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やればやるほど ディスクシステム インタビュー(2004年9月6日号、9月21号より)

カブトムシ色の体育会系デザイナー

── 話は脱線するんですけど、清武さんはすごくいい色に焼けてますよね。

清武 ふふふっ(笑)。

── もともとラグビーをやってたんだとか。

清武 いまは社内のクラブでサッカーをやってます(インタビュー当時)。で、監督は大澤がやってるんですよ。

── そういった清武さんのスポーツ魂は、ゲームのなかにも活かされてるわけですよね。

清武 そうですね。GBソフトの『テニス』(1989年)の開発に関わったこともあるんですけど、スポーツをやってると許せないボールの角度とか、タイミングというのがありましたし。ドロップショットにしても、「こうやって打つんだ」というのがありますしね。そのようなことって、スポーツ感覚を身体に持っていないと、普通は考えないと思うんですよね。だから、『メトロイド』のサムスのポーズのつけかたや、走り方を表現するにしても、個人的にはスポーツ感覚がないと描きにくいと思ってるんです。

坂本 サムスのスクリューアタックが象徴的だと思うんですね。「とにかく体当たりすればええやん」って(笑)。

大澤 ワリオも体当たりするし(笑)。

坂本 とにかく、清武は身体で問題を解決しようとするわけやな(笑)。

大澤 体育会系デザイナーですから(笑)。任天堂広しと言えども、清武が体育会系デザイナーの最右翼とちゃうかな。

── そもそも、こんなに色黒のデザイナーさんにお会いするのって、滅多にないことなんですよね(笑)。

坂本 (真剣に)もっと黒くなりますよ。

大澤 これでも、最近は色が抜けてるんですよ。都会生活に慣れてしまったのか(笑)。

坂本 バリバリの頃は、カブトムシみたいやからね。

一同 (爆笑)

坂本 夏まっさかりの頃はテカってるんやもん(笑)。

大澤 そうそう。土ダンゴをテカらしたみたいになってて(笑)。それに、陽がガーッとあたると影絵みたいに見えるんですよ。服を着た影絵が歩いてるみたいな(笑)。髪の毛と顔の境目がわからへん。

── あははは(笑)。清武さん、そこまで言われてますけど、反論は?

清武 みんなが言う通りです(笑)。

大澤 僕、大学の後輩なんです。

清武 ゼミも同じなんです。

大澤 同じ先生に習って。僕らが京都精華大学ラインで、坂本と山本が大阪芸大ラインなんですね。

『ファミ探』の原題は『屁の村』だった?

── さて、さきほどの『ファミ探』の話で、「『消えた後継者』で「やり残したことがあったので『うしろに立つ少女』をつくった」という話でしたが、具体的にどんなことをやり残したと感じたのですか?

坂本 『ファミ探』はもともと、主人公が記憶喪失であるとかの、大ざっぱな設定があったんですけど、もともとストーリーのようなものはあまりなかったんです。それをしっかり物語にしてつくりあげたのが『消えた後継者』なんですけど、どうしてもネタが現実離れしていたりとか、華がなかったりしたんです。「おばあさんが死にました」「おじさんが死にました」「おばさんが死にました」とか(笑)。当時は僕、ホラーものがすごく好きで、「ハロウィン」というホラーコミック誌が創刊されたり、学校ネタの怪談なんかもすごく好きだったんですよ。それで華のある、学園もののホラーがやりたいと。そうすればセーラー服のお姉さんも出せますし(笑)。

── (笑)

坂本 もともと『消えた後継者』では横溝正史テイストだったものを、『うしろに立つ少女』では少女マンガ系の方向にもっていこうという感じだったんですね。

── なるほど。坂本さんはそれまで、サスペンス小説は横溝正史を2冊しか読んだことがなかったとか。

坂本 いえいえ、1冊半です(笑)。「悪魔の手鞠唄」を読んでる途中に鼻血が出てしまって…。本の上に鼻血がボタッと落ちて、それで意気消沈して読むのをやめたんです。まだ高校生の頃だったので、若かったんですね(笑)。

── あははは(笑)。

大澤 推理小説は僕も好きだったんで、いっしょにシナリオの作業をやってたんですけど、坂本はよくあそこまで書けるなあと関心しましたね。推理小説に関してはほとんど知らなかったわけですし、たぶん「なんとかかんとか温泉殺人事件」とかの2時間ドラマだけはしっかり見てるんちゃうかなあって(笑)。

坂本 そんな番組、あんまり見てなかったんやけどなあ(笑)。

山本 坂本が書いた手書きのシナリオ、僕はいまでも持ってるんですよ。

── ええっ、本当ですか? 紹介させてください!

坂本 カメラは引きで撮ってもらうんやったらええですよ。えげつない文字なんで(笑)。

山本 当時はワープロがなかったので、すべて坂本の手書きで書かれているんですよ。

坂本 原題は『屍の村』だったんです。その企画書を上司に見せたら、「ふ〜ん、今度のゲームは『屁の村』かあ」って。それが忘れられへん(笑)。

一同 (爆笑)

坂本 まあ、それほど字がヘタやったんですけどね(笑)。

大澤 でも、『屁の村』で納得する方もする方やねえ(笑)。だいたい、『ファミコン探偵倶楽部』というタイトルになったのも、もともとは「『ファミコン少年探偵団』というタイトルでソフトをつくれ」という、上からの指示があったからなんですよ。タイトルだけですけど(笑)。それに、どんなものをつくるのか、何も言ってくれなかったんです。

── シナリオを担当した坂本さんや大澤さんに、たとえば江戸川乱歩が好きだから、こんなゲームをつくりたかったということはなかったんですね。

坂本 それはありませんでしたね。

大澤 僕は横溝正史が好きだったんです。高校時代に金田一耕助の「犬神家の一族」がちょうど映画化されて、シリーズも読むようになってたんです。だから、パッケージのイラストも、「横溝正史の東宝の映画っぽくしてほしい」と、頼んで描いてもらったんですけど、いまひとつクオリティが高くなくって。だから当時、「もうちょっと注文通りに描いてくれないかなあ」って思ってましたね。

── 社内の方が描いたんですか?

大澤 いいえ、外部にお願いしました。

坂本 僕はこういう絵がいややってね。

大澤 (『うしろに立つ少女』のパッケージを指しながら)それでこういう絵になったんですよ。

── パッケージ自体も、横溝正史風から少女マンガ風に変わってますよね。

大澤 『うしろに立つ少女』の下書きは僕が描いたんですよ。レイアウトも僕がして。それを絵の上手な人が仕上げてくれたんですね。

横溝正史風(左)と少女マンガ風(右)

『本格推理サスペンスミステリー 〜骨肉浪花節調 岸壁の母的ロマン〜』
これが幻の?『屍の村』のシナリオだ!

インタビューのなかで、坂本さんが語っているように、『屍の村』とは『ファミコン探偵倶楽部』の原題でした。それにしても、「〜岸壁の母的ロマン」というサブタイトルがいいですね。あたたかみのある手書き文字から、当時の雰囲気を感じ取ってくださいね。

坂本さんが手書きで書いた『消えた後継者』のシナリオ。主人公の名前は「ケン太」だったみたい
任天堂ロゴもしっかり入ってます
こちらは『うしろに立つ少女』のシナリオ。『後継者』の1年後に出たソフトなのに、なんとワープロのシナリオに進化していた!

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