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シリーズ20周年を迎えた『超おどる メイド イン ワリオ』開発者インタビュー

最高に盛り上がるワリオ様の最新作『超おどる メイド イン ワリオ』(以下『超おどる』)。
ひとりでもみんなでも全身を使って大騒ぎできる“瞬間×体感アクション”の真髄を、開発を手掛けた任天堂とインテリジェントシステムズ(以下イズ)のスタッフの皆さんに直撃してきました。
(ニンテンドードリーム2024年2月号収録)

“開発陣に魅力を訊け”と神様はおっしゃいました。

インタビューに入る前に本作をかんたんにおさらい! 紹介動画をチェックしてみてね!

『超おどる メイド イン ワリオ』とは
約5秒で完結するプチゲームが多数遊べるシリーズ最新作。今回はJoy-Conをカマエて全身を動かすのが特徴で、舞台となる「バリオモロ島」でワリオたちと瞬間アクションを楽しむことができます。

登壇者プロフィール

任天堂 阿部 悟郎さん

全体のディレクションを担当。
初代にプログラマーとして参加したあと、2作目『あつまれ!!メイド イン ワリオ』より、シリーズのほとんどすべてにディレクターとして携わる。プチゲームの解説文も全部阿部さんの手によるもの。

任天堂 竹内 高さん

初代よりキャラクターデザインを担当。
本作ではキャラクターだけでなく、パッケージイラストの制作や監修、インテリジェントシステムズや協力会社と共にキャラクターのムービーも手がける。また、今回も一部キャラのボイスを熱演(?)

インテリジェントシステムズ 重田 和紀さん

イズ側のディレクションを担当。
シリーズにはDSiウェア『うつすメイドインワリオ』で本格的に関わり、その後『おすそわける メイド イン ワリオ』でのアートディレクターを経て、本作で初のディレクターとなる。

インテリジェントシステムズ 森 直子さん

企画立案からスケジュール管理まで、運営マネージメント全般を担当。
シリーズには『あつまれ!!メイド イン ワリオ』から携わり、アートディレクター、ディレクターとして従事した後、3DS『メイド イン ワリオ ゴージャス』より現在と同じ立場に。

「20周年」という節目を迎えて

祝 『メイド イン ワリオ』シリーズ20周年

—— 2023年はシリーズ誕生20周年の年になりますね。おめでとうございます!

阿部 ありがとうございます。20年前に初代『メイド イン ワリオ』を作っていたときは、シリーズがこんなに続くとはまったく想像していなかったんですよね。でも、こうして20年も経つと、海外も含めていろいろなところでシリーズを遊んでくださっている方がいるのを実感しています。特に最近は昔遊んでくれていた人たちともいっしょに仕事をしていたりもするので、とても感慨深く思っています。

竹内 阿部が言ったように、開発スタッフや声優さんの中にも「遊んでいた」と言ってくださる方たちがどんどん増えていて本当にうれしく思っています。SNSが発展して、キャラクターへの熱い思いを投稿してくださっているお客様を見かけることも増えてきて、ありがたい思いでいっぱいです。

 私は『あつまれ!!メイド イン ワリオ』(以下『あつまれ』)から開発に参加しているんですが、20年ってあっという間だなと思いました(笑)。

竹内 そうだね~。

 今の開発スタッフも「『おどる メイド イン ワリオ』(以下『おどる』)を遊んでました」とか、初めて買ってもらったのが「『さわるメイドインワリオ』(以下『さわる』)です」という感じで、「当時、遊んでいてここが楽しかったからこう作りたい」というふうになっています。だから個人の体感としてはあっという間でしたけど、作っていくメンバーも若返りながら、令和の『メイド イン ワリオ』をこれからもいっしょに紡いでいけたらいいなと思っています。

—— 重田さんはシリーズの途中から参加されているわけですが、20年続く『メイド イン ワリオ』をどのように感じていますか?

重田 私はその伝統を引き継いでいく立場なんですけど、20周年と聞くと重い歴史があるように思うんですが、蓋を開けてみると鼻の穴やら鼻毛やらで、これは重いんだろうかと思ったりもして(笑)。ただ、そうした先輩たちが詰め込んできたヘンテコなアイデアの宝箱を手渡されていると思っていますので、そのままさらにパワーアップさせつつ、次の若い世代にも伝えていけたらなという気持ちでいます。

—— 鼻の穴を継ぐ者たち。

竹内 鼻の穴が伝統芸に(笑)。

重田 私もちゃんと後輩に伝えていきたいですね。「うんこに頼りすぎない!」とか。

 阿部さんが「うんこはここぞというときに使え」って言うもんね。

重田 真面目な声で「うんこは禁止です。使うべきところで使いなさい」って教えてくださるんです。

—— 「鼻毛」に「うんこ」って、実にワリオらしいですね(笑)。

竹内 ひどいねえ。

一同 (笑)

引き継がれる「鼻の穴」。代々「いれろ!」というプチゲームで登場します。シリーズの記念すべき1作目『メイド イン ワリオ』(ゲームボーイアドバンス)の「いれろ!」がこちら

みんなで遊べる体感ゲームをめざして

—— そうした記念の年に発売された最新作ですが、どのようなところから考えていったのでしょうか?

阿部 パーティゲームの『あつまれ』と、Wiiリモコンを使った体感ゲームの『おどる』の両方を合わせたものをNintendo Switchで作れないかなと考えたのが最初です。より『メイド イン ワリオ』らしいパーティゲームを作るにあたっては、遊んでいる人の姿をまわりで見ていても楽しめるところや、勝ち負けの結果よりも遊んでいるときにとにかく盛り上がれるところを重視しました。

—— ストーリーモードがふたりで遊べるのもそういったところが狙いだったんでしょうか?

阿部 はい。ただそこに関しては前作『おすそわける メイド イン ワリオ』(以下『おすそわける』)でも作ったので、やっぱり今回もふたりで遊べたほうがいいなというのもありました。

—— なるほど。その『おすそわける』に続いて、本作もNintendo Switchでの発売となります。同ハードで2作発売するのも珍しい展開ですよね。

阿部 シリーズではそうかもしれないですね。でも、遊び方が違うのであれば、同じハードで作ってもいいんじゃないかなというのがあったんです。もともと『おすそわける』を作ったときは、Joy-Conのおすそわけプレイを使ってみんなで遊ぶものとして企画しました。そんな中、開発中に『リングフィット アドベンチャー』なども発売され、Joy-Conを使って体を動かす遊びが増えてきたこともあり、これで『メイド イン ワリオ』を作ってみても楽しいんじゃないかと考え始めました。なので、同ハードではあるんですけど、前作と本作でまったく遊び方が異なります。

—— Joy-Conをわけて遊ぶものと、体感的に遊ぶものの違いですね。ただ、どうしてもWiiの『おどる』とタイトルも含めて比べてしまうところはあります。今回『おどる』から変更した点はどういった部分になるんでしょうか?

阿部 『おどる』で使用したWiiリモコンには、加速度センサーは内蔵されていましたが、ジャイロセンサーは入っていませんでした。ですので、カマエにしてもWiiリモコンでできることとJoy-Conでできることが全然違います。

—— 具体的には、加速度センサーだと傾きは検知するけれど、ジャイロセンサーは方向とかも検知してくれる、といったところでしょうか。

阿部 はい。回転の動きを精度高く検知してくれるので、『おどる』ではできなかったジャイロセンサーを生かした遊びや動きを考えていきました。あとJoy-Conをふたつ持てるというのも大きくて。ふたつあるということは両手を動かして使えるということですので、そのふたつを基にカマエを考えていきました。

—— Wiiのハード機能のお披露目のような部分もあった『おどる』とは、開発のきっかけも、できることも違ったんですね。

阿部 そうですね。最初は仮で「あつまっておどる メイド イン ワリオ」って名前を付けていました。

ゲームを盛り上げるアイデアたち

カマエの誕生と採用までの流れ

—— 今回のキモとなる「カマエ」について教えてください。どのように決めていったんでしょうか?

阿部 覚えやすく汎用性が高いこと、それから「まわりから見ていておもしろいかどうか」も重視しました。最終的には『おどる』に近い15~20くらいの数のカマエを作れたらと思っていました。で、それぞれのカマエでどれぐらいのプチゲームが作れそうかを考えていきました。

—— カマエを考えるところからスタートしているんですね。

阿部 そうです。最初から入れることを決めていたカマエもありましたが、アイデアを募集する中で固めていったカマエもあります。たとえば、『リングフィット アドベンチャー』のレッグバンドを使うというアイデアもありましたが、おもしろいとは思いつつ、レッグバンドをどっちの足につけるのかとか、そもそも持っていない方もいますよね。そうしたら、スタッフから手を足に置けば動かせるだろうというアイデアが出て「シコフミ」のカマエが生まれました。

—— シコフミにそんな成り立ちが。

シコフミをつかったプチゲームのひとつ

阿部 ほかにも、ネタはおもしろいんだけど、カマエ的にひとつしかプチゲームが作れないぞというのもあったりして。そういうときは、「プチゲームのネタをなんとかあと5個だして」といった、ネタ大募集みたいなことをしました。

 「コケコッコ」がそうでしたね。

コケコッコのカマエのプチゲーム「つかまるな!」。まさかコッコになるとは!

—— あとJoy-Conを置くカマエはまだしも、離すというのは驚きました。

阿部 もともと『おどる』でもゲームの中で離すとか置くというのがあり、それがおもしろいと思っていたので発展させて作ることにしました。特に離すほうに関しては、積極的に入れるように心がけました。なぜかといえば、離す動作を入れることで絶対にストラップが必要になりますよね。今回、特に集まってみんなで遊ぶことを想定していましたから、ストラップを使うことでより安全に遊んでいただけると思いまして。そういうところを加味して、結果的に「ソナエモノ」や「テバナシの印」などのカマエが入った形になったかなと思います。

—— でもワリオはカマエ石を投げてましたけどね。

一同 (笑)

阿部 でもほら、あのあとちゃんとストラップをしますから。カマエをまだ知らないときは投げちゃってますけど(笑)。

カマエ石を投げてしまったワリオ。ゲームが始まってからはストラップを付けています

—— カマエの説明をしてくれる神様の文章もおもしろいですよね。いきなりラップがはじまったりして。

重田 あのメッセージは開発スタッフ内で大募集して、いろいろなパターンの文章を集めて阿部さんにチェックしてもらう感じでした。

阿部 カマエとか土地のネーミングもね。

 ええ。なのでもうチーム内大喜利みたいな感じなんです。専門のプランナーが書くとかではなくて「このお題募集」となったら、いろんなスタッフが総出で考えていく形でした。

IRカメラを使った「ミギテウツシ」のカマエ

—— カマエといえば、「ミギテウツシ」を聞かないわけにはいきません。

阿部 これも最初からIRカメラを使いたいというのがあったんです。IRカメラを使って手を映すものは『脳トレ』(※1)とかでも使われていましたし。

※1 Nintendo Switchソフト『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング』

右手のカマエ石を左手で摘み、IRカメラ(写し窓)で手の動きを読み取るカマエ

—— 『脳トレ』で、グーチョキパーをIRカメラに向かって出すヤツがありましたね。

阿部 ええ。IRカメラを使えば距離がわかるとか、できることはわかっていました。ただIRカメラは片方にしかないので、カマエをどうするかということには悩んでいました。

—— 持ち替えたりするので、ほかのカマエと違ってワンテンポ遅れてしまいますし。

阿部 本作は「瞬間アクション」ですからね。悩んだんですが、結局ワリオだし、手を離すプチゲームもあったので、左手を離して逆の手に持たせてもいいんじゃないかぐらいの落としどころでやってみることにしました。

—— IRカメラを使えばおもしろいことができそうなのは理解できますが、実際にプチゲームを作るとなると大変だったんじゃないですか?

阿部 いえ、IRカメラはできることが決まっているので、その中でどんなプチゲームを作っていくかっていう意味では、むしろ考えやすかったです。

 ストラップを付けているのが、手を検知するという意味ではちょうどよかったんです。ストラップで右手とつながっている分、誰が遊んでもIRカメラと手の距離が同じになるので、検知しやすくなるんです。それがプチゲームの考えやすさにも繋がっていると思います。

—— プチゲームがおもしろければ、ある程度の動作は気にならなくなりますしね。

 とはいえ、一時期はチョウザ(長座)とかアオテン(仰向けになって寝る)とかのカマエもあったんですけど、それはさすがに構えるたびに寝たり起きたりが大変なんでやめました。次できないじゃんって(笑)。

—— (笑)。でもカマエのバリエーションが多いので、切り替える焦りのわちゃわちゃ感も「ワリオを遊んでる!」って感じになりますね。

阿部 そのわちゃわちゃを楽しんでもらえるのも、ワリオのいいところなんじゃないかって思います。

プチゲームの見せ方と作り方

—— プチゲームの見せ方で気をつけた点はありますか?

 『おすそわける』は2Dの平面上でキャラクターを動かしていくプチゲームでしたが、今回は自分が動くことで遊ぶ主観的なプチゲームになりますから、自分の頭の後ろくらいから見ている視点で遊べるようにしないといけません。そうなると、奥行きの表現が必要になるため3Dでの開発が多くなります。プチゲームはゲームごとに絵のタッチが異なりますから、3Dでいろんなタッチを表現するのは2Dで作るよりもなかなか大変でした。

阿部 プチゲーム自体のレイアウトも、主観になるのでどうしても見た目が似たようなものになってしまいます。そこをどのように差別化するか、そして実際にプレイヤーが体験しているように感じてもらうにはどうすればいいのかを考えていきました。今回、「体感」というのが本当にキモで、これまでの『メイド イン ワリオ』シリーズのゲーム的なシビアさよりは、ちゃんとした手応えを得られるかを重視しました。

 阿部さんからは、3Dになるので滑らかに動くようにしてほしいということを言われていました。プレイヤーはプチゲームが始まるとどこが動くかわからないので、そこを少しの入力でもなにかが動くようにして正解をわかりやすくする。そこにこだわって作りました。

阿部 いかにプレイヤーが迷わず、カマエからプチゲームへ繋げられるかという点が、これまでよりも大変でしたね。

—— そんな中で、最初に作られたプチゲームはどれになるんでしょう?

 3つか4つくらいのカマエで、まずふたつずつくらい試作を作っていったんですが…「せんぷうき」はありましたね。

重田 「はなのあな」もありました。

—— そこは必須なんですね(笑)。

阿部 はい。『メイド イン ワリオ』における「はなのあな」は、『スーパーマリオ』におけるクリボーだと思っているんで。

重田 そうだったんですか!

一同 (笑)

最初からあった「せんぷうき」を使ったプチゲーム
今回の「いれろ!」はこんな感じ!

スタッフ総出でプチゲームのアイデア出し

—— プチゲームのアイデアはどんなふうに考えているんですか? 初代のころは、みなさんでアイデアをボードに付箋で貼って書き出していくみたいな話をされていましたよね。

重田 デジタルの掲示板にダーッとアイデアを書いていきます。結局やっていることは昔と変わっていないですね。

 どんなイメージのプチゲームかがわかる簡単な絵と、どういうことをレベル1~3でさせるのかという文章をセットで掲示板に書いていきます。それを阿部さんが「A」とか「B」とかで評価して、採用・不採用の判定をしていくんです。私たちはそれを見て、「よっしゃー『B+』だー」とか言って(笑)。…なかなかAは取れないんですけど。

阿部 「A」は文句なしにいいアイデアで、「これはやりたい」と思ったら「A」にします。「B」は惜しいっていう。「B+」だったら大体採用です。

—— じゃあイズさんは、毎回その阿部さんのチェックに一喜一憂するわけですね。

 ええ。毎回100個くらいアイデアを出して「今週は1個しか受からなかった」みたいな。

一同 (笑)

—— その判定には評価以外にもコメントとかもするんですか?

阿部 「これとこれは似ているから、ここは変えてほしい」とか、全部コメントを書きますよ。

—— 「世界設定がダメ」とかではなく、理論的にゲームとしてダメなポイントを書かれていくんですね。

阿部 いや。設定込みのときもあります。その設定だからわかりやすいプチゲームとかもありますから。

—— しかし、UIがハードとともに変わっているとはいえ、これだけシリーズが続くとプチゲームのネタもだんだん尽きそうなものですが。

 まさにおっしゃるとおりで、本当に大変なんですよ。このネタは前作でやった、みたいなのも増えていきますから。ただ、前作でやったテーマでも、操作感や見た目が異なると違うように見えるからOKというものもあります。でも、過去にあったものはできるだけ外して考えるようにしていますね。

—— いやぁでも、阿部さんから「A」を取りたいですよね。

重田 そうですね。それも開発スタッフだけじゃありません。前のシリーズで手伝ってくれたスタッフも、プチゲーム作りが楽しいのを知っているので「絶対アイデア出しに参加したい」って、忙しいのに時間を割いて参加してくれたりするんです。

 開発じゃないスタッフとかも。たとえば営業の担当もアイデア出しに参加したりして“「A」取れなかった!”とか言って(笑)。

—— みんなプチゲーム作りに参加したいんですね。

 自分のアイデアを通して爪痕を残したいんですよ。

阿部 評価基準としては、今回は特に『おどる』と同じようなものはできるだけ「『おどる』にあったので」とボツにしていきました。もちろん、『おどる』から遊びが発展していたり、Joy-Conがふたつ持ちになったからこそのおもしろさがあれば、オマージュでもいいんですけどね。

—— なるほど。ではストーリーモードのラストが「おどれ!」だったのは、『おどる』のオマージュじゃないんですか?

阿部 実はあれはオマージュじゃなくて、作ったデザイナーが『おどる』といっしょなので完全な続編です。『おどる』ではワリオダンサーズという名前で、今回はスーパーワリオダンサーズと呼んでいます。

一同 (笑)

阿部 というのも「『おどる』のときを超えるものが作りたい!」と、最初からラストステージにすることを決めていたんです。もともとはWiiリモコンで踊っていたわけですけど、Joy-Conがふたつあるほうがより楽しくできそうというのがありましたし、『超おどる』と言いながらも、ゲーム自体は踊っているわけではないので、最後は踊って締めたかったんです。

ラストステージは『おどる』と同じくダンシング!! ハイテンションで陽気に終わります

ワリオカンパニー、バリオモロ島に立つ

ワリオたちが南国に旅立った理由

—— 舞台が「バリオモロ島」になった経緯を聞かせてください。

阿部 ダイヤモンドシティを舞台にすると、『おどる』と大筋がいっしょになってしまいます。だから別の設定、違う場所にしたいなと思ったんです。そこで、これも大喜利じゃないですけど、いろいろなアイデアを募集して、そのひとつにあった「南国」を採用しました。島独自の文化や言い伝えといった設定も作れるし、ワリオたちの違う衣装や新たな内面も見せられるかなと。全員で行く理由はワリオカンパニーなら社員旅行だろうといった感じで、現在の設定になりました。

—— 「バリオモロ島」の名前はそれから?

阿部 はい。南国が舞台ということが決まってから考えました。名前もいっぱいアイデアがありました。やっぱりダイヤモンドシティだから、島の名前も鉱石みたいなものが多かったんですが、もっとインパクトのあるものがいいかなぁと思って決めました。

重田 私が考えたやつは「かわいすぎる」って言われました(笑)。

 重田のはお上品だったんですよね。

—— 阿部さんは、バリオモロ島が出てきたときすぐにOKを出したんですか?

阿部 ええ。でも重田さんに意外な顔をされて。「え、それですか?」って。

重田 大量のアイデアがある中で、私的には引っかかってないネーミングだったんです。で、阿部さんに「どれがいいですか?」と聞いたら「バリオモロ島、いいじゃないですか」って。私は「ダメだ。ワリオ、わから~ん」ってなりました(笑)。

一同 (笑)

—— ちなみに重田さんはどんな案を?

重田 「パイナップル島」とかです。でも阿部さんにはなにも響いてなくて(笑)。それからバリオモロ島に決まったので、ますますこりゃもうわからんなって。

阿部 もちろん、バリオモロ島って狙い過ぎな感じもしてしまいますから、ギリギリな名前だとは思いました。でも、バリだからリゾートっぽいイメージもありますし、パッと聞いたときには意味がわかりにくいぐらいの塩梅でいいかなと。

 バリオモロ島の名前を考えたスタッフは、カマエのネーミング募集のときに「ハトムーネ」とか「ヒジカクーン」、「トリミターイ」とかを提案する人でして。

重田 「マエニピーン」「ヨコニピーン」とかも出してました。

 カマエではボツになったけど、島の名前では採用されたので喜んでましたね。

重田 ほかの地名も募集していたんですけど、結局はバリオモロ島をネーミングした彼のアイデアがほとんど採用されました。少年心を失っていない人の案がいちばんよかったんです。

阿部 少年心か、はたまた親父ギャグか。

一同 (笑)

—— その方は地名に関してはスゴ腕のネーミングセンスだったんですね。

重田 なので、最後のほうは彼にだけ頼んでました。「この砂浜をお願い」とか。

—— その方はプランナーなんですか?

重田 いえ、デザイナーです(笑)。

—— すごい才能の持ち主ですね。

阿部 たぶんワリオでだからこそ輝く才能だと思いますけど。

一同 (笑)

バリオモロ島

「復活の儀式」が「聖なるポーズ」になった理由は?

—— 「復活の儀式」の「聖なるポーズ」もなかなかすごいですね。

阿部 繰り返し遊んでもらうゲームなので、ストーリーモードであきらめてもらいたくありませんでした。『メイド イン ワリオ ゴージャス』(以下『ゴージャス』)からコンティニューを入れましたが、お金的なものを使う形でした。今回はそもそもお金のようなものが存在していませんが、無限にできても緊張感がなくなりますよね。『おどる』の決め姿勢がおもしろかったので、それならそっちでやってみようと。ほら、実際にポーズをやってみるとちょっと恥ずかしいじゃないですか。そういう意味でのリスクがあるコンティニューになったので、ちょうどいいバランスになったかなと(笑)。

—— ゲーム外での恥ずかしさ(笑)。でもそのポーズが104種もあるなんて!

重田 ポーズ自体はひとりのスタッフが考えました。その方はお風呂のときも寝るときもずっとおもしろいポーズを考え続けて大変だったみたいです(笑)。たくさんアイデアを出してもらって、阿部さんたちに判定の取りやすさとか、手の向きとかで絞り込んでいただきました。

阿部 左右が違うだけで似たようなポーズもあったので、そういうのを仕分けしていった感じですね。そしてポーズができてから、例によってネーミングをあとから付けていきました。

重田 もちろんそのポーズの名前もスタッフみんなでの大喜利です(笑)。

少し恥ずかしいっ

魅力的なキャラクターとムービーと

—— ではバリオモロ島ならではのキャラクターの衣装やデザインについてはいかがでしょうか?

竹内 リゾートで過ごす社員旅行なので、ワリオのアロハシャツであったり、モナのダイビングスーツであったり、夏らしい衣装を採用しています。イズのデザイナーさんたちがたくさん衣装案を描いてくださいまして、その中から僕が選ぶという、楽しい作業でした。

—— 設定をもとにデザインがあがってきた中から竹内さんが選んでいく感じでしょうか。

竹内 衣装やモブキャラに関してはそうですね。

重田 はい。竹内さんに指導していただきながら。

竹内 「こういうデザインもあったほうがいいよね」って、最近の流行を取り入れたりといった意見を言ったりはしたんですけど、基本はイズさんがデザインしてくださいました。

—— 物語などのムービー制作はどのように行われたんですか?

重田 弊社側で絵コンテを作り、それをムービー担当が試行錯誤しながらビデオコンテにしていきました。ふだんだったら見せないような角度とか、今までにないような仕草とか、新鮮に見えるような要素を意識的に入れて、竹内さんと作り上げた形ですね。

竹内 イズのデザイナーさんたちが一番魅力的にキャラが映る角度とかをしっかり作ってくれて。本当にありがたいです。

ムービーシーンのモナ。顔や体、衣装が大きく映りかわいらしく表現されている

—— 制作のやりとりで印象に残っていることはありますか?

 まず絵コンテを描いて竹内さんや阿部さんにお見せするんですけど、提案する物語がちょっと優等生すぎたみたいで、お話ひとつひとつにフックがなくて、なかなかOKをいただけないということはありましたね。

阿部 きれいにまとまりすぎていたんです。だからそこを「もっと変にして」って。

—— もっと変にして。

一同 (笑)

阿部 ムービーももちろん大事なのですが、いわゆるプチゲームとプチゲームの間のツナギ部分、そこが大事なんです。そこでキャラクターになにをさせるか、そこから前後の話をどうするかっていう繋がりで考えてもらうようにしました。冒頭のムービーとツナギの部分が繋がりすぎていると意外性がないんですよね。少しぶっ飛んでるほうがおもしろいという思いがあって。

重田 ですので、起承転結から教えていただいた感じです。

—— そして今回も新しいキャラクターが登場していますね。

竹内 ソフトが出るたびに出したいなと思っています。スポーツゲームができるぐらい、ワリオファミリーもだいぶ人数が多くなってきました。

—— どんな感じでキャラクターを出していくんでしょうか?

竹内 私はキャラクターを作るときに、スタッフにも見せてはいないんですが、マインドマップというのを作ります。マインドマップには、各キャラクターごとに取り巻きであったり、どういう経緯で育ってきたのかみたいな、バックグラウンド設定を箇条書きしてあるんですね。その中にいる名前とか新しいキャラを、その都度「今回はこの子が出せそうだな」って感じで登場させています。だから、イズのデザイナーさんたちが起こしてくれたビデオコンテを監修しつつ、マインドマップを見ながら「このキャラをここに入れて」といったお願いをしていく形です。

—— そうやって完成したムービーにボイスを当てていくと。

竹内 そうですね。『ゴージャス』からフルボイスになりましたけど、声優さんたちもそこから3作目になってだいぶ馴染んでくれました。それもムービーをより一層盛り上げてくださっていると思っています。

—— 竹内さんは今回も一部キャラの声を演じてるんですよね?

竹内 私は一言だけですけどね(笑)。でも、収録が終わった後にブースから出たら、スタッフさんたちが出迎えてくれて「おつかれさまでした」って、拍手してくださったんです。なんか、大御所の声優さんみたいでした。

一同 (笑)

今回のモナの服のコンセプトは?

—— 作品ごとに変わるモナの服。今回のコンセプトを教えてください。

竹内 今回は彼女がふだんの生活を離れ、リゾートで優雅に過ごすということで、白を基調にしたドレスにしています。モナの衣装に関してはイズの女性デザイナーさんが、ものすごい数をデザインしてくださいまして、そこから意見を言いつつ選ばせてもらいました。

重田 ファッションに興味のあるデザイナーで「楽しい、うれしい」って言いながらたくさん描いていました。

竹内 なので、選ぶのが楽しかったです。最終的にはフリルやリボンの付いたかわいらしいスタイルで決めました。

いつもとは違うお出かけの装いがとてもオシャレなモナ

—— また、モナと言えば「ウォッシューティング」のプレイヤーがモナとファイブワットなのはなぜでしょう?

阿部 ゲーム内容が最初に決まっていたので、そのスタイルにいちばんぴったりあうのがモナでした。でも、ふたり用のときはモナがふたりだとおかしいので、同じ背格好で探して、ぴったりだったのがファイブワットだったんです。カットやアナは体格が小さいし、男性キャラも少し違うかなとも思いまして。

ファイブワット
「ウォッシューティング」ではふだんあまり接点がないモナとファイブワットが大活躍!

もっと聞きたい! プチクエスチョン

ワリオたちをバリオモロ島以外で連れて行きたいところは?

竹内 これもマインドマップにあるんですけど、それぞれのキャラクターには生まれた場所があるので、そこを仲間たちと巡る旅に出させたいなと思います。

—— それはいいですね!

竹内 いいでしょ!(阿部さんたちに向けて)どうでしょう?

阿部 …機会があれば!

重田 響いてない(笑)。

—— でも周年記念タイトルっぽい設定ですね。

阿部 今年が20周年ですからね。

—— じゃあ10年後ですか。

竹内 30周年かぁ…ずいぶん先になっちゃうなぁ。

一同 (笑)

「マッスルエクササイズ」は筋肉痛になりませんか?

重田 あれはクリア後に遊べるゲームですし、もう筋肉痛になっていただくためのモードです(笑)。

このモード特有の「ロングゲーム」はついつい力が入っちゃう。にくにくにくにくマッチョ!!

アシュリーになれる!?「まねしてミラー」お面

—— 公式サイトの「まねしてミラー」のお面のダウンロード配布には笑いました。

阿部 ありがとうございます。でも、お面のことに気づいていない人も多いと思うので、ぜひ使ってみてください!

アシュリーとレッドのなりきりお面を、『超おどる メイド イン ワリオ』の公式WEBサイトで配布中。
つけてプレイすると、さらに楽しくなっちゃうかも!?

ワリオカンパニーに入るにはどうすればいいですか?

竹内 本気ですか?

一同 (笑)

 前提として、オフィスの中がにんにく臭くても耐えられる人ですよね。

重田 ワリオが社員を募集すると思うので、ワリオの言うことを聞いてくれるイエスマンが採用される気がします。今の社員は誰も言うことを聞かないので(笑)。

ワリオカンパニー公式WEBサイトより。
ワリオのありがた〜いお言葉や会社情報を知ることが可能
ワリオカンパニー公式WEBサイトより。
現在は工事中だが、お問い合わせの項目も。いつでもワリオカンパニーに就職できるよう、就活の準備をしておこう

「おならボタン」は本当に公開されるの?

阿部 キャラクターをもっと知っていただきたかったので、このタイミングでカンパニーのサイトを作りました。「おならボタン」も含めて今後も更新していきますので楽しみにしていてください。

ワリオカンパニーのメンバーって本当に社員?

竹内 うーん。勝手にワリオが言ってるだけです。

阿部 本人たちは思ってないでしょう(笑)。

『リズム天国』や『ワリオランドアドバンス』などのキャラクターが登場しているのはどうして?

阿部 それらのゲームも竹内が関わってきたタイトルで、キャラクターのデザインもしているので、遊び心として登場しています。

竹内 先ほどのマインドマップで常日頃からキャラクターたちについて考えてはいます。これは冗談でもなんでもなく、デザインを突き詰めていくと、頭の中でキャラクターたちが勝手に話し始めるんです。だから、どんなキャラクターなのかは自然と定まっていきます。そうやって生まれたキャラクターたちがたくさんいるので、条件がそろっていれば登場させています。

—— かといって、ゲーム同士の世界が繋がっているわけではないですよね?

阿部 そうではないですね。例えると手塚治虫さんのスターシステム(※2)的なノリだと思っていただければと思います。

(※2)漫画家・手塚治虫さんは、よく自身の作品で、別のタイトルにいたキャラクター(のそっくりさん)を登場させていました。あたかも実際のスター俳優さんがさまざまな映画に出演しているかのような手法を「スターシステム」と呼びます。

『みんなのリズム天国』の「カンフーボール」にて登場したシカーダ。
本作にてヤング クリケットの姉弟子ということが判明!
これはフラワニ。『ワリオランドアドバンス ヨーキのお宝』のボスとして登場したフラワナにそっくり

「どっちがプレイしているでSHOW」のコツを教えて!

—— すぐ見抜かれてしまうんです。

阿部 初見でのプレイはなかなか難しいので、まずはゲームを覚えることが大事です。あとは相手を信じましょう。「いっせーの」って声を掛け合ってプレイするのもいいかもしれません。

重田 でも、「え、えっ」って言ってる間に終わる可能性があるので、声を掛け合うのは実は失敗が多かったりもします。パーティゲームとしては盛り上がりますけどね。

—— たしかに。ではとにかくゲームを覚えるところからですね(笑)。

2対2のチームに分かれて対戦。
「ふたりの内どちらが本当にプチゲームをプレイしているか」を当てる、だましあいのゲーム!
同じチームのプレイヤーとの信頼が重要になってくる!!

最後に、読者のみなさんへメッセージを!

阿部 「メイド イン ワリオ」シリーズを応援してくださっているみなさまや、本作を遊んでくださったみなさま、ありがとうございます!
今回は特に複数人で盛り上がるということを意識して作ったゲームとなっています。
まさにこの年末年始、ご家族やお友達と集まる機会がありましたら、複数人でぜひ遊んでいただけたらいいなと思います。まだ遊んだことがないという方も、ぜひ一度さわってみていただけるとうれしいです。


発売中のニンテンドードリーム2024年2月号では、本インタビューのほかにも歴代「いれろ!」の紹介なども掲載されていますので、ぜひご覧くださいね!

<製品概要>

▪️超おどる メイド イン ワリオ
発売日:2023年11月3日(金)
価格:パッケージ版 5,478円(税込)/ダウンロード版 5,400円(税込)
CERO:A(全年齢)
▶︎ 公式サイト

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※「Nintendo Switch Lite」ではプレイできません。
※「ストーリー」モードは1~2人まで、「パーティ」モードは2~4人まで遊べます。
※「ストーリー」モードでは、プレイヤー1人につき、コントローラーが1セット必要です。
※「パーティ」モードでは、プレイヤー1人につき、コントローラーが1個必要です。

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