星のカービィ スターアライズ Vol.2 山梨直送インタビュー前編2(2018年5月号より)
1人でも友達とでも、最大4人でワイワイ遊べるNintendo Switchの『星のカービィ スターアライズ』。ニンテンドードリーム誌上で行われた開発者インタビューを複数回に分けてお届けします。ここからは、気になるアレコレをとっかえひっかえ聞いていきます! ボス、そして時には味方になるおなじみのキャラ、個性際立つ新キャラ三魔官など、主にキャラクターとその戦いについてぶつけてみました。
キャラクターについてじっくりと掘り下げます!
『星のカービィ スターアライズ』Vol.1 山梨直送インタビュー(前編)
『星のカービィ スターアライズ』Vol.3 インタビュー The アルティメット(前編)
『星のカービィ スターアライズ』Vol.4 インタビュー The アルティメット(後編)
・ネタバレも含んでいる場合があります。
<ハル研究所 プロフィール(上の写真左から)>
レベルデザインディレクター 遠藤 裕貴さん
レベルデザインディレクター。ゲーム中のステージ作成(レベルデザイン)をメインに、主にマップに関わる敵キャラやギミックのディレクションを担当。サブゲームの監修も行う。
ゼネラルディレクター 熊崎 信也さん
『星のカービィ』シリーズを統括するゼネラルディレクター。『スターアライズ』ではゲームデザインのディレクションを担当し、全体を取りまとめている。
シーケンスディレクター 神山 達哉さん
シーケンスディレクター。ゲーム進行全般のフローの取りまとめを担当し、主にメニューやワールドマップのディレクション、AI関連、フレンズ能力などを担当。ムービーの監修も行う。
Q.ボスのデデデ大王がマッチョ姿になったのはなぜ?
熊崎 集大成タイトルなのに、デデデ大王がボスとして不在っていうのはないなぁと思いました。『スーパーマリオ』のクッパみたいに、デデデ大王も定番のボスキャラとして君臨してほしくて。ただ最近は一緒に冒険したりして、“ちょっと仲のいいアイツ”状態になっていたのですが、今回は闇のハートで洗脳されたおかげで本気のデデデ大王と戦うことができるようになりました。過去作ではパワーアップすると武器が変わったり、仮面を付けたりしましたので、今回は形態が変わったら面白いかなって思ったんですね。でも変わりすぎて別人になってしまっても嫌だし、どうせ本気になるなら野獣みたいに大暴れしちゃえと。まずはハンマーで戦うところを変えたいと考えました。最近出た『バトルデラックス!』では巨大ロボ「デデ・デデデンZ」に乗って戦っていたので、じゃあ次は己の肉体を武器にハンマーのようになった拳で戦うようにしようと(笑)。ムキムキの腕で、ばこーんばこーんと叩きつけて攻撃します。でも『カービィ』らしい世界観も残したかったので、足だけはそのままだったりします。
―― そこが『カービィ』らしさ、なんですか(笑)。
熊崎 ちなみに戦闘中に流れる曲名は「マッチョ オブ デデデ」です! 前後半でメロディーが変わる、定番と新規が織りなす新アレンジになっています。
Q.メタナイトとの戦いが「GET IT!」から始まるのは?
熊崎 久しく本人と全力で戦っていなかったので、その剣を取れという原点の戦いにしたかったんです。邪悪なハートに侵されたことよってメタナイトの野心が芽生え、戦闘モードに入ってカービィに剣を取らせるわけです。
―― 剣を取らないでしばらく待っていると、剣を蹴るメタナイトが見られて衝撃的でした。カットインも変化しますね。
熊崎 メタナイト自身がしびれを切らして怒ってキックをするのですが、メタナイトが乗っている高い丘を壊しちゃうなど、こちらが戦わないでズルいことをしているので…非礼には非礼をという感じですね(笑)。メタナイトの蹴りモーションはデザイナーがいくつかパターンを作ってくれて、最初はもっと怒りに満ちていました。騎士道として剣を足蹴にしていいのかは悩みましたが、彼自身が「無礼者!」と言っている感じがして、結果的に新しくもいい味を出してくれました。
Q.メタナイトの剣とカービィの剣が当たった時に、カキーンとぶつかるようになったのはなぜ?
熊崎 それはプログラマー側の案から生まれたものです。剣と剣が当たったときに、つばぜり合いのような相殺が起きたら剣を選んだ理由が盛り上がるんじゃないかと思って採用しました。ソード能力の強さって、コピー能力全体の中でニュートラルな立ち位置であると考えています。見た目もかっこいいですし、ライトなユーザーさんでも、剣を振るだけで戦えますからね。いっぽうで、コアユーザーにとってはやや物足りなく感じるなぁとも思っていて。そこで、メタナイトがカービィにソード能力で戦うことを求めてくるということに対し、新しい変化があった方がいいなと考え実装しました。剣を当てたときの硬直が長いと、ユーザーにとってテンポが悪くなるのか、それとも別のプレイヤーが追撃しやすくなるのか悩みながら…。
最終的には硬直時間を長めにしました。うまく剣で相殺していけば、メタナイトにあまり行動させないまま倒すことができます。戦略に生かせる部分と、演出上盛り上がる部分がバランスよく調整できたと思います。あと特に前半戦は、2作目『夢の泉の物語』で戦ったときのイメージにも近づけています。最近のシリーズは演出や展開もものすごく早くて、いろんなことが同時に起きるのですが、いったんボスの動きが止まるのもライトなユーザーさんには必要かと思っています。
Q.デデデ大王・ワドルディ・メタナイトがドリームフレンズとして冒険できるようになった経緯
熊崎 ドリームフレンズたちは、『Wii』のときにプレイヤーとして使えたメンバーです。25周年のフィナーレを飾るタイトルですし、カービィの側に一番いてほしいキャラクターって考えると、やっぱり彼らは外せませんでした。過去作では「メタナイトでゴー!」や「デデデでゴー!」があり、「ワドルディでゴー!」に絞る案もありましたが、今回はドリームを叶えるべく、頑張って作りました。まとめて全員出しちゃえっと(笑)。デデデとメタナイトがタッグを組んでフレンズアクションをしたり、メタナイトが剣を掲げてそこにカービィが炎をつけたりなど、ファンにはたまらない夢のような絵作りもでるので、画面も映えます(笑)。
Q.ドリームフレンズとして冒険するデデデ大王が、過去作より体が大きくなったのはなぜ?
熊崎 これまでは、やりたくても無理だったんです。キャラクターサイズを共通化した方が断然作りやすいですし、地形判定や当たり判定が違うものにすると…えらいことになっちゃうんです。見た目だけが違って判定が同じなら問題無いのですが、そうはいかなくて…。
遠藤 大きい判定だと地形に挟まれたり、狭い通路を抜けられなくなったりすることがありますからね。過去作では大きいキャラクターだけど小さい地形判定を使っているということがありましたが、『スターアライズ』では大きい地形判定を使ってもゲームの進行が破綻しないようになっています。その分、キャラクターを大きく、魅力的にすることができました。他にも、とんがった三角の地形などは判定が厳しいのですが、今回は地形判定の破綻を無くしたおかげで自由にステージマップを作ることができるようにもなりました。
Q.物語には登場しないバンダナワドルディが、ドリームフレンズとして登場することになった理由
熊崎 ワドルディって、ヤリを持っているワドルディ、ヌラフに乗っているワドルディ、綿毛で飛んでいるワドルディなど、いろいろいるんですけど、やっぱりプレイヤーキャラになった方が認知度が上がるなと思いました。なので、バンダナワドルディでワドルディというキャラの市民権を得ようと思っているんです(笑)。もともとは『Wii』のとき、デデデ大王とメタナイトと、もう1人ぐらい『カービィ』の世界に「こいつが必要だよね」という定番キャラが欲しいなと思い、ワドルディ一族の中から代表してバンダナワドルディを登場させました。
最初はたとえば彼に「バンディ」のような固有の名前を付けようかとも考えたのですが、名前をアピールしたいというよりワドルディの認知度を上げたいので、シンプルに「バンダナワドルディ」にしました。『トリプルデラックス』と『ロボボプラネット』ではすれちがい通信でアシストして味方のワドルディだと明確にし、『バトルデラックス!』ではカービィの相棒キャラとして登場させています。
―― シリーズ中のバンダナワドルディって同一人物なんですか?
熊崎 そうです。バンダナを付けた別人のワドルディではないですよ(笑)。
Q.メタナイトの仮面といった、リアルな部分のさじ加減はどうやって決めた?
熊崎 HD機になったことで、どこがリファインされたのかが注目されると思います。羽など表現を突き詰めたくなる要素が多いメタナイトですが、一番目立つのは鉄の質感を持った仮面と七支刀のような剣ですね。ボスとしては非常に小さいキャラクターですけど、見たときにそれらの質感を強く感じさせられるようなものにしたいと思いました。大きいボスであの質感だったら、少しくどい感じになるはずです。メタナイトを引いて見たときにも鋼鉄の仮面だと感じられるように、インパクトを重視してデザインしていました。
Q.バンダナワドルディは、今回登場しなかったコピー能力「スピア」をカバーしている?
Q.フラン・キッスのことを教えてください
Q.フラン・ルージュのことを教えてください
熊崎 炎の形を模した「フランベルジュ」という剣を元に「フラン・ルージュ」と名付けました。「フランキスカ」と「フランベルジュ」って、どちらもフランと名がついていておしゃれですし、姉妹的な関係がありそうだと思いますよね。私がある程度の設定はカービィの奥深さの1つとして考えたのと、武器の属性として氷・炎・雷の3種類が欲しかったのもあります。設定自体はゲームデザインに影響しないよう、全体像が固まってから考えるんですが。ルージュっていうと、赤い口紅をイメージしますよね? 口紅に対して…キッスです! 二重にも三重にも意味を考えて、もう限界かなと思いつつさらに考えて四重にして。…ここまで来ると、普通に遊ばれる方にはもう気にされなくてよいかな、と思われるレベルの設定ですね(笑)。
Q.ザン・パルルティザーヌのことを教えてください
熊崎 三魔官のリーダーである彼女もフランなんとかって名前を予想すると思うのですが、驚かせたい気持ちがあって。他の2人に対して出生も違うように想像させるのと、個性としてアイネクライネナハトムジークみたいな著しく長くて覚えにくい名前にしたかったんです(笑)。持たせる武器は雷を模した「パルチザン」で、名前もアナグラムで考えたものです。ただ「キッス」「ルージュ」「パルル」と、分かりやすい愛称があればいいなと思いました。三魔官の個性も、冷静、熱血漢、それを束ねるリーダー、武器とカラーリングと属性のイメージに合わせて何重にもかけて考えました。
Q.三魔官に声優を起用した理由は?
Q.ジャマハルダの挨拶はどのような狙いで考えたもの?
熊崎 セリフやテキスト周りは私が書いているのですが、ジャマハルダ語は世界観を深めるために入れました。前作『ロボボプラネット』では、前々作『トリプルデラックス』からの変化を出したい為に、ハルトマンワークスカンパニーという会社を作り、秘書スージーが「いご おみしりおきを。」みたいな名刺交換的なセリフをしゃべったら面白いんじゃないかなと考えたものです。今回は、異文化を持つ者が襲ってきたと感じられるように宇宙語をしゃべったら面白いなと考えました。カービィは無言なので、敵側の表現を変えることによって毎作ストーリーの違いを簡潔に出しているのです。ジャマハルダ語の作り方としては、いかにも外国語的なものや、伝えたい意味が直感的に分かるように部分的に日本語を取り入れたりしています。
Q.カービィのことを「旅の若者」と表現しているのは、設定を再定義したのでしょうか?
熊崎 シリーズ1作目の『星のカービィ』での設定が「プププランドにやってきた旅の若者」なので、どこから来たか分からないということを忘れたくないなと思いました。シリーズを重ねていくと、タイトルによって設定がアレンジされたりすることもあるのですが、『スターアライズ』は原点回帰の部分もある集大成ですので。開発チームに向けても、忘れていないよという意志表明をしました。シリーズに詳しくないメンバーからは、若者っておかしくない? と言われるようなこともありますが、あらためて明言します。カービィは「旅の若者」です!
Q.HDになってカービィの変わった部分はどこですか?
遠藤 カービィが赤っぽくなるマグマのステージでは、マグマの流れる場所を狭く配置してカービィが光の影響を受けているのを分かりやすくしています。ただし、背景がリッチになるとその分キャラクターが目立たなくなるので、ちゃんと見えるように色調整に苦労しました(笑)。
『星のカービィ スターアライズ』Vol.1 山梨直送インタビュー(前編)
『星のカービィ スターアライズ』Vol.3 インタビュー The アルティメット(前編)
『星のカービィ スターアライズ』Vol.4 インタビュー The アルティメット(後編)
関連リンク
『星のカービィ スターアライズ』 公式サイト
星のカービィ ポータル
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