【インタビュー】『FREDERICA(フレデリカ)』開発者に訊きました〜アクションのこだわりから好物ピザの理由まで
言葉を奪ったのは、シナリオ班の提案だった
―― 「言葉を失った世界」「大穴に飛び込む」という設定はどのように生み出されたのでしょうか。
塩田:シナリオより先に、舞台はダンジョンで拠点と行き来することを決めていました。ダンジョンにした理由は、限られた空間の方がアクションに集中できると考えたためです。
―― ダンジョンを塔のようなものではなく、「大穴」にしたのはなぜでしょうか?
塩田:これは個人的な感覚ですが、地下に広がっている方が、どこまで続いているかわからない感じがして良かったんです。
―― われわれ任天堂メディア的には初報のころに…大穴に飛び込むシーンにとあるタイトルのデジャブ感がちょっとありまして(笑)。もちろん開発時期的に偶然なのは理解しているので、嬉しい偶然といいますか。
モリボー:たしかに穴から降りていくのはいろいろなゲームでちらちら見かけますよね。みんな考えるタイミングがかぶっているのか、それとも流行っているのかな!? なんて。
塩田:世の中的に何かあったのかもしれませんね(笑)。われわれの場合は、最初に舞台を決めてからシナリオを作りました。
モリボー:はい。先ほどお話しした通り「アクションの気持ちよさを邪魔しないシナリオとは」といった点を突き詰めて考えていきました。
キャラクターが複数いて会話をすると、それだけでセリフが長くなってしまい遊びを拘束してしまいます。そこで、思い切って「しゃべる人を1人にしてはどうか」というところがスタートでした。
―― すごい思い切りですね!?
モリボー:その時にはキャラクターデザインは決まっていて、せっかく魅力的なキャラクターデザインなのに「言葉を奪っちゃダメですか?」と提案して。絶対に反対されると思いましたが、そのほうが遊び的にも良いと思うんです、と説得しました。
塩田:最初に聞いたときは驚きました。アクションやキャラクターの成長を突き詰めていく中で、そこに必要ないものは極力カットしていこうという考え方はありましたが、まさか言葉をカットするとは思っていませんでした(笑)。
キャラクター同士の会話は、アクションを阻害するとまでは言わないですし、決して悪いものではありませんが、「言葉」をテーマにするならむしろ言葉を奪われている設定は良いのではないかとなりました。ディレクターが手ごたえを感じていたことも大きかったです。
―― シナリオ班自ら、言葉のない世界を築くことにしたんですね。そこからストーリーを膨らませていった、と。
モリボー:そうですね。最初は姫のセリフも読み聞かせ風にしようと考えていました。けれど1人しかしゃべらないのであればキャラクター性があったほうがいいと思い、今のようなキャラクターになっていきました。
言葉が奪われた世界ではあるけど、姫の祈りの言葉だけは届く、という設定もその頃に作られました。
―― しかし言葉を奪ったうえでお話を作るというのは、大変ではなかったのでしょうか。
モリボー:シナリオ班としては自分たちで決めたことなので受け入れられますが、「しゃべらない」という点でデザイナーさんなどに大変な思いをさせてしまったと思います。
塩田:7人いるのでキャラクター性や個性を感じさせたい、と先ほどお話ししましたが、しゃべらないキャラクターにどうキャラクター性を持たせるのか、期待と不安が入り混じっていました。
モリボー:言葉がないぶん、ちょっとした動きや表情で個性を感じられるようにデザイナーさんが作り込んでくれて。ブラッシュアップするうちにそれがよく伝わってきたので、結果的に正解だったなと。
塩田:私のお気に入りはファーマーなんですが、とても可愛らしく見えるように作られていて。言葉がなくてもキャラクターって作れるんだなとあらためて思いました。
モリボー:言葉はありませんが、声を奪われているわけではありませんので、掛け声だけでキャラクターを演じられるような実力派のキャストさんにお願いしました。
塩田:キャストの方の力は大きかったです。
―― なるほど。キャスト陣を見ると、「こんな豪華な声優さんを起用して、しゃべらせないなんて」というツッコミが内外からたくさん入ったのではないかと…(笑)。
塩田:ツッコミはありましたが、しゃべらないからこそ演技や表現力が重要でした。
モリボー:キャストの皆さんには、キャラクターの生い立ちから考え方まで、細かにお伝えして演じていただきました。
(※以下クリア後のネタバレ注意↓)
―― クリア後に彼らがしゃべったときに違和感がないというのも、さすがだなと思いました。
モリボー:細かい設定までご理解いただいたうえで演じていただいているので、しゃべりはじめても違和感がないんだと思います。あらためてキャストの皆さんの力に驚かされました。
(↑ここまで)
モリボー:他にも、拠点でのセリフやアイテム説明の一部などに、当時の王国の様子について感じ取れるようなものを仕込んでいます。
―― ストーリーはそこかしこにちりばめられている、と。
モリボー:マモノ図鑑などもそのひとつです。SNSで感想をポストしてくれる方もいて嬉しかったです。「フレーバーであってフレーバーじゃない」みたいな声もいただきました(笑)。
―― マモノ図鑑を読むとゾワっとしますね…。あれの真相はどこかで明かされているのでしょうか。
モリボー:想像して楽しんでいただければと思っています。王国に何があったんだろう、ということを考えるきっかけにしてほしいです。
世界設定を歌詞にのせた、「神サイ」の手掛ける主題歌
―― 主題歌に「神はサイコロを振らない」さんを起用したのは?
塩田:繊細で美しいメロディラインと骨太なバンドサウンド、そして何より「言葉」を大切にされているバンドなので、ぜひ『FREDERICA(フレデリカ)』の世界を表現いただけたらと思い、われわれからオファーさせていただきました。
ボーカルの柳田さんとは、ゲームの物語や世界設定についていろいろとお話しました。
モリボー:私は直接お伝えする場に参加できなかったので、自分の作ったお話が歌になるってどういうことなんだろうとドキドキしていたんですが、物語のテーマを見事に歌詞に落とし込んでいただいていて感動しました。今もその時のことを思い出すと涙ぐんでしまいます。
塩田:楽曲を聴いた方はお気づきかと思いますが、本作の世界だけではなく7人の主人公を連想させる歌詞も盛り込んでくれました。