『逆転裁判6』山﨑ディレクターと振り返る第3話「逆転の儀式」(2016年10月号より)
『逆転裁判6』発売後、ニンテンドードリームで行われた連載を再掲載。山﨑ディレクターに『逆転6』を実際にプレイしていただきながら、細かいところまで解説してもらうというディープな内容となっています。今回は最終回として第3話「逆転の儀式」に迫ります。ぜひ、ゲームをもう一度遊びながら、一緒に楽しんでみてください。
第1話「逆転の異邦人」編はこちら
第2話「逆転マジックショー」編はこちら
・ネタバレを含んでいます。
【今回の事件】第3話「逆転の儀式」
舞台はクライン王国。真宵と再会した成歩堂だったが、真宵の最後の修行となる「水清めの儀」の最中に、儀式をとりしきる祭司が殺されてしまう事件が起きる。一般人の入ることのできない現場にいたのは真宵のみ。彼女は祭司を殺した犯人として逮捕されてしまうのだった。
タイトルとオープニングアニメ
—— 話名はすぐに決まったんですか?
山﨑 いや「逆転のトリサマン」とか、かなりのアイデアを出しました。第3話はいろいろな要素があるので、どこをピックアップするのがいいか悩んだんです。たしか、仮タイトルが「儀式」で、結局最初に戻ったんですよ。
—— 「逆転の」と付けるルールはわかるんですが、「の」が付いたり付かなかったりする理由はあるんですか?
山﨑 基本的には語感です。でも全話を通して、すべてに「の」が付いていたりすると、バランス的にちょっと「取ろうか」とかはあります(笑)。
—— さて、はじまりました。前号でおっしゃっていましたが、やはりこの回のオープニングアニメも、パッと見たときに『逆転』に見えないぐらいのインパクトを持たせるという意図なんでしょうか?
山﨑 そうですね。とくにアクションシーンやアニメ映えするものを重視しています。
—— かなり深刻なサスペンスですよね。
山﨑 さらに鳥姫様はすさまじい動きをしますから、どこのアクションゲームだよと(笑)。
—— 鳥姫様は舞空術的に突っ込んできますが。
山﨑 歴戦の戦士だからできるんです(笑)。きっとクライン流バリツ的なものを習っていたんでしょう。
—— クライン流なんたら武術を。
山﨑 そうそう。革命派をこれだけ簡単にやっつけるわけですから、きっと武術なんでしょうね。
成歩堂はジーイン寺院に滞在
山﨑 成歩堂はクライン王国でどこに滞在しているのか。日本でいう事務所にあたる場所をどこにするのかというのは、チーム内で話し合いました。で、近くのホテルに泊まるなど、いろいろと案がでたんです。
—— クラインのホテルってどんな感じなんですかね?
山﨑 自然豊かな民宿みたいな感じじゃないですか(笑)。結局、象徴的なわかりやすさをとって寺院に泊めてもらっていることにしたんです。きっといろいろな人を泊められるように開かれているんでしょうね。
—— 寺院って一般人も泊まれるんですか?
山﨑 そうですね。でも、今回の成歩堂は、儀式で重要な役目を担う真宵のお客さんということで来ているので、関係者だから泊まれるという意味合いが大きいと思います。
—— しかし、真宵の電話で焦って駆けつけて、2週間も会えない……。
山﨑 だから2週間、観光してたんじゃないですか?(笑)
—— でも2週間って、日本に帰ってみぬきの本公演を観てまた帰ってくるぐらいの余裕がありますよ(笑)。
山﨑 (爆笑)。たしかに! でも、王泥喜のおかげでみぬきが大丈夫だとわかってホッとして、ゆっくりしていたんですよ。あとほら、たまたま2週間になっただけで、真宵の修行がいつ終わるかがわからなかったんでしょう。
祈りの広場で真宵との再会
—— 祈りの広場で真宵との再会ムービーが流れます。
山﨑 真宵が頭巾を被っているのは、これまでと違う印象を見せたかったからなんです。で、じつはゲーム中ではこのアニメシーンしか頭巾を被っている真宵は出てこないんですけど、最初は3Dモデルもつくったんですよ。
—— 当初はアニメ以外でも頭巾のアクションを入れようとしたと?
山﨑 ええ。でも、初登場時だけですけどね。3Dモデルとアニメの両バージョンで見比べて、アニメでやることになったんで3Dモデルのほうはなくしました。
—— アニメで頭巾を取るとき、最後に真宵の髪の毛がぴょこっと動きますね。
山﨑 じつはあのマゲの動き、最初はもっとすごかったんです。もう意志を持っているかのように動いていたので、アニメ制作の方たちに少し抑えてもらいました(笑)。あと真宵の手甲や装束は、『逆転3』の葉桜院のときの装束イメージです。修行をしているときは、こういう格好をしてるんでしょうね。
—— ムービーが終わると、真宵がテキストベースで話す最初のシーンになるわけですが、このへんのセリフは開発のどのくらいの時期に書いたものなんですか?
山﨑 真宵を書き始めた一番最初です。どのキャラも一緒なんですけど、登場シーンで方向性が決まるので一番大事なんですよね。
—— 真宵の話し方などはどう考えていきましたか? 例えば真宵は久しぶりにメンバーに会ったりするわけですよね。
山﨑 成歩堂たちとの距離感みたいなことですか?
—— そうです。成歩堂に関しては電話で連絡を取り合っていた描写が入りますけど、ほかの人は違いますよね。
山﨑 まぁ真宵はグッといくタイプなので、へんに人見知りとか気遣いという部分を描かなくても大丈夫かなと思いました。とはいえ、じつは『123』の頃の真宵って、人との距離感によってわりと口調が変わるところがあったんですよね。近しい人にはグイグイいくけど、近しくない人には丁寧語をしゃべったりして。だから、そういう意味では少し考えたんですけど、成歩堂からも少しは聞いているだろうし、本当の初対面という人はいないんで大丈夫かなって。それに王泥喜しかり、まわりに年下が多くなっているので、あんまり畏まったところから入らないで近い距離から始められるんじゃないかと。そこも大人になった部分なのかなとは思います。
—— では、2Dから3Dにするにあたり、彼女の動きで大変だったことはありますか?
山﨑 2Dのころのイメージを変えないのはどれも大変だったのですが、強いていえばこのポーズですね。これ元の絵だとけっこう2D的な嘘をついているんです。実際にやるとすごいポーズなんですよ(笑)。
山﨑 しかも元の2Dだと一瞬で絵が切り替わっていくわけですが、3Dだと間を繋ぐ動きを入れるわけで。昔の印象を残しながら、不自然じゃないように動かすために制作スタッフは大変だったと思います。
事件発生。真宵の逮捕
—— 成歩堂はぎっくり腰になってしまいます。ちなみに、これなんで腰設定にしたんですか?
山﨑 成歩堂もそこそこ歳なんで、そういう描写があってもいいかなって。このあと、高い所に登るときにもそんな表現が入ってます。
—— でも事件が発生するので、ここで成歩堂をフェードアウトさせなきゃいけなかったんですよね?
山﨑 それももちろんあります。
—— で、真宵ちゃん、また逮捕されてしまいました。これは最初から決めていたんですか?
山﨑 はい。そこはもう決めてました。やっぱり真宵を助ける物語が盛り上がるだろうなと。それに、今回の物語はレイファの立ち位置も重要ですから、第3話はレイファを立たせつつ、真宵も立たせつつという、両方をやらなくちゃいけなかったので、そのためのある種役割分担というところもあります。
—— クラインの捜査も茜が担当することになります。
山﨑 第2話の事件を解決して、こっちに来ました。観光とかもせず、ナユタにめちゃくちゃ働かされていると思いますよ。だからプリプリしてるんだと思います。
—— しかしこれだけ聖域が高いところにあると、たしかに真宵が疑われるのもしかたないんですよね。
山﨑 なかなか特殊な状況での事件ですからね。
—— 最初からこういった内容で考えていたんですか?
山﨑 大体はそんな感じです。儀式みたいのがあって、行われている聖域で事件が起こる。そこはもう普通の人は入れないので密室である、みたいなアイデアでした。
—— 初期からブレてないですね。
山﨑 ただ本当の初期のときは、その聖域のある場所が今とは違っていたんです。当初は大きい始祖様をかたどった石造りの像の頭の上みたいな設定でした。で、事件のあった夜に、その巨像が動いた! みたいなアイデアだったんです。
—— ナナシーノは出てこなかったんですか?
山﨑 いました(笑)。たしか、その像を「動いた!」って言い出す目撃者でした。巨像が動くってなんだよ、っていう事件でしたね(笑)。紆余曲折あってうまくいかずボツになりましたけど。どんな事件もそうなんですが、一番最初に事件を考えるときはインパクトがあるキャッチーさを重要視していきます。で、最終的には鳥姫様とか脱獄になっていきました。あと、第3話というのも大きいんです。第3話って今までトノサマンだったり、サーカスだったり、けっこうビックリする話が多かった。そういう意味でも、思わずツッコミたくなるような話がいいなぁというところから始まった部分はあります。
—— そういえば、成歩堂はこの時点ではナユタを知らないんですよね?
山﨑 ええ。話には聞いてるぐらいの感じです。
—— あ、「ポルクンカー」が出ました! アッピラッケー(心を開く)には意味がありましたが、ポルクンカーには意味はなかったんでしたっけ?
山﨑 ええ、語感の響きだけです(笑)。適当といったらあれですけど、本当に思いつきで、悩んだりもしてないんです。
—— ちなみに「ポルクン者」ってなんて読むんですか?
山﨑 ポルクンしゃです。
—— 少し後のシーンですが、茜がナユタのことを初めて「ふわふわ検事」と呼びますよね。
山﨑 なんか呼び名が欲しかったんです。彼女はもともと、ジャラジャラとかヒラヒラとか言ってますから。そしたら、たまたまナユタの衣装もフワフワしてるし、これだ! って。ちょっと謎めいた性格にも合っていますよね。本当はジャラジャラ検事も出したかったんですけど、今回は入れる隙がなかったのが残念でした。
聖域での調査開始
—— 聖域が3Dで演出されるシーンが挿入されます。
山﨑 背景スタッフが頑張ってくれました。ちなみに、この聖域の背景にあるクライン文字も読めますので。
—— 落石注意でしたっけ。
山﨑 そうです(笑)。
—— もうネット上では全部解読されてましたね(笑)。
山﨑 そうなんですよね。
—— 全体的に真面目なことが書かれていることが多いですよね。
山﨑 解読されるだろうなって思ってたんで(笑)。変なことを書いてないかチェックしたぐらいです。
—— とんでもない高さの階段を上がってきた成歩堂が聖域でレイファに会います。しかし、レイファは寒くないんですかね?
山﨑 あんな短いスカートでね(笑)。で、今回の話はレイファと成歩堂が一緒に調査をするというのがかなり重要なことでした。
—— 初めてプレイしたとき、レイファが早くもここで味方になるのかなって思ったんです。でも、まさか全話をかけて少しずつ、あんなふうに展開させていくとは。今思えばここは入り口だったんですね。
山﨑 はい。その加減はシナリオメンバーとも相談して、かなり注意深くつくりました。物語のこの時点では、成歩堂にどこまで心を開いているのかと。
—— 2人の距離の詰め方に関して、時間のかけ方が絶妙だったと思います。
山﨑 ありがとうございます。それがある意味、テーマである革命をするという流れでもありました。根本はあくまで裁判のゲームなので、ひとつひとつの事件を描くというのが主ですから、革命の進行度合いを直接的に描くことができないんですよ。だからこそ、出てくるキャラクターたちの感情や考え方が変わっていくところを丁寧に描いていったんです。成歩堂とレイファが共に調査をするというのは、レイファの心を動かすためにも、法廷革命的にもとても重要な要素だったんです。
—— しかし、第3話は第1話に比べると、だいぶクライン王国の内情にも迫っていきますよね。
山﨑 それにも理由があるんです。というのも、第3話はクラインじゃないと絶対できない事件にしたかったんです。つまり宗教的な信仰がある場だからこそ成立する事件にしたかった。第1話はあくまで入り口なので、そこまで深く踏み込むことができなかったんですよ。
—— クラインじゃないと絶対できない事件というのは宗教だけじゃなくて、日本とは違う国民性という部分も大きいようにも思うんです。
山﨑 そうなんですよ。この革命派狩りの鳥姫というのも、「バットマン」みたいに街を個人的に守っている自警団的なヒーローなんです。それってなかなか日本では成立しにくい話なんですよね。国の仕組み的なところなので、海外だからこそ使えるという前提があったんです。
—— ところで、成歩堂とレイファの掛け合いもおもしろいですよね。
山﨑 レイファはポンコツっ子ですからね(笑)。第1話のときはそのポンコツぶりを出しすぎないように気を付けたんですけど、遊んだ方にはバレていたようですね。第1話最後の捨て台詞とか、子供っぽくしたので(笑)。
—— わかります。この後に出てくる大船の話とかも。まさか法廷で使ってくるとは。
山﨑 うん。なんかもうレイファはかわいいですよね。
—— ええ。だって勉強してるってことでしょう、そのあと。
山﨑 覚えたことを使いたくてしょうがない(笑)。まだ子供なんでね。
—— ここでドゥルクのカットが入ります。名前の由来ぐらいは教えていただけますか?
山﨑 “竜”という意味のチベット語“ドゥク”から来ています。そしてその龍は旗のマークにもなっていますよね。そうそう、ドゥルクの龍に対して、インガには亀のモチーフが入っているんです。腕輪のデザインとかボタンとかに。
—— それって玄武とかの四聖獣的な?
山﨑 そうですね。
ナナシーノと留置所での真宵
—— ナナシーノ・ゴンビェ(仮)さんの登場です。
山﨑 ただただ怪しい(笑)。そして、このトカゲですよ。
—— なんでトカゲにしたんですか?
山﨑 サバイバル感を出すため(笑)。あと無限に何か出てくる動きは『逆転』のお家芸です。無限メガネから始まったこの演出をここでやるしかない! って。
—— さて、留置所です。これ日本と比べると鉄格子の間隔が広すぎて簡単に抜けられそうですが!
山﨑 (笑)。じつは、最初はひとつひとつの間はもっと狭かったんです。でもキャラの顔とかぶっちゃったので広げました(笑)。留置所のデザイン的には、文明があまり発展しきってない場所をイメージしています。日本と構成は一緒なんですけど、昔ながらの留置所をそのまま使っているみたいな感じで、ベルで呼び出したりとかね。
—— そして真宵がここでいろいろと語るわけですが、結局昔と同じことを悩んでいるんですよね。
山﨑 そうなんです。ここはまさに『逆転2』の第2話のイメージですね。昔の作品のイメージは無意識に入っている部分もありますけど、こういったわざと取り入れてるところもあります。
—— さらに、レイファには霊媒をできることを内緒にしてほしいと。
山﨑 うん。
—— まさか、修行をしている子が最強だとは(笑)って話ですよね。
山﨑 そう(笑)。たいしたことはないと思っていたヤツがじつはすごい使い手だったみたいな展開ってあるじゃないですか。マジか!っていう、その瞬間のカタルシスがすごく好きで、それを狙って入れたところもあります。
—— で、成歩堂がカッコいい感じで励ますと、真宵もしんみりした態度からコロッと変わります。
山﨑 「ゲンジツを見ようよナルホドくん」ですよ(笑)。ここでシリーズ恒例の脚立と梯子のネタを入れました。今回は2人一緒に行動をしないんで、調べるメッセージが出せなくて。どこに入れたらいいかなあって悩んで、ここに入れてみました。
—— 入れなきゃいけないと。
山﨑 期待されているのはわかってましたから!
—— DLCのほうでもちゃんと入ってましたね。
山﨑 あっちは今まで通り、王道の調べるメッセージに入れてみました。
サーラの証言と調査
—— 祭司の家に戻りました。サーラさん、いいキャラですよね。
山﨑 祭司の写真を持って話すネタが出るまでは難産だったんですよ。未亡人なので、悲しんでいるわけですから、はっちゃけづらくて。
山﨑 そうしたら、夫のことを愛しているという延長線上におもしろいものが出てきたんでよかったです。第3話の裏テーマは夫婦愛ですから、愛ゆえの行動っていう。この写真もちゃんと祭司の顔と肩の位置を合わせてるんです。
—— これ声色も真似てるんですよね?
山﨑 そうです。なりきっています。しかし、未亡人っていう設定なんですけど、未亡人感をどう出すかは大変でした。顔に黒いベールをかけて隠しているんですけど、じつはそれって西洋の記号なんです。だからアジアっぽくアレンジしないといけなくて、クライン王国のなかでの未亡人感というのを、アジア洋折衷でデザインすることに苦労していました。
—— しかし祭司様の家はネタ満載ですよね。
山﨑 はい。例えば手前の剣山は祭司様専用座布団です。ようするに、その上に座って修行を常にしているわけですよ。ご飯食べているときも修行。ほかにも、よく見ると棚に第3話の後半で出てくる、あるものが置いてあったりします。
—— ええええええ。気づかなかった!
山﨑 普通、気づくわけがないですよ(笑)。で、ここでトリサマンとトノサマンも出てきましたね。
山﨑 そうだ、今回トノサマンの絵を作ったときに困ったことがありました。基本的に過去作のものは『逆転1』のときの絵を作り直して使うんですが、デザイナーに質問されたんです。「扇のなかにある丸はどうします?」って。で、確認してみたら、これまでシリーズで何度かこのトノサマンの絵は登場しますが、持っている扇の丸デザインが違っていたんですよ。白だったり赤だったり、殿って書いてあったりと3パターンもあって!(笑)。結局、殿と書いてあるものを選びました。
—— さあ、初“サイコ・ロック”です。成歩堂の探偵パートでは外せない要素ですよね。
山﨑 そうですね、もともとやる前提で考えていました。やっぱり探偵パートの遊びは、王泥喜側は“みぬく”があるんで、同じようにこちらは「サイコ・ロック」を入れておかないといけませんよね。
—— ここで入れた理由は?
山﨑 結局、ここまでに登場しているキャラで使えるキャラがいないんです。
—— そうか。真宵は成歩堂に隠しごとをする必要がないんですね。
山﨑 ええ。第2話の“みぬく”と同じ役割で物語を進展させるためには、隠しごとをしている人に対して有効なシステムなんです。
霊媒ビジョンとナナシーノ尋問
—— 法廷がはじまり、まずは御魂の託宣になります。ここ難しいと評判ですね(笑)。
山﨑 ちょっと難しかったですね。ただ、ここは全話を通して一番攻めた霊媒ビジョンだとは思います。これは霊媒…つまり『逆転6』じゃないと成立しない事件だからこそ可能だったというのが大きいです。第1話の霊媒ビジョンは一番最初に考えたんで、基本的な内容で思いつきやすいものにしました。でも第3話は応用編ですから、霊媒ビジョンの感覚が研ぎ澄まされるという新しい要素も入れてみたんです。ひとつの霊媒ビジョンで複数の真実を見せていくためには必要な要素でした。またレイファの託宣だけが更新されていくのではなくて、もうひと捻り欲しくなったというのもあります。尋問も証言や証拠品が変わるので、同様に霊媒ビジョンも映像も託宣も変わるようにしたら、深みを出すことができました。
—— その託宣を打破しました。次はナナシーノの尋問です。(仮)って自分で言ってるんですよね?
山﨑 これもね、『逆転1』で宇在がやってましたよね。(爆)とか。だからアリなんだなっていうのがあってやってます。テキストでどこまでがアリなのかみたいなルールが一応あって、それに則してですが。
—— ではナナシーノの制作で苦労したところは?
山﨑 もちろん記憶喪失なのに証言をさせる流れをつくることでした(笑)。
—— そこは成歩堂もちゃんとツッコミを入れてます。
山﨑 常にやっていることですけど、ユーザーと成歩堂の気持ちがシンクロするようなセリフを入れています。
—— その記憶喪失のナナシーノに証言させる展開というのは、事件ありきの考えだったんですか? それともそういう変なキャラを出したかったからなんですか?
山﨑 事件ありきです。あとは容疑者が少ない話なので登場人物を増やしたかったんですよ。そういう意味では、矢張ポジションのかき回し系キャラになりました。
—— ではこのへんまでにして、最後に第3話全体のお話を聞かせていただこうかなと思います。
山﨑 第3話はやらなきゃいけないことが多い話なんですよね。今回の大きなクライン王国の物語のなかで、最終話のための準備をするのはここが最後なわけですから。なので、いろんな伏線も含めてうまく事件に混ぜながらやっていくのが大変でした。
—— もしかして最終話までできた段階で、その調整を第3話でしていたということなんですか?
山﨑 じつはそうですね。順番で言うと最後にできた話になります。第2話とかは切り離して考えられる話だったんで固まりやすかった。さらに第1話は最初につくります。そうなると、最終話ができたことによって、第3話を直して調整する、みたいな。だから難産だった話ではあります。
最後にメッセージ
—— 第3話の真骨頂はここからなんですけどねー。
山﨑 ああ〜、霊媒関係とかね〜。
—— でもここから先はみんなひっくるめてゲームをプレイして楽しんでくださいということで。きっとプレイが終わった読者さんたちは絶対うなずいていると思います。
山﨑 そう思ってもらえたらうれしいです。
—— さて、連載も最終回になりますので、最後にメッセージをいただけますか?
山﨑 はい。今回『123』の霊媒も使いながら、『456』の王泥喜の話をちゃんと描きました。そこには個人的な思いとして、『逆転』シリーズの未来のために、『逆転6』をひとつの区切りになるタイトルにしたかったというところがあるんです。今年2016年は15周年ですが、この先も『逆転』のおもしろい未来は続いていくはずです。だからこそ、次へつなげるために、このタイミングで「集大成」となるタイトルが必要だと思いました。この連載で自分も忘れているような細かいところまで振り返って話をしてきて、改めて全方位的にいろいろ入れてるな! と思ったぐらいですから(笑)。
—— 忘れていたこともありました?
山﨑 ありました。だから『逆転裁判』のひとつの総決算みたいな感じで遊んでいただきつつ、次は未来のことを想像して楽しんでもらえたらと思っています。開発ブログにも書いたんですけど、『逆転』の未来の可能性は無限な状態になりました。今後どんな『逆転』が作られるかは、ユーザーさんがどんなものを遊びたいか次第で決まると思っています。ぜひ「こういう『逆転』が遊びたい」とか、そういう声を届けてもらえるとうれしいです!
第1話「逆転の異邦人」編はこちら
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