【インタビュー】『FREDERICA(フレデリカ)』開発者に訊きました〜アクションのこだわりから好物ピザの理由まで
繰り返し遊ぶことを快適に。丁寧なアクションづくり
―― 本作はハクスラ系アクションですが、ジャンル的にはチームとして経験があったのでしょうか、それともチャレンジだったのでしょうか。
塩田:アクションゲームの開発経験が豊富なスタッフは多いのですが、開発チームとしては初めてのジャンルなので、まさにチャレンジでした。このジャンルには、これまでに数多くの名作が存在しているので、とにかくみんなでいろいろなタイトルをプレイして学びながら開発しました。
―― ハクスラ系アクションがお好きな方はいらしたんですか?
塩田:たくさんいます。個々のプレイ経験があったのは大きかったと思います。
―― アクションの手触りとして、どのような点を大事に考えていったのでしょうか。
塩田:私がお願いしていたのは、とにかく1回のプレイが長くならないことです。アクションゲームはどうしても集中できる時間が限られると思いますので、気持ち良さを感じているうちに拠点に戻れる長さにしたいと思っていました。
モリボー:シナリオ面でも「アクションゲームが好きな人はシナリオに何を求めているのか」を考えました。とにかくアクションの気持ち良さを邪魔しないようにしよう、と。シナリオ班4人で日々話し合っていました。
ちょっと進むと会話シーンが入って…ということが繰り返し起こるとストレスになるだろうと考え、なるべく画面を止めないようにアクションの楽しさに寄り添えるシナリオ展開を目指しました。
―― 言葉が奪われた世界でどのようにストーリーを表現していったのかも気になるので、のちほどじっくりうかがいたいです!
モリボー:はい。あとはアクションゲームが得意じゃない人でも、ワンボタンで楽しめるということもこだわっています。
塩田:ゲームとして簡単にする、ということではなくて、幅を持たせたいと思っていました。上手い人はきちんとやりごたえを感じて、そうでない人でも敵を倒す気持ちよさが味わえるというのは絶対やりましょうと話していましたね。
―― スキルをばんばん繰り出せるような点もそうですね。手触り感のよさというか。アクション苦手代表みたいな私でも言えるくらいの(笑)。
塩田:アクションゲームが得意ではない人でも、キャラクターや装備を強くすれば力押しでなんとかなりますからね。
―― キャラクター7人の交代制というのも特色ですよね。もともとは、武器種が7種あったらいいよねというところからですか?
塩田:そうですね。もちろんひとりの主人公が武器を持ち替えても良いわけですが、武器によって戦い方が変わるのでそこにキャラクターの個性が出せるんじゃないかと考えました。
同じピッチフォークで戦うのでも、今回のファーマーのかわいらしい動きと、別のキャラクターの動きは違うだろうと。
―― 好みのキャラクターで選ぶこともできますね。ところでファーマーがいる点も『ルーンファクトリー』らしさなんですかね?
塩田:そうですね。ファーマーがいないとカブが作れませんから(笑)。
体験版をやり込み!そして製品版へ
―― そんな初めての挑戦とのことでしたが、序盤をまるっと遊べて製品版に引き継げる体験版の反響がとてもよかったですよね。
塩田:ありがとうございます。アクションの手触りを体験してもらいたかったことと、ゲームの流れを知ってほしかったことから体験版を配信したのですが、配信開始直後からとても大きな反響をいただきました。
―― 配信前はかなりドキドキだったのではないでしょうか。
モリボー:それはもう。果たして受け入れてもらえるだろうかとか、短すぎないかとか…。
塩田:蓋を開けてみたら、われわれの想定を超えて楽しんでいただくことができました。多くの方が何度も周回して7人全員を育ててくれたり、中にはボスを倒すまでのタイムアタックをされる方までいらしたりとか。本当に嬉しかったです。
―― こだわっていた手触りが伝わった、と。
塩田:そうだと良いですね。じつは、具体的な数字は言えませんが、体験版をプレイして製品版の購入を決めたという方が圧倒的に多いんです。
―― 製品版を発売してからの反響はいかがでしょう。
塩田:「時間が溶ける」という嬉しい苦情をたくさんいただきました(笑)。本当にありがとうございます。
―― (笑)。ハクスラ系アクションゲームがいろいろある中で、『FREDERICA(フレデリカ)』のどういったところが受け入れられたと感じていますか?
塩田:このジャンルには、暗いダンジョンを潜っていくダークな世界設定のものが多いと思いますが、『FREDERICA(フレデリカ)』はキャラクターやモンスターが可愛らしかったりして、殺伐とした空気がないので間口が広いのかなと。拠点に帰ったら明るい姫が待っていて、ダンジョンと拠点のコントラストなども良かったのかもしれません。
―― たしかに。アクションのクオリティを担保しつつ、そこから『ルーンファクトリー』シリーズに入ってほしいという点がちゃんとつながった感じがしますね。
塩田:『FREDERICA(フレデリカ)』をきっかけに『ルーンファクトリー』シリーズに興味をもってもらえたら嬉しいです。
―― なんでこんなにカブが推されているんだろう、とか。
塩田・モリボー :(笑)。
モリボー:『ルーンファクトリー』シリーズを知らない人からすると謎のカブ推しですよね(笑)。気になった方は『ルーンファクトリー』シリーズのほうを遊んでみていただければと(笑)。
果たして気付くか!?『ルーンファクトリー』ネタ“忍ばせ”
―― ゲーム性として『ルーンファクトリー』ファンに向けて意識した点はありますか?
塩田:あくまで“世界観の共有”に留めようと考えました。『ルーンファクトリー』シリーズファンのお客様の多くは続編を求めていると思いますので、今回はアクションゲーム好きの方にシリーズを知ってもらうきっかけになるようなものを作りたいと思いました。
ですので、『ルーンファクトリー』ファンのお客様に誤解のないように丁寧に伝えていくことを心がけていました。
―― シナリオ面では、『ルーンファクトリー』の土台が何かしらあったのでしょうか? クリア後の要素のアレはもしかしてとか、キャラクターにも『ルーンファクトリー』ガチ勢しか気がつかないような匂わせを感じるのですが。
塩田:ちょっとした“忍ばせ”はしています。キャラクター設定にも意図的な仕込みをしているんですけど、まだ気づいている人は少ないかもしれません。
モリボー:セリフにもそれとなく入れているんですけどね…。個人的には気づくと嬉しい要素だと思うので、気づいた方はいろいろな想像をふくらませてほしいです。
―― 『ルーンファクトリー』シリーズの前川さんに監修してもらっているという話でしたが、具体的にはどういう点でしょうか。
塩田:世界設定として逸脱してしまわないように全体的なところは見てもらいました。あとはデザインも細かく見てもらいました。
モリボー:マモノ図鑑もそうですね。モコモコからはこんな素材が手に入りますよとか。
―― モコモコや『牧場物語』のウシさんはすんなり入ったのでしょうか?
塩田:『ルーンファクトリー』シリーズと世界を共有しているので、モコモコを登場させることは自然な流れでしたが、ウシはちょっと議論がありました。
『ルーンファクトリー』シリーズにはバッファモーというモンスターがいるわけですが、『FREDERICA(フレデリカ)』には「姫の力によってマモノは大穴から出られない」という設定があるので、拠点にいるのはおかしいだろうとなりまして。じつは開発初期には、本作オリジナルのウシがいたんです。でも、その存在理由があまりなくて…。
モリボー:マーベラスのタイトルだけでウシが3種類もいることになりますしね。
塩田:けっきょく一番しっくりきたのが『牧場物語』のウシさんだったんです。そもそも『ルーンファクトリー』は『牧場物語』から派生したシリーズですし、それならウシさんがいても不思議ではないだろうと。
モリボー:私は『牧場物語』も好きなので、ウシさんを出すならニワトリも出してほしいと言ったら一緒に登場することになって嬉しかったです。「なでたい」と言い出すスタッフもいて、それを聞いたプランナーがなでられるようにしてくれました。
塩田:ウシさんたちが、ダンジョンから戻ってきたときの癒しになりました。