バディミッション BOND 開発者インタビュー #3 熱狂は留まらない

アーロンの鋭くもあたたかい瞳の奥を見つめる!

心に秘めたる真実に触れ 胸を熱くしてほしいという願い

杉原 アーロンは、ルークとぶつかりあい、支え合う相棒として、ルークとは正反対のタイプに見えるよう設定していきました。イメージしたのは、やはりあだ名通りの「獣」で、中でも黒ヒョウです。短気で、粗野で、直情型なキャラクターです。ただ、ぐだぐだ考えるのが嫌いなだけで頭はきれるので、ルークが混乱に陥っている時に冷静だったりもします。そのあたりのバランスはかなり意識しました。また、わかりやすいように見えて、実は大きな秘密を持っています。真実を知ったお客様がゲームを振り返った時、各場面でアーロンがどう思っていたのか、何を乗り越えてきたのかに気づき、胸を熱くしていただけたらと願って描きました。アーロンという名前には、「光」の意味があります。いくつかあった候補の中から、アーロン自身がその名前を選んだことで(本人としては何となくだったと思いますが)、「希望や思い出を捨てていないこと」を暗示しました。顔立ちや服装などでは、ワイルドなかっこよさや凄みを追求していただきました。第一印象として「新幹線で隣り合わせたら、緊張で席を移動したくなる」「なぜか自分の財布を差し出さなくてはいけない気になる」などと思っていただけたら成功ですね。

6バディともそれぞれ面白い!! 意外と気が合うモクマとの友情

中山 実はアーロンのキャラクター像や描写に関しては、モクマとチェズレイのように難産だった記憶が少なく、割とスムーズでした。あえて言うなら、ゲーム後半よりも序盤部分のアーロンの役割に関する議論のほうが多かったかもしれないですね。その1つとして、ミッション1でジェイスンとデニスに対し、アーロンがルークのかわりに言い返してほしいと要望を出したことはありました。ルークにとってなぜアーロンが良い相棒になるポテンシャルを秘めているのかを、ゲームの序盤でわかりやすく読み手に感じ取ってもらうために、アーロンはルークが躊躇してしまうような行動をやってのける人物だという描写を必ず序盤に入れてほしかったんです。読み手が「この2人はお互いに欠けているものを持っていて、今はガチャガチャしているけど、だんだんと息が合っていくんだろうなあ」と、自然に予感させる工夫をしてほしいとお願いしましたね。

杉原 はい、よく覚えています。もうひとつアーロン関連で印象に残っているのは、ミッション3でモクマを登場させる時の、アーロンとモクマの見せ方についてです。アーロンとモクマの関係は、アーロンとルークとははっきり差別化して、けっこう最初からウマが合っているような描き方をしてほしい、というリクエストでしたよね。

中山 確かに、そんなコメントを例の交換日記(中山さんと杉原さんのバディによる『BOND』のプロット原案やシナリオの詰めを数年間かけて深めていった 開発資料のこと。キャラクター描写における問題提起を細かく分析したエクセル資料などもあるようです)で、やりとりさせていただいたのを思い出しました(笑)。その要望をお送りした意図としては、ゲームをプレイされたお客様の間で「6バディのうちお気に入りのバディはどれか?」を議論のタネとしてほしかったという狙いがありましたね。ミッション3で、ようやく「ルークとアーロン」が少し慣れてきたかなと感じつつあったところに、モクマという新しいキャラクターが登場します。「モクマとアーロン」に関しては潜入などの共同作業を経ずとも、初っ端からいい感じの相性であるとわかりすく見せることで、「ルークとアーロンも良いけど、モクマとアーロンも面白いな…」と、読み手側でバディの興味が目移りするような材料を仕込みたかったんですよ。モクマにはその役を担ってもらった形になりますね。

杉原 はい。そのリクエストを受けて、モクマとアーロンは「意外と気が合う」という描き方をしましたね。モクマとアーロンのからっとした友人関係は、開発メンバーの間でも人気があった印象です。

なぜかドキドキ照れちゃう!? アーロンの優しい表情

中山 ところでせっかくアーロンについて話しているので印象をお聞きしてみたい件がありまして…「優しいアーロン」の表情の立ち絵グラフィックがでてくると、なぜかとても恥ずかしい…というか照れるような気持ちになってくるんですよ。何となくむずむずしてくるのですが、私だけでしょうか(笑)。すごく見つめられているような気になってくる、強力な立ち絵だなとずっと思っていました。ゲーム後半のアーロンの変化を表すグラフィックでもありますね。

杉原 はい。それだけに使いどころは絞っていまして、ミッション16〜17や、アラナたちとのエピソードでのみ使用した覚えがあります。あの表情の発注コンセプトは、「野性の獣や、情け容赦のない戦士が、家族にのみ見せる顔」というものでした。鋭い瞳の奥にひそむ温かい光を前面に出したいと。ルークにあの表情を見せるようになるのは、親愛のあらわれです。でも正直、私もあのグラフィックを目の前にすると、中山さん同様になぜか照れてしまっていましたね。あっ、綺麗な目をしていたんだ…みたいな(笑)。イレギュラーなインパクトを活かし、ミッション16ではコメディめいたシーンでも使用しています。ぜひ探してみていただけると嬉しいです。

普段はあまり見せない優しい表情で情深い眼差しを向けるアーロンに思わずドキドキ…!?

トゲトゲの下に隠されたアーロンの秘密Q&A

Q.アーロンの得意なスポーツは?

杉原 なんでも得意だと思いますが、ゲーム内でジャーマン・スープレックスを決めたところを見ると、やはりプロレスでしょうか。高跳びや幅跳びでも記録を出しそうです。いっぽう球技はルールに違反しまくるので、得意とは言いづらいかもしれません。

Q.アーロンはなぜ飛行機が怖いのでしょうか?

杉原 昔、父親とともに長距離の飛行機に乗った際、緊張と酔いで、何度も戻してしまったためです。吐き気がおさまらないのでトイレから出られず、その間に、乱気流で機体がガクンと降下したという…。本人は「ここで死ぬんだ」と本気で思った、という設定です。

Q.ハスマリーの子どもたちによるアーロンの評判はどうなんでしょうか?

杉原 「荒っぽいけど気のいい、大好きな兄ちゃん」という認識です。アーロンにあこがれた子供が、すぐに言動をまねるので、アラナは手を焼いています。でも、口ではたしなめつつ笑ってしまっているので、10年後には「アーロンみたいな不良」がたくさん育っているかもしれません。

Q.アーロンの小さい頃の可愛らしいエピソードを教えてください。

杉原 電池が切れたかのように、ものを食べながら寝てしまうことがたまにあって、そんな時は、手から滑り落ちるフォークや食べ物を、友人である快活な少年がすかさずキャッチしていました。

Q.アーロンの実の家族について教えてください。

杉原 父親のダンは脳科学の権威で、物静かで思慮深い人でした。母親はサバサバしたバックパッカーで、ダンと恋に落ち、子どもができてしばらく一緒に暮らしていましたが、旅に生きる人生を諦められず、ダンと何度も話し合ったうえで、離婚しています。ダンが研究関係の旧友に乞われ、ハスマリーに渡ったのは、その後のことです。母親のその後の所在は不明ですが、どこかの空の下で、自由に生きているという設定です。

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