『ファイアーエムブレム エンゲージ』インタビュー:キーワードから紐解く“エムブレム”の新しい遊び
キャラクターを育成し、バトルマップを進めていく『ファイアーエムブレム』(以下『FE』)シリーズの最新作、『FE エンゲージ』の発売から2か月。
インタビューを実施し、開発を手掛けた任天堂、インテリジェントシステムズ(以下、イズ)の皆さんにお話をうかがいました。遊びこんでいる人はもちろん、まだプレイしていない人も興味を深めていってください。(ニンテンドードリーム23年5月号掲載)
間口を広げ、まだ遊んだことのない人に届ける『ファイアーエムブレム』を
『FEエンゲージ』/エンゲージとは
仲間を増やしながら物語を進めるなかで、「紋章士」が宿る指輪を付け替えて自軍キャラクターに特殊な能力をつけることができます。好きなキャラクターと紋章士を組み合わせ、幅広い戦術を楽しめます。紋章士と一時的に合体する「エンゲージ」は、能力強化のほか、特別な武器や技を使うことができるようになります。
それでは濃密なインタビューの旅へ!
※文中、『ファイアーエムブレム』を『FE』、シリーズの各タイトルをサブタイトルのみに省略している場合があります
▼登壇者の皆さん
王道のゲームサイクルで英雄譚を描いたものに
―― 『風花雪月』(※1)に続く完全新作で、Nintendo Switchではシリーズ2作目となりますね。
横田 そうですね。近い時期に2作の開発が動いていたので、『風花雪月』とは違うことをやろうというのがテーマのひとつでした。
※1:『ファイアーエムブレム 風花雪月』=Nintendo Switch/2019年7月26日発売。こちらはインテリジェントシステムズの草木原俊行さんディレクションのもと、コーエーテクモゲームスとともに制作。士官学校が舞台の前半と、三つ巴の戦争が勃発する後半の2部構成でドラマが展開する
樋口 前作の『風花雪月』は、大人の戦記物を作りたいという意識で企画しました。対して『エンゲージ』は、間口を広げ、まだ『FE』に触れたことがない方にも手にとってもらいたい、という思いで制作しています。『覚醒』(※2)から10年以上が経っているので、間口の広い『FE』をまた改めて作っていきたい、という思いもありました。
※2:『ファイアーエムブレム 覚醒』=ニンテンドー3DS/2012年4月19日発売。シリーズの集大成を打ち出しつつ、初心者にも遊びやすいゲーム性や、一新されたキャラクターデザインによって間口を広げた
横田 そういう思いは、今作のゲームサイクルにも現れているんです。『風花雪月』は大修道院での生活というパートがあって、メインのストーリーの進み方も特殊だったんですけど、『エンゲージ』はバトルマップとストーリーを交互に遊んでいくという『ファイアーエムブレム』おなじみの作りになっています。
―― 『FE』の定番スタイルですね。
中西 ゲームの流れとしても、『if』(※3)ではどちらの国につくかという2つのバージョンがあったり、『風花雪月』ではどの学級を選ぶかという点からスタートしたりと、いろいろな試みをしてきたんですが、今回は一本道を進む王道タイプにしました。
―― ルート分岐はしないと、はじめから決めていたと。
※3:『ファイアーエムブレムif』=ニンテンドー3DS/2015年6月25日発売。「白夜王国」「暗夜王国」の2種類のパッケージが同時に発売され、異なるシナリオとマップが楽しめた
鄭 そういったことが決まったうえで、ディレクターを拝命しました。私は『覚醒』以降の『FE』にはあまり携わっていなかったんです。でも、『覚醒』は傍から見ても、シリーズに革命を起こしたタイトルとして興味深く思っていて、同じように新しい『FE』を作りたい、そういう思いで臨みました。
―― 王道のゲームサイクルに戻しつつ、間口を広げるものにすると。
鄭 シナリオについても、『風花雪月』とはまた違うものをということもあって、主人公の成長物語を基軸にしたストーリー展開がいいんじゃないか、と考えました。『FE』って当然戦記物なんですけど、冒険譚や英雄譚になっているタイトルもたくさんあるんですよね。それこそ第一作『暗黒竜と光の剣』(※4)やゲームボーイアドバンスで出た3作あたりはその印象が強くありますし、どちらにも振れるような器の大きなシリーズだと思っているんです。ストーリーテラーとしては紋章士たちが引っ張ってくれることもあって、リュールを中心に物語が展開する王道のスタイルにしています。
※4:『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』=ファミリーコンピュータ/1990年4月20日発売。アカネイア大陸を舞台に、アリティアの王子マルスの戦いが描かれたシリーズ第1作
横田 リュールにいっぱい話してもらうか、議論しましたね。ここ最近はマイユニット的なキャラが多かったのですが、本作だとなにがふさわしいのだろうと。
中西 マイユニットは、主人公といいつつも物語上のメインキャラクターに寄り添う存在なんですよね。『風花雪月』の主人公のベレト、ベレスもそれと近い存在で、どちらかといえばいっしょに歩む3人の級長たちのほうが、物語の中で成長していく様子が描かれていました。今作では、リュール自身が歴代の紋章士に並び立つ存在として成長していく様子を表現したくて、しゃべらせることにし、物語の中心人物としてドラマを描いてもらいました。