任天堂が技術支援した百人一首の施設「時雨殿」とは? ニンテンドーミュージアム「しぐれでんSP」との関係を知る!
かつて任天堂が関わっていた施設、「時雨殿」。ニンテンドーミュージアムでの体験展示「しぐれでんSP」をきっかけに、その名を初めて聞く人も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな知る人ぞ知る「時雨殿」について解説します。その要素がゲームソフトになった『DS時雨殿』も紹介。
目次
(以下、文・写真:イッキ)
任天堂が支援した百人一首施設「時雨殿」
「時雨殿」は、2006年に京都・嵐山にオープンした百人一首をテーマとした体験型学習施設です。
任天堂は花札だけではなく、「百人一首」の製造も行っており、たいへん縁の深いものです。
時雨殿の建設費用は元任天堂社長の山内溥氏が負担し、任天堂は展示物の技術支援を行いました。
嵐山の渡月橋の近く、藤原定家が百人一首を選歌した地、小倉山の麓に建設されました。
定家は選歌を小倉山の山荘「時雨亭(しぐれのちん)」で行ったとされており、時雨殿の名称もこれに因んだものとなっています。
運営はオープン時からリニューアルされた現在まで公益財団法人 小倉百人一首文化財団が一貫して行っています。
なお任天堂は現在も百人一首の製造を続けており、ニンテンドーミュージアムでも販売されています。
上の句~下の句が書かれた読札と下の句のみが書かれた取札がペアになっています。(読札は歌人が描かれているため絵札とも呼ばれます)
読み手が読み上げた上の句を聴き、対応する取札をより早く正確に取って遊ぶかるたの一種です。様々なルールがあり、坊主めくりなど初心者向けのルールもあります。
詳細なルールは全日本かるた協会の公式サイトにて確認できます。
▼任天堂の製造工場についてはこちらの記事もご覧ください
時雨殿で体験できたこと
時雨殿の最大の特徴は、ニンテンドーDSを流用した館内ガイド「時雨殿なび」と連動する床面ディスプレイを使用した体験展示でした。
また、ほかにも特徴的な体験展示として「体感かるた五番勝負」「百花繚乱」の2つがありました。
時雨殿なびとニンテンドーフロアビジョン
薄暗い雰囲気の展示室の床に敷き詰められた70枚の液晶ディスプレイは「ニンテンドーフロアビジョン」と呼ばれ、京都市のマップや百人一首の読札が映し出されます。
マップが映されている際に時雨殿なびで好きな施設を選択すると、ディスプレイに「ちどり」が現れ、選択した施設まで案内してくれる連動要素があります。(もちろん任天堂へも案内してくれます!)
マップは時間経過と共に徐々に夜景へと変化し、夜景の後はディスプレイが読札の表示に切り替わり、手元の時雨殿なびに表示された読札と同じ読札をディスプレイの中から探す遊びが始まります。
百人一首は本来、読札を聴き、取札を取る遊びですが、ニンテンドーフロアビジョン用に絵合わせルールにアレンジされています。
体感かるた五番勝負
正面のディスプレイに映し出された清少納言や紫式部などの歌人との対戦ができます。
プレイヤーの手元には取札が映されたタッチパネルがあり、実際の対戦さながらの臨場感が味わえます。
ニンテンドーDS版にもほぼ同じモードが収録されています。
百花繚乱
展示室内の壁面には百人一首の歌を屏風に見立てた展示があり、ここに時雨殿なびを持って近付くと屏風に対応した札が表示され、朗詠を聴いたり、歌意を知ることができます。
現在の時雨殿
時雨殿では、このような百人一首の伝統と最先端デジタル技術の融合が生み出した新たなインタラクティブ体験が楽しめました。
ただ、残念ながら2012年に施設関係者から任天堂関係者が外れたことで、これらの設備は撤収され、体験も終了しています。
2018年に現在の「嵯峨嵐山文華館」に名称が変わりました。
建物の外観やコンセプトは大きくは変わっておらず、引き続き現在まで百人一首の展示施設として運営されています。
任天堂の要素は無くなりましたが、施設の略年表には「時雨殿」の名前が今でも残っています。
百人一首の文化やひとつひとつの歌意を知ることができる常設展、カフェやショップも備わっており、混雑する嵐山地域のなかでは比較的ゆったりと過ごすことができる観光スポットとなっています。
ゲームに登場する時雨殿
時雨殿を題材としたゲームソフトも発売されました。
タッチで楽しむ百人一首 DS時雨殿(ニンテンドーDS)
【2006年12月14日発売】
百人一首を覚えて遊ぶことができるソフト。「かるた五番勝負」「かるたを極める」「かるたで対戦」「ちどりの京案内」の4つのモードが収録されており、京都の街案内を見ることもできました。
このゲームソフトの最大の特徴は百人一首の基礎となる知識、上の句・下の句の語呂合わせが覚えられること。
1回で5つの語呂合わせを覚え、最終的に全札の暗記を目指すことができます。
「ちどりの京案内」では、京都府内のマップを基にちどりが各所の解説をしてくれます。発売当時のマップのため既に古い情報となってしまっていますが、もちろん、本家時雨殿と同様に時雨殿や任天堂本社も収録されています。
「かるた五番勝負」では、百人一首に登場する5人の歌人(清少納言、蝉丸、大弐三位、紫式部、権中納言定家)と対戦することができます。
時雨殿でも歌人との対戦ができましたが、本作でも同等の体験ができます。
そのほかにも目や耳、判断力、記憶力、さらには勘まで、百人一首には欠かせない素養に特化して鍛えることができます。
どのモードも魅力的で、発売から時間が経過していますが、時雨殿で体験できたことが手元で体験でき、今遊んでもその魅力を感じるには十分な内容となっています。
タッチで覚える百人一首 ちょっとDSi時雨殿(DSiウェア)
【2010年11月4日配信開始】
現在はニンテンドーDSiショップ、ニンテンドー3DS向けニンテンドーeショップがどちらも新規販売を停止しているため、残念ながら入手不可能となっています。
DSi版ではDS版から「かるたを極める」、「かるたで対戦」の2つのモードを収録し、その名の通り「ちょっと」時雨殿を体験することができます。
ニンテンドーミュージアムの時雨殿(しぐれでんSP)
さて、時雨殿の名を聞く機会がなくなりしばらくの時が経ちましたが、2024年に時雨殿の名を再び目にする時がやってきました。
ニンテンドーミュージアムではウルトラハンドなど任天堂製品をモチーフとした体験ができますが、その中の一つが「しぐれでんSP」です。
しぐれでんSPは専用の端末を使用し、端末に映し出される読札を頼りに、床面ディスプレイに映し出されている取札を探し、撮影する遊びとなっています。
最大20人で同時に遊ぶことができ、最後にはランキングが表示されます。
百人一首は上の句と下の句の組み合わせを覚える必要がありますが、しぐれでんSPでは、初心者用にアレンジされています。
より見た目に分かりやすくするため、床面ディスプレイに表示される取札には、本来描かれていない読札側の歌人が描かれています。
そして、手元の端末には、歌人が描かれていない読札が表示され、対応する取札も徐々に表示される仕様となっているため、百人一首の組み合わせについて全く知識がなくても楽しめる作りになっています。
このようにアレンジは加えられていますが、百人一首経験者の知識も当然ながら活用できるため、熟練者から初心者まで楽しめる任天堂らしい作りになっています。
▼しぐれでんSPについてはこちらの記事もご覧ください
さいごに
任天堂が技術支援を行っていた時雨殿(現嵯峨嵐山文華館)、そして、時雨殿に関連する要素をご紹介しました。
百人一首を含めた「かるた」は任天堂の歴史を知る上で欠かせない存在ですので、京都へ足を運ぶ際はぜひ嵯峨嵐山文華館を訪ねてみてください。
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