ワリオ誕生秘話(2008年 9月号より)
1992年に発売されたゲームボーイ用ソフト『スーパーマリオランド2 6つの金貨』において衝撃のデビューを飾ったワリオ。当時のニンドリでは、生みの親である清武さんを直撃し誕生秘話を聞いていました。
生みの親である清武さんに直撃する誕生秘話
今となってはとっても貴重なお話を再掲載しますので、たっぷりとお楽しみください!
※インタビューの内容は2008年当時のもので現在とは設定が異なる可能性があることをあらかじめご了承ください。
清武博二さん
1983年に任天堂入社。
ディスクシステムの初代『メトロイド』の開発に携わり、サムスなどを生みだしたあと、『スーパーマリオランド2 6つの金貨』によって、ワリオの生みの親となる。
最初から現在のワリオに近い形で誕生
—— ワリオはボスキャラとしてデビューするわけですが、そもそも誕生のきっかけは何だったんですか?
清武 マリオの世界の中で、ただ単に怖いボスキャラを出しても面白くないと思ったので、マリオのような格好の大きいキャラを考えてみようと、簡単なラフを描いたのがきっかけです。そうしたら、意外といけるかなっていう感じに仕上がりました。
—— ラフの段階から、現在のワリオに近いデザインだったんですか?
清武 はい。「目はこんなんがいいねー」とか言いながら、簡単に描いたんですよ。
—— じゃあ、ヒゲもはじめから「W」だったんですね。
清武 単に悪そうに見えるようにトゲトゲにしただけなので、「W」じゃないですよ。なぜかといえば、ワリオって仮名だったんです。「言いにくいな」なんて言いながら、製品にするときに変えればいいかと思って、そのまま仮名でワリオにしていたんですが、あれよあれよとそのまま決まってしまったんです。
—— そうなんですか。色とかはどうなんですか? 最初から黄色だったり?
清武 もともとゲームボーイだったので、白黒で作っていたんですけど、チラシなどで使うので色をつけようということになって、好きな色をつけていいということで、適当につけました。わたしが黄色が好きだからと(笑)。
—— デザインや色も、初めから現在のワリオとほぼ変わらなかったんですね。
清武 いやいや、昔はもっとひどかったです。当時はボスキャラというのもあって、少し怖い感じが出た方がいいと思っていたところもありましたし。でも、現在は時代の流れもあって、落ちついた感じになっていると思います。だから、わたしが今描いたら、『ワリオランドシェイク』のようなワリオにはならないと思いますよ。例えばドットでワリオを描いても、「これワリオじゃないよ」って言われちゃうかも(笑)。
—— とは言っても、根本となるデザインは初期から確立されていますよね。当時の話に戻りますが、初めにワリオができた段階で、マリオの生みの親である宮本(茂)さんに見せたりとかはされたんですか?
清武 いや、ボスキャラだったんで、見せることはなかったです。主役がマリオだったから、マリオ自体は確認してもらいましたけど、ワリオに限らず、マリオ以外の部分を見せることはありませんでしたね。
『ワリオランド』でついに主役に!!
—— ボスキャラとして生み出されたワリオは、『スーパーマリオランド3 ワリオランド』で主役になるわけですが、どうして抜擢されることになったんでしょうか。
清武 実はささいな理由で、わたしがゲームを得意じゃなかったからなんですよ。例えば『マリオ』って、ミスをするとダメじゃないですか。苦手だったので簡単にゲームオーバーになってしまうんです。そこでキャラが不死身だったらゲームを遊ぶのがラクになるなと思ったんです。ただ、不死身をテーマにしたとしても、マリオをそのまま使うわけにはいかないので、どうしようかと考えた結果、ワリオを主人公にしてみました。
—— そのとき歴史が動いた、と。
清武 そんなたいそうなもんじゃないですよ(笑)。
—— 主人公になっても宮本さんに見せるということはなかったんですか?
清武 なかったですね。名前も『ワリオランド』だけにしたかったんですけど、当時は「マリオ」っていう言葉が冠でしたので、『スーパーマリオランド3』っていう、ちょっと無茶な付け方をしたんです。だから、最初はマリオから生まれた付属品みたいなもんなんですよ(笑)。
—— 付属品だけれども、マリオの幼なじみという(笑)。
清武 そうしといてみたいな。勝手にマリオの設定を作っちゃっていいのかなっていうのはありましたけど(笑)。
—— ということは、設定も宮本さんから何か言われたわけではないんですね。
清武 ええ。きっとおおらかな気持で許してくれたのかなって思います。
—— そういった清武さんのいい意味でのアバウトな部分が、現在のワリオの根底にあるような気がします。
清武 マリオだとできないけど、ワリオならできるという感じで、いろんな作品が出てきてくれたんで、そういった意味では上手く育ってくれたなって思っています。
—— 今では立派なマリオファミリーの一員ですもんね。
清武 実は加えてもらったのはわたしからじゃないんですよ。「入れてくれ」って頼んだわけではなくて、マリオを担当している方たちが、「これもアリか」って認めてくれたというのが大きかったりします(笑)。
ワリオに対する清武さんのこだわり
—— ワリオ作品は、清武さんが監修をされているとお聞きしましたが、その際のこだわりのポイントなどはありますか?
清武 マリオだとこうじゃなきゃいけないという形があるんですけど、ワリオはもっと幅が広いキャラクターでいいと思っているんです。例えば今は2.5頭身ぐらいですけど、頭がとても小さい9頭身のワリオがいても、個人的にはいいと思っています。キャラが成立するかどうかはおいておいて、あまり固めたものよりは広く、絵柄のタッチも含めて変えてくれた方がいいなとは思っていますね。
—— 説明書がワリオ口調で書かれたりしているのも、こだわりの部分ですか?
清武 あれはわたしがこだわっているというより、説明書を作っているスタッフがこだわっているという(笑)。
一同 (笑)
清武 みんな、たまには違うものを作りたいんですよね。説明書にしても、すべて同じ書き方じゃ面白くないので、ワリオという何でもやっていいキャラクターの思想に乗って、スタッフが肉付けをしてくれていってるんじゃないかなと思います。個人的には「これもアリやな」、「あれもアリやな」って見ていて思いますよ。
—— その意味じゃ、清武さんのイメージ通りの成長を遂げている感じですか?
清武 イメージもそんなにしてないですけどね(笑)。ほかの人がそうやって評価してくれること自体に喜びがあるだけです。ですので、わたしがこんなビジョンをもってワリオを作ったというのはないですよ。
ワリオファンへのメッセージ
—— ワリオというキャラクターに今後、どんな活躍をしていってほしいですか?
清武 キャラクターってどうしても固まってしまうものなので、ひとつの枠にとらわれないように、幅広くなってくれればうれしいですね。
—— 清武さんから現在のワリオに声をかけるとしたら、何とかけますか?
清武 「真面目になりすぎてかわいそうやね」って。仕方がないことですが、もっとハメを外せるようなことができたらいいなって思います。
—— もっと外してもいいと。
清武 偉そうになってほしくないし、好きなことだけをしてくれたらいいなって思いますよ。
—— それでは、最後にワリオファンに向けてメッセージをいただけますか。
清武 ワリオが好きだなんて変わり者だねって(笑)。でも、逆にそれって個性だと思うんです。ワリオを好きなことは決して悪いことでも、人に言えないようなことでもないんだよって(笑)。これまでみたいに、陰でワリオファンだと言わなくても、今の時代は堂々と胸をはって「ワリオが好きなんだ」と言っていいと思うんです。個性を持って生きること、そこを大切にしてほしいですね。
番外編 清武さんはワリオのモデルじゃなかった!!
—— ワリオのほかにも、『レッキングクルー』のブラッキーも清武さんが生みだされたキャラですよね。
清武 よくご存じで(笑)。
—— オヤジキャラが好きだったりするんですか?
清武 好きですね。
—— でも、サムスは全然親父じゃないですよね。
清武 ああいうカッコいいのも好きなんです(笑)。
—— そういったキャラクターたちは、どうやって考えて作られていくんですか?
清武 わたしの作り方は、大抵もとになるモデルがいます。そのモデルが、この世界にいたらどうなるんだろうかって考えていくんですね。例えば、マリオがいるからワリオがいるといった感じに。
—— 清武さん自身がワリオのモデルだというウワサがありますけど…違うんですか?
清武 残念ながら違います。むしろキャラを考えるときに、自分をモデルに描く人はいないんじゃないですか。
—— なるほど。では、ワリオの得意なショルダータックルも、清武さんが昔ラグビーをやっていたことと関係があるわけではないんですか?
清武 あれはアメリカンフットボールですからね。ラグビーでふっ飛ばしたら反則ですよ(笑)。
—— ワリオはにんにくが好きとか、詳細なプロフィールがあるので、てっきり清武さんの趣向などが反映されているのかと思っていました。
清武 開発スタッフから聞かれたので、適当にプロフィールを答えていただけです(笑)。にんにくに関しては、マリオのキノコみたいなものですから。毒キノコを出すわけにもいかないですしね。
—— 清武さんの好きな食べ物なのかと思ってました。
清武 いや、あんなに食べたら胃を壊しますよ(笑)。
合わせてご覧ください。
©2000 Nintendo
©2008 Nintendo
©1992 Nintendo
©1993 Nintendo