バディミッション BOND 開発者インタビュー #3 熱狂は留まらない

またな、相棒! …熱狂はまだまだ留まらない!!

シキにイアン、エドワードの設定

—— 敵対サイドのお話もぜひ!

中山 エドワードもイアンも、キャラクターデザインとしては海外の俳優さんからインスピレーションを得ています。あと、作中に使用しているエドワードの立ち絵のバリエーションは、BONDメンバーに比べると少ないのですが、これは演出上、あえて少なくしているんですよ。エドワードは序盤でも終盤でも変わらない笑顔を見せて、表情の変化が少ないほうが、むしろ彼の中の「壊れている部分」を強調できると開発中に手ごたえを感じたからですね。アドベンチャーゲームにおいて、立ち絵のバリエーションは多いほうが満足できるわけではないんだなと、エドワードの演出制作を通じて学びました!

—— イアンはどうでしたか?

中山 イアンは、本当はメインキャラクターになるはずだったんですよ。企画当初はルークとアーロン、モクマとチェズレイ、イアンとシキ、という6人をメインキャラクターとして構想していたのですが、制作の物量を見積もったところものすごい作業量になってしまい、現BONDメンバー4名を描き切るだけでもギリギリでしたので、途中でイアンとシキは脇役とする方向のシナリオに、泣く泣く変えたんでしたね。

杉原 そうですね。当初はイアンとシキもメインバディのうちの一組でした。特にイアンは、設定も今とはかなり違っていまして、「SWAM」という架空の警察部隊の一員で、リカルド国家警察に命令されてルークを追ってきたというキャラクターでした。中山さんが仰ったとおり、6人に焦点を当てるとなると、メインストーリーの物量もさることながらバディの分岐が15通りになるので、ちょっと現実的じゃないなという話になり、イアンとシキには、BOND4人の在り方に大きな影響を与える敵役として活躍してもらうことにしました。

中山 そんな経緯があったため、制作スタッフにとってイアンは大切にしたいキャラクターの1人でした。たとえ主要メンバーでなくなっても、彼には味のある役を与えたかった。ルーク達に作中で初めて立ちはだかる強敵のポジションとして、そしてフウガとは異なる意味での悲しき人生を背負った奥行きを感じられる敵キャラクターとして、存在感を出したかったですね。真エンドで彼が救われたり、彼の中に善の光を見出したいと思わせる描写を我々開発が良しとしたのは、もともと彼を主要メンバーとして考えていたから、その名残かもしれません。

—— イアンには、またちょっと違ったヒーローの風格を感じますね。

中山 イアンがいることで、本作の少年漫画らしさがぐっと増したのではないかとも思っています。村田先生の作画が抜群に映えるデザインのキャラクターでもありますね。そういえば開発中に笑い話としてスタッフと話していたんですが、そもそも闇カジノに到達して、4つのデスゲームに勝利してなおイアンに挑む一般人はルーク達くらいのものなんですよ。だから、イアンは闇カジノの最奥部で待てども待てども「挑戦者が来ない…愚にもつかん…」とひとり寂しく過ごしている状態だったりして…と話したことがありました(笑)。そんな時は、シキと雑談でもしていたんでしょうか。どうなんでしょう、杉原さん?

杉原 そうですね(笑)。イアンもシキも社交的なタイプではないので、積極的に話しに行きはしなかったかもしれませんが、シキは集中すると寝食がおろそかになるので、イアンとしてもそこは気にしていたかと思います。軍人時代からの癖で、部下をよく見ているんですね。基本的には、闇カジノ従業員に指示して食べ物などを運ばせていましたが、効果がない時は、自ら赴くこともあったかと思います。アナザーエンド後は、互いへの干渉が少しずつ増え、だんだんと良いバディになっていくイメージですね。すみません、暇つぶしの話題からはちょっとずれちゃいましたが…(笑)。

個別のキャラクターについて訊く!

色彩と才能豊かな悲しき天才ハッカー BONDに+された大切なつながり シキ

杉原 気弱で一生懸命な青年です。自分に自信がなく、基本的に縮こまっているという、BONDの4人にはない特徴を持たせています。プレイしていただくとわかるのですが、孤独に端を発した悲しい願いを抱いているキャラクターです。お客様の方々がその悲哀を知った時、シキを受け入れて、前途を応援したくなるような描き方ができればと思っていました。シキという名前には3つ意味を持たせていまして、「式」「色」「四季」です。最初の「式」は「式神」から来ています。人によって使役される鬼神のイメージですね。後ろのふたつ「色」と「四季」は、色彩や美しい変化にあふれたシキの未来を表しています。服装のコンセプトは「和風の私服」です。ゲーム中ではあまり腰下を見る機会がないのですが、ルークと同じく、ズボンにスニーカーを履いています。「和風」部分については、陰陽師を意識していただきました。

身長 178cm 
誕生日 6月4日
血液型 AB型
趣味:プログラミング、機械いじり
好きな食べ物:そうめん、栄養補助食品

村田雄介先生によるシキのラフ絵。横顔の表情も儚げ

威厳は大木の如く、情熱は火の如く、 義理人情あふれるカジノ街の武将 イアン

杉原 元軍人のカジノ王です。『BOND』に出てくる敵の中でも、ひときわ風格と威厳がある強敵として設定しました。悪党なりに一本筋が通ったキャラクターにしたいと思い、規律に厳しくも、義に厚い人物として描いています。口調も含め、戦国武将をイメージしていました。作中でイアン自身も言及するのですが、やっていることは紛れもない非道であり、過去がどうであっても、言い訳は立ちません。だからこそ、かつて自分が軍の上官を手にかけたように、闇に染まった自分を断罪する者を待っている、というキャラクターです。実は動物に好かれやすいタイプで、昔は公園などに行くと猫や鳥が寄ってきていました。どっしり構えているところが、大木を思わせるのかもしれませんね。

仮面の下に無表情を隠し謀る 哀しき幻影のヒーロー エドワード

杉原 気さくで勇敢、市民のヒーローたろうとする、警官の鑑です。ルークにとっては、夢とぬくもりを与えてくれた、大好きな父親です。アラナと同じく、お客様の方々にとって序盤の行動動機になるため、エドワードとの思い出をできるかぎり印象的に描くことが課題でした。ここからはネタバレになりますが、実際は感情が薄く、空虚なキャラクターです。他人の感情に対して、理解はしても共感しません。自分のことを、他の人々とは違う生物のように認識しています。ただ、そこに優劣をつけてはおらず、フラットな見方をしています。挑発に見える言動があってもそれは実験であり、感情は伴っていません。常に泰然としているがゆえの、底知れない怖さを感じていただけるよう努めました。

『BOND』開発メンバーから 皆さんへのメッセージ

—— 最後にお一人ずつ、『BOND』について読者の皆さんにメッセージや、今の気持ちなどをお聞かせいただければと思います。

中山 まずは買ってくださった方、体験版をプレイしてくださった方、ほんの少しでも商品に興味を持ってくださった方に、お礼を申し上げたいです。ありがとうございます! 実は、制作途中で企画がうまく進まなかったりしたこともがあって、決して順風満帆ではありませんでした。この企画を言い出さないほうがよかったかなと迷ったことも何度もありました。だからSNSなどでお客様が楽しんでくださっているところを拝見すると励みになりますし、発売から数か月たった今も本当にたくさんのお客様が支えてくださっている事実に心から感謝しています。そして、“バディミッション”という絆や相棒をテーマに制作を進める中で、数年間ずっと相棒として一緒に走ってきたコーエーテクモゲームス(以下KT)の皆さんにも、「相棒でいてくれてありがとう」と言いたいです! KTさんと任天堂で意見が合わない時もありましたが、そのたびに思いをぶつけ合い磨き合いながら、完成までたどり着きました。その過程で散ったたくさんの火花が、「I SHI KU RE」の一節のように、いつも「僕らの道を照らしてくれる」。そんな相棒関係での制作だったと、振り返っています。

杉原 泣きそうですね…。

襟川 こちらこそ、本当にありがとうございました。非常に嬉しいお言葉で、これで締めていただいてもいいんじゃないかと思うくらいですが…次は杉原さんかな?

杉原 はい。このゲームを遊んでくださっているお客様方、そしてこれから遊んでくださるお客様方、本当にありがとうございます。そしてこの場をお借りして、私共を相棒に選んでくださった、中山さんはじめ任天堂の皆様に感謝申し上げます。企画が立ち上がってからおよそ5年、中山さんが仰ったとおり、何度も困難にぶつかりましたが、そのたびに壁をブチ破って進むだけの力が、このタイトルにはあったと感じています。力の源はもちろん人で、本作に携わったメンバーひとりひとりが、「このゲームをお客様に届けたい」という願いのもと、知恵を出し合っていくつもの壁に挑みました。そこに、村田先生や声優の皆様をはじめとした、さまざまな方々の大きすぎる力が加わり、今は、一番分厚い壁に派手な風穴があいて、その先の光の中でお客様たちにお会いできたような、そういう気持ちでいます。僭越ながら、このゲームが、今度は皆様の力になること、そして絆のきっかけになることを願っています。

宮内 いい話が続いちゃって話しづらい(笑)。まず、発売から日が経ってからインタビューをしていただくという経験が、実は私には無いんです。おそらくニンテンドードリームさんの読者様、そして編集の方々が、かなり熱烈にこのタイトルを応援してくださったおかげで実現した企画なんだろうなと、深く感謝しています。インタビューを受けるにあたり、制作期間を振り返って、いろいろ思い出していました。私はゲームディレクターをやるようになって長いんですが、監督者としては、これまでずーっと1人だったんですね。でもこのタイトルでは、任天堂の中山さんと一緒にディレクションをさせていただいた。本作のエンドロールで、ディレクターの名前は黒バックのちょうどいい場所にポーンと出るんですよ。そこに、中山さんと2人で並んでいるのを見た時に、この作品は孤独から私を救ってくれたんだなと思いました。

襟川 皆さんの感動的なコメントの後に締めるのって、プレッシャーが大きいですね(笑)。まずは『BOND』を応援してくださっている皆さま、いつもありがとうございます。お客様が、「このキャラクターが好き!このバディが最高!」ですとか、「あまりにも楽しい!」 といった、たくさんのメッセージをTwitterなどで発信してくださっていまして、そういった熱い想いを寄せていただけるタイトルに仕上がったことを、とても嬉しく、また誇りに思っています。5年間スタッフ一同心血を注いで作り上げたタイトルですので、私たちにもそれぞれ『BOND』には深い思い入れがあります。その分、お客様のメッセージを拝見すると、元気が湧いてくると同時にもっとこう出来たな!と悔しさを感じる部分もあり、それが次の作品への闘志ですとか活力につながります。本当にありがとうございます。皆さんに更に『BOND』の世界をお楽しみいただけるよう、今後グッズやドラマCDをはじめ、幅広く展開していけたらと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。

—— 『BOND』のキャラクターは魅力的なキャラクターがいっぱいですし、ドラマCDが出るということで、また彼らの新たな面が見られるのではないかと楽しみです!

襟川 ありがとうございます。ご期待に応えられるよう頑張りますね! そしてなにより、このような大きなプロジェクトにチャレンジする機会をくださった、任天堂さんにも、深く感謝致します。ぜひとも、またご一緒できる機会がありますようにと、心から願っています。

中山 私もです! でしたら、このインタビュー、最後の締めはやっぱり「あの」掛け声で終わりたくないですか?

杉原 あっ、「あれ」ですね…! そうですね、ぜひ。では、みなさまご一緒に…

襟川宮内杉原中山 せーの、「「「「またな、相棒!」」」」


「ニンテンドードリーム」21年9月号掲載>

contents
#1 京と紅玉
#2 誌面上のランデブー
#3 熱狂は留まらない
#4 サイドエピソード
[インタビューTOP]

バディミッション BOND
■任天堂
■2021年1月29日発売
■アドベンチャー
■7,128円(税込)
■CERO15歳以上
任天堂×コーエーテクモゲームスのタッグで制作された完全新作アドベンチャー。ヒーローを目指す警察官、世界的な大怪盗、元忍者のショーマン、魔性の詐欺師……訳ありの4人がチームを組み、暗躍する謎の組織を追っていく。
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