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国民的RPGが新たな伝説へ…! HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』発売直後インタビュー!

日本のRPGを代表する歴史的大作、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ……』(以下『DQIII』)がHD-2Dになって復活。懐かしくて新しい令和版『DQIII』の魅力をインタビューとともに深掘りします。(ニンテンドードリーム2025年2月号掲載)

『DQIII』が今なお愛される理由とは?

登壇者プロフィール

(写真左)プロデューサー 
早坂 将昭さん
スクウェア・エニックス所属。本作のプロデューサー。『オクトパストラベラー』ではアシスタントプロデューサーとサウンドディレクターを担当。
(写真右)「ドラゴンクエスト」シリーズの生みの親
堀井 雄二さん

ゲームデザイナー。「ドラゴンクエスト」シリーズをはじめ『ポートピア連続殺人事件』、『いただきストリート』シリーズなど多数のゲーム作品を手掛ける。

HD-2D版発売日当日、何をしていましたか?

堀井 けっこう好評みたいですね。「おもしろい!」という声もたくさんあがっていて。

早坂 売り上げ的にも順調で、とてもうれしいです。

堀井 品切れになっていたみたいですね。Switch版が見つからなかった、という話も聞いています。ダウンロード版もありますが、やっぱりパッケージがほしいという方も多いですね。

早坂 パッケージを開けると鳥山明先生のファミリーコンピュータ版、スーパーファミコン版のパッケージイラストが出てくるのも、うれしいのかなと。

早坂 もうまさに、そのために入れた仕掛けだったのでよかったです。

パッケージ内側には鳥山明さんが手掛けたパッケージイラストが。左側はファミリーコンピュータ版、右側はスーパーファミコン版のイラスト

堀井 ご意見の中には「老眼なので文字が小さくて読めない」というのもありましたね。

堀井 昔からのプレイヤーの方なら年齢的にもそうなのかもしれませんね。遊びやすくなった、って意見も多いようですね。

早坂 この記事が掲載されるころには、たぶん例の「いちばん最後のサプライズ」のところの情報も解禁になっていると思います。すでにクリアしたお客様から「これは、とんでもないぞ」といった声があったりするので、作戦は成功かなと。

堀井 まだまだ続く、みたいなね。

堀井 僕はちょうどスクウェア・エニックスで打ち合わせしていました。

一同 (笑)

早坂 思いっきりいっしょに打ち合わせしてましたね。

堀井 HD-2D版『DQI&II』の話もしてたよね。

早坂 僕は『DQI&II』の打ち合わせが終わったあとに池袋の量販店まで見に行って、『DQIII』コーナーの前で店員さんに「すみません、プロデューサーなんですけど写真を撮ってください!」っていったらすごく怪訝な顔をされましたね。名刺も持っていなかったので。

早坂 きっと変な人だと思われていましたね。でもちゃんとパッケージを持って写真を撮ってきました。

堀井 このとき、池袋から護国寺くらいまで行列ができたんですよ。

堀井 しかも2月のすごく寒いときで。なのに多くの人が並んでくれていて、申し訳ない気持ちになりました。

堀井 そういう、いろんなシステムが出来上がってないときでしたので。

早坂 HD-2D版発売日の池袋でも、「『DQIII』、本日発売です!」って宣伝している中で、「うん?」って見ていくサラリーマンの方たちがいっぱいいましたね。

早坂 特設ブースで見かけてその場で買っていく、みたいな感じでしたね。

発売日に2kmの大行列!? ファミリーコンピュータ版『DQIII』発売当時の熱狂ぶり

「ファミリーコンピュータマガジン」1988年3月4日号より

HD-2D版発売の経緯

早坂 『DQIII』はこれまでもいろいろなプラットフォームでリメイク版が発売されていますが、HD-2D版発売前に遊べたものはスーパーファミコン版がベースになっていて、つまり30年近く前の作品なんですね。逆にいうと30年間、ちゃんとしたフルリメイクがされなかったわけです。さすがに今ではちょっと遊びにくいところがあるので、じゃあそれをどうリメイクしようか? という話が社内で挙がりました。

早坂 以前発売された『オクトパストラベラー』のHD-2D表現がようやく世間に浸透してきたように思いましたし、「ドラゴンクエスト」シリーズ 初期の3作品とテイストも合うだろうからHD-2Dで今リメイクするべきだろう、と。

早坂 それも相当考えましたね。僕も『オクトパストラベラー』に関わっていたので、同じ路線で戦いたくはないというか。やはり「ドラゴンクエスト」 は「ドラゴンクエスト」の特色を出していきたいと、差別化についてはすごく考えました。

堀井 最初は3Dで、という話もあったんですが、ファミリーコンピュータで出したゲームを3Dにしちゃうと、本当にゲーム性が変わっちゃうなと思ったんです。HD-2Dのほうがゲーム性は変わらずに、昔の思い出をきれいに出せるかなと。

堀井 たとえばダンジョンも、見た目は違うけれど、ちゃんとルートは昔といっしょなんですよね。道順を「ああ!」って思い出す人って、けっこういると思うんですよ。

堀井 そうそう(笑)。それをちゃんと踏襲しているんです。

背景の描き込みが圧倒的にパワーアップしたHD-2D版。町や村の生活感、洞窟や塔やほこらの臨場感は、物語の背景や世界設定をより鮮明にしてくれます
ファミリーコンピュータ版やスーパーファミコン版をプレイ済みだと迷わない!?

『DQIII』が時代を越えて愛される理由

堀井 「みんなの思い出と共にある」からだと思います。「ドラゴンクエスト」が一種のコミュニケーションツールになって、「どこまでやった」とか、「もうクリアしたか」とか、「あれを見つけた」とか、あとは「お兄ちゃんにレベル上げを頼まれた」とかの話で盛り上がって(笑)。
そういういろいろな思い出があるから、いまだにファンのみなさんが覚えてくれていると思うんですよね。自分の歴史といっしょに「ドラゴンクエスト」がある、っていう感じで。それが愛されている理由じゃないでしょうか。

堀井 そう。だから、コミュニケーションツールなんですね。それをネタにいろんな話ができるし、思い出もできますし。

堀井 単なるリメイクだとつまらないので、いつもなにかしら新しい遊びを入れたくなるんです。たとえば『DQIV』をリメイクするときには『DQVII』にあった仲間会話を『DQIV』にも入れようと思ってみたりとか。

堀井 今回の『DQIII』はマップがキレイになって職業が増えてイベントも増えていますが、いろいろなアイデアを早坂くんからもらいました。

早坂 そうですね。今回、堀井さんからいろいろと裁量権を渡していただいたので、僕らからの発案が多かったです。

早坂 あのロマリア街道を追加したのには、お話の導線を整えるためにこの場所を塞いでおきたいといった理由もありましたね。元のストーリーを邪魔しないようにと考えて追加し堀井さんに見ていただいています。

堀井 最初のファミリーコンピュータ版のときは容量もなくて、プレイヤーの想像に任せた部分もけっこうあるんですよね。そういう部分を補完してもらったという。

堀井 今の時代から思うと、けっこうシビアでしたね。

早坂 HD-2D版だと、こんなにいっぺんに敵が倒せて、サクサク進めて……と思っていただけるかと。バトルについてはあとでいろいろ触れると思いますけど、物語は同じでも全然違うゲームだなと感じていただけるはずです。

ロマリアの北にあるロマリア街道。いろんな町や城に通じる、交通の要となる場所にある
バトルでは弱点を突く重要さも増している。敵の持つ弱点、耐性もわかりやすくなり、しっかり対処すれば攻略しやすくなっている

スーパーファミコン版のリメイク『DQIII』

全体的なバランスが見直されたスーパーファミコン版。HD-2D版はさらに遊びやすさを追求し、演出をパワーアップしたバージョンと言える

新職業「まもの使い」とパーティ編成

早坂 それでいうと、バトルロードのほうが先ですね。モンスター格闘場のままだと海外のレーティングが上がってしまうという話があり、じゃあ変えなきゃっていうところからすべてがスタートしたんです。

早坂 HD-2D版を開発する際に海外のレーティング基準が変わったんです。僕らとしてもびっくりしました。

堀井 うまいこといきましたよね。まもの使いでひみつの場所にいるモンスターを保護して、それをバトルロードで戦わせるという。

モンスター・バトルロードは保護したモンスターが増えれば増えるほど楽しい新要素。高ランクはやりがいがある!

早坂 そうですね。モンスターを連れて歩いちゃうと、それこそ『DQV』の仕様そのままになってしまうので、それはあまりやりたくないなと。

早坂 先ほどもお伝えしたとおり、モンスターを引き連れるタイプは、それこそ『DQV』になっちゃうので、それをどう避けるか、となったときに生まれたのが今回のコンセプトって感じですね。はぐれモンスターとなかよくなって技を教えてもらって、新しい特技を覚えていく……というタイプのまもの使いです。

早坂 そうですね、強いですね(笑)。

堀井 「どとうのひつじ(※)」も強かったしね。

※どとうのひつじ:『DQVII』で「ひつじかい」が覚える特技。呼び寄せた羊の大群が敵にダメージを与える。

堀井 いつもは、勇者・武闘家・僧侶・魔法使いですが、本作では勇者・まもの使い・僧侶・魔法使いというパーティにしました。まもの使いがかなり活躍するんですよ。はぐれモンスターを見つけやすいのもおもしろいですよね。

早坂 僕はもうオーソドックスに「ゆ・せ・そ・ま」です。

早坂 というのも、やっぱりプロデューサーなので、いちばんスタンダードなバランスを確認しなきゃいけないんですよ。むしろ僕はその編成でしかプレイしてなくて、今では愛着が湧いちゃったみたいな感じです。

早坂 そういう人は多いと思いますね。

堀井 お金が増えるのはありがたいですからね。

早坂 はい、ちゃんと戦える職業にもなっています。遊び人もいつも通りバトル中に遊んだりはしますけど、普通に戦えますよね。

堀井 昔はもっと役に立たなかった(笑)。

早坂 賢者に転職したときに役に立つ特技も覚えさせたい、という意図ですね。

頼りになり過ぎる! まもの使いのここが強い

保護したモンスターたちが駆けつけ敵全体を攻撃してくれる「まものよび」
「ビーストモード」を使うと2回連続行動ができるように!

味方も敵もパワーアップ!? 本作ならではの戦闘バランス

早坂 バランスはかなり調整しています。出てくるモンスターの数から、行動からなにから。新しい特技が追加になり、手を入れないとバランスが取れないことがありましたので。

堀井 ファミリーコンピュータ版のときは、1画面に表示されるモンスターの数にも制限があったんです。大きいモンスターだと3体表示するのが限界だったりしましたが、今はたくさん表示できますからね。そのあたりは全部バランスを変更しています。

堀井 弱い相手でも油断禁物です。

堀井 それで倒せればかなり経験値が入ったりするので、一種の攻略テクニックでもありますね。

早坂 みなさん、今回のかえんムカデは強いと言われていますね。やたら「ひのいき」ばかり吐いてくるからですかね。

ザコでも油断できないのが『DQIII』!

イシス周辺はかえんムカデに加え、守備力が異常に高いじごくのハサミなどもいて苦戦しがち
忘れたころにやってくる!? ばくだんいわの「メガンテ」。とんでもない威力はHD-2D版でも健在

早坂 ちゃんとまんべんなく配置するようにはしています。ただ、みなさん苦戦するところはかぶっているみたいですね。

早坂 そうです。複数回行動してくるとか、攻撃手段を強くするとか、その辺りの調整をしていますね。

堀井 眠ってしまっても、攻撃されるとちゃんと目が覚めるようになっていますしね。

早坂 それでも、やっぱり激しいところは激しいし、気が抜けないところも残しています。

堀井 昔は全員が「めいれいさせろ」でしたね。

堀井 雑魚はオート、ボスはマニュアルって人が多いですね。

※バシルーラ……相手を遠くまで飛ばしてしまう呪文。パーティメンバーが飛ばされた場合は、戦闘が終わるまで戻ってこない。HD-2D版以外では、飛ばされたメンバーはルイーダの酒場に預けられていた。

堀井 ネタバレになるんですけど、バラモスって中ボスなんですよね。そんなに強くはないけど卑怯な奴、というイメージを出したかったので使わせたんです。バラモスなら仲間がひとりぐらい飛ばされても勝てるだろうと。

堀井 運の要素もありますよね。

早坂 でも今回のバシルーラは、戦闘が終わったら走って帰ってきてくれるので。酒場まで迎えに行かなくても済むようにと、優しくなっています。

早坂 バトルの成長のカーブ、つまり「この場所へはこのレベルくらいで到達」というのを、ゲーム側で調整するために入れているという面が強いですね。ボスがいないと本当に自由過ぎて、逆にバランスを取るのがすごく難しいんですよ。

早坂 ボスがいると「こいつを倒すためにある程度レベルアップが必要」となって、開発側でバランス調整が効くようになるんです。今回のピラミッドですとか、オーブの辺りのボスは、ちょうどその部分で当てはまったので追加された感じです。

堀井 追加されたボスは目的を達成するときに登場するんです。ボスがいないと「ピラミッドってこれで終わりなの? 本当にいいの?」となってしまう人もいて。ボスがいたほうがクリアしたという感じが出るんじゃないかと。

早坂 いい意味で区切りになってると思います。

苦労した人も多そうなピラミッド。新ボスのナイルのあくまも強い!
長い旅の末、ついにたどり着いた魔王バラモスの城。みごとバラモスを倒したあとに明かされるのは、さらに邪悪なる大魔王がいるのだという驚きの事実!

HD-2D版初登場の新たな強敵たち

ピラミッドの守護者 ナイルのあくま

「まほうのカギ」が眠るピラミッドに出現し、「バギ」や「バギマ」を多用する。こちらを眠らせてくる、部下のマミーズアイから倒してしまおう

ファントム&よみのばんにん

テドンの村に出現。複数で登場して眠り攻撃やマヒ攻撃を繰り出し、さらに仲間を呼んでくるという恐ろしい集団

地球のへそに潜む ウォーロック

「すてみ」「バイキルト」で肉弾戦を挑んでくるが、呪文のほうがやっかいかも。配下のリリアックを「ザオラル」で生き返らせる

ネクロゴンド火山の主 レヴナント

オルテガを火山に突き落としたという、勇者にとって因縁の相手。強力な攻撃呪文に加え、「やけつくいき」も吐いてくる

製作者お気に入りポイント&読者へのメッセージ

堀井 とにかく、絵がきれいになったところですね。昔のフィールドは16×16のドットのマス目で、256×256マス分の広さしかなかったんですよ。それが今回は、けっこう広い。大陸が広がっていて、しかもそこにひみつの場所もありますし、探索する楽しみが増えましたね。

早坂 自分はキャラクリエイトですね。あれは僕が発案して、3か月かかって自分で仕様をまとめたものなので、思い入れがあってお気に入りです。

堀井 本作では、追加している部分も多いんですが、早解きしようとすれば早解きできるし、じっくり遊ぼうとすればそうすることもできます。各地域に隠しネタがあるので、そのネタを楽しんでほしいですね。難易度「いばらの道だぜ」もありますし。本当にこのモードは、きついみたいですので。

早坂 ひらがなモードもありますので、小さいお子さまにもぜひ。

堀井 お子さんと遊ぶときは、「楽ちんプレイ」であれば楽しめるかなと。HPが1未満にならないんですよ。

早坂 買っていただいた方に対しては「ありがとうございます!」の言葉しかないですね。隅々まで遊んでもらえたらうれしいですし、次回作に向けてもどうなるか、考察などして楽しみにしてほしいと思います。まだ遊ばれていない方に対しては、クリスマスプレゼントやお年玉にぜひいかがでしょうか、と。きっとお正月にお楽しみいただけると思います!


2025年1月21日発売予定のニンテンドードリーム3月号でも、引き続き堀井さん・早坂さんのインタビューをお届け。
主人公の父親オルテガの旅路とその生涯、そしてエンディング後に判明する驚きの新事実についても語られる……!?

<商品概要>

■ドラゴンクエストIII そして伝説へ
発売日
2024年11月14日より発売中
価格
パッケージ版、ダウンロード版ともに7678円(込)(※)
ジャンル
RPG
プレイ人数
1人
CERO
12歳以上
発売元:スクウェア・エニックス
▶︎公式サイト

通常版+ブック型収納ボックス 9878円(込)、旅立ちの4人パーティセット 1万980円(込)、旅立ちの4人パーティセット+ブック型収納ボックス 1万3180円(込)、勇者と旅の仲間コンプリートセット 1万8570円(込)、勇者と旅の仲間コンプリートセット+ブック型収納ボックス 2万770円(込)
※いずれもパッケージ版のみ

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