り入れた結果、みすずになりました。

呂布(みすず)のドット立ち絵

—— ドット絵と3Dのあわさった表現を採用した理由はありますか?

開発 社内でも「3Dにした方がいいんじゃないか」とか「いやいやドット絵の方がいい」とかさまざまな意見がありました。『くにおくん』を三国志と掛け合わせてさらに3Dに、となると発展させすぎなんじゃないか、ということで今回はドット絵に落ち着いたという感じです。これから先もドット絵でいけるのかはわかりませんが、自分としてはまだまだ可能性はあると思っているので、本作のようにドット絵と3Dをあわせた表現もまだまだいけるぞっていうところを見せたいです。本作を作る上で参考にしたのは、海外で流行っているドット絵だけどライティングがあるという表現なんです。僕みたいな昔の人間からすると、ドット絵にはグラデーションが入ってはいけないっていう感覚がありまして。作品の良し悪しではなくあくまでゾーニングの話なんですが、グラデーションが入るとそれはドット絵風であってドット絵じゃないという感覚ですね。なので海外の作品の良いところは取り入れつつも、ライティングとはまた違った方向でドット絵をもっと活かすことのできるリッチな表現に取り組みたいと思っていますし、本作もそういったところを目指して作っています。


詳細やゲーム購入は下記サイトをチェック!
My Nintendo Store『くにおくんの三国志だよ 全員集合!』
くにおくんの三国志だよ 全員集合!(公式サイト)

誌面(現在では電子版を購入可能)では、各キャラクターのドット絵や初期段階のドットラフも確認できます。
ニンテンドードリーム2022年2月号(インタビュー掲載号)

© ARC SYSTEM WORKS


あわせて、他タイトルのドット絵インタビューもお楽しみください。

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