バディミッション BOND 開発者インタビュー  #1 京と紅玉

contents
#1 京と紅玉
#2 誌面上のランデブー
#3 熱狂は留まらない
#4 サイドエピソード
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任天堂とコーエーテクモゲームス相棒関係へのプロローグ

企画のスタート、開発された経緯

襟川 大変ありがたいことに、この企画は任天堂さんからお声がけをいただいて始まりました。最初は、ルビーパーティーブランドが得意とする、女性向け恋愛ゲームを作ろうということでお話をいただきましたね。

中山 企画がスタートしたのは結構前で、2016年頃でした。

襟川 その当時は、Nintendo Switch用の女性向け恋愛ゲームの企画がほぼなく、私たちとしてもチャレンジしたいと考えていた頃でしたので、ぜひにということで。

中山 そうですね。その時の任天堂の商品群は、比較的アクションゲームとか複数人でワイワイ楽しむようなタイトルがラインナップとしては多かったのですが、こういう遊びが得意じゃない人もいるだろうな…と思いまして。ゲーム初心者でも気後れせずに遊べるような、ちょっと違うタイプのソフトを用意して、より多くの人にNintendo Switchに興味を持っていただけるようなタイトルを企画できないかなと、いろいろ探していたところでしたね。

—— 女性向け恋愛ゲームではなく、誰でも楽しめるようなアドベンチャーゲームとして路線を変更したのですね。

襟川 はい。 企画の過程で「恋愛に限らず、多様な絆を描こう」という方針に変わっていきまして、最終的には『BOND』のような、すべての人へ贈るアドベンチャーゲームを作る話になりました。せっかく任天堂さんとルビーパーティーが組んで新しいゲームを作るのだから、ひとりでも多くのお客様に愛していただけるようなタイトルにしたいと話していましたね。

中山 弊社とコーエーテクモゲームス(以下KT)さんは、結構前から『ゼルダ無双』などでお付き合いがありましたが、新規IPに取り組んだことがないなということに気が付きまして…。個人的には、ルビーパーティーさんがその頃に出された商品が記憶に残っていたので、KTさんと新規企画でご一緒するのはありそうでなかったし、どうかな? と思いました。

—— ルビーパーティーさんの方では、どのような意気込みでしたか?

襟川 非常に魅力的なお話でしたし、大きなチャレンジになると感じていました。ルビーパーティーのタイトルでは、主に女性主人公の恋愛や冒険を描いてきましたが、今回は男性同士の熱い絆がテーマになるということで、ゲームシステム、世界観、コンセプトなど、これまでとは視点を変えて考える必要がありました。私たちだけで挑んでいたらかなり大変だったと思いますが、任天堂さんという力強い味方と、まさにバディを組んでいましたから、大変心強かったですね。

—— 宮内さん、杉原さんは、どのように企画に関わり始めたのでしょうか?

宮内 お話をうかがった当時は、オメガフォースという開発チームに所属していましたので、どうしてルビーパーティーが私を!? という感じで、大変驚いたことを覚えています。ルビーパーティーは、女性主人公の恋愛をテーマにした作品を手掛けるブランドでしたので、私自身が力になれるイメージが全く湧かなかったのですが、これまでとは大きく異なるテーマに挑戦したい! という現場の思いを感じられ、『BOND』の制作に加わる決意をしました。また、ADVゲームを以前に手掛けた経験がありましたので、少しは力になれるんじゃないか、という気持ちもありましたね。

杉原 任天堂さんがルビーパーティーにお声がけくださったことを受けて、襟川から「こういう話をいただいているんだけど、企画案を出してみないか」と言われたのが始まりでした。任天堂さんと一緒に制作する新規IPということで、プレッシャーも感じましたが、それ以上にワクワクしたことをよく覚えています。何案か出して、興味を抱いていただいたのが「正義×悪で挑む、ショー×潜入アドベンチャー」という企画でした。その頃は恋愛ゲームの想定でしたが、今の『BOND』に通じる部分も、ところどころあったかなと思います。

「相棒」がテーマのADV。ゲームとしてのコンセプト

—— この作品のテーマであるバディものにしよう、となった経緯について教えていただけますか?

中山 古今東西で支持されている普遍的なテーマで、かつルビーパーティーさんの強みが活かせるような方向性を探していた中で、たしか任天堂のほうから「バディものってどうですか?」と提案したと思います。

襟川 そうでしたね。恋愛以外で、みんなが喜んでくれる人と人との関係性って何だろうといろいろ話していましたが、「バディ」という言葉を聞いたとたん、私もこれだ!と思いました。

中山 ルビーパーティーさんと何かを作るのであれば、濃密な人間関係や、心理描写を生かせるようなテーマがいいなと最初から思っていました。ちなみに、主人公ルークの職業は国家警察官ですが、入り組んだ犯罪トリックに挑むミステリー小説やサスペンスドラマの方向性はピンときていませんでした。

—— 刑事の主人公が、事件を捜査していくというのは、ADVゲームではよくありますね。

中山 そうですね。もちろん事件や捜査に関する話も語るのですが、『BOND』では直接的な事件や捜査の話題だけを注視していればゲーム攻略がうまくいくというものではなく、やはりルビーパーティーさんが最も強みとする、キャラクタードラマから得た情報をゲームの軸にしたいという思いがありました。

「バディ」の要素をゲーム中に落とし込む試行錯誤

—— キャラクターたちへの理解が物語の進行のカギになる作りにしたということですね。

中山 相棒関係や、キャラクターの心理描写が、ゲーム中でも長い尺を使って語られるので、多くの時間をかけてプレイヤーが目にしたことが単なる「プロフィール紹介やキャラクター性の説明」で終わるのではなく、ゲーム攻略に確実に影響する設計にできないかとは思っていました。具体的には捜査マップでのクリティカルトークを問う部分の「成功キャラクターは誰か?」とか、スポットの中で出題される三択クイズの一部が当てはまります。シナリオで目にしたキャラクターの個性の情報が、捜査パートの答えやヒントに繋がっていくというような作りの部分ですね。そのうえで、このゲームではバディが6通りありますので、ゲームを遊んでいる中で自然と6通りを味見できるような形にしたいとは思っていました。バディを「組み替える」必要性が生じる仕組みを考える必要があるなと。

襟川 「BOND」のキャラクターは4人いますが、企画当初は、バディの組み合わせが限られていたんです。ルークとモクマは組めないとか、アーロンとチェズレイは組めないとか。でも制作を進めていく中で、やっぱり多種多様な絆を楽しんでほしいということで、4人6通りの絆を扱うことになりました。

中山 バディをあれこれと交代させながら、同時にキャラクター性の把握が攻略の糸口となるような落とし込み方を、模索していた気がしますね。最終的な仕上がりとしては、捜査マップの効率的な攻略のためにプレイヤーは「4人が活躍するのはどんな場所や人を相手にした時か?」、「どのバディで捜査をすると効率よく情報が集められるか?」を考えると思いますが、実はその攻略作業を通じて、キャラクターに対する理解も自然と深まる仕組みになったとは思っています。ルークは甘いものが好き!といった類の情報は、このゲームでは単なるプロフィールではなく、攻略ヒントですからね。

宮内 ディレクションの立場から言いますと、「6通りすべてのバディで遊んでもらいたい」という話が出た時は、正直「まじか?」と思いました(笑)。…というのも、主人公のルークを軸にして、他の3人のうち誰とバディを組むか選ぶ、という仕組みのほうが、ゲームデザインとしてはシンプルに考えられるからです。

—— なるほど…。今となってはルーク以外のメンバーでバディが組めなくなると、ぽっかりと穴が空いてるような物足りないような気がします。

宮内 そうなんです。モクマとチェズレイをはじめ、どのバディも、本作のテーマである「絆の多様性」を描くうえでは外せない、という思いが現場にもありまして。じゃあ、6通りを実現しようと腹をくくりました。各キャラクターや各関係性をしっかり掘り下げたい、というルビーパーティーらしい感性を、絶対に活かしたいなと思いましたね。

—— ルークだけでは描けないような濃密なドラマがそこにありましたね。

宮内 はい。でメインストーリーがほぼ一本道だというのは早いうちから決まっていたんですが、その中に、ルーク以外の視点で語られるシーンも設けたことで、ゲームというメディアで描くにふさわしいシナリオになったのではと思います。ただ、「絆の多様性」を体感させる要素が、シナリオだけにならないように工夫もしました。例えば、捜査・潜入スポットの遊びには、正解・不正解にかかわらず、さまざまなバディの特徴や絆を体感できる仕組みを設けています。

—— その結果、4人とも主人公のようになったのですね。

宮内 そうですね。『BOND』は4人とも主人公だと私は思っています。

—— 6通りになったおかげでそれぞれのキャラクターも立ったと感じます。

宮内 はい。ただほんとに最初は「まじか?」と思いましたが。

一同 (笑)

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