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ラフスケッチも公開!? 『星のカービィ ディスカバリー』新大陸への軌跡インタビュー

磨き上げる世界作り「新しいカービィの冒険を濃密に創造する背景」

ワールド1 ネイチェル草原

熊崎 開発の初期は、文明がまだところどころに置いてある世界観だったんですよね。新しい場所に来たよ! っていうのをどうにかして表現しようと考えていました。右のラフスケッチを見ると、飛行機が落ちていますね。この時点で「ほおばりヘンケイ」のことを考えていました。はじめは自然な岩山だと思って登っていくと、その裏を見たら、そこで実はそれがビルだったと新発見をする展開です。「あ、ここってそういう文明のあった場所だったんだ!」という驚きを表現したかったのが、最初の草原ステージなんですよ。

—— 製品版では、最初は海岸から始まり、森を通って見上げたらビルが見えて。

熊崎 その驚きを表現するために、導入部では草原や自然的な場所をしばらく冒険していく流れにしました。浜辺に流れ着き、森を抜け、ビルが見えた時、ゲーム本編のタイトルロゴが出るような感じにです。考えていた光景にできました。

—— そういう変化があったんですね。

熊崎 ただ、やっぱり人間がいなくなっちゃった悲しい世界なの? と思われないように、すごい年月が経ち、自然と文明が優しく包まれて融合されたという、美しいロケーションを意識して作られたものになります。

神山 新世界の文明と自然が融合した世界観も、最初のスタートは遊びから来てます。改めて「カービィ」についてしっかり見つめ直して、引っ張っても、ねじってもへっちゃらな、ゴムマリのような不思議な生き物であるカービィにしかできないことを考えました。カービィの特技である「すいこみ」と、この「ゴムマリのような不思議な生き物」を組み合わせることで「ほおばりヘンケイ」のアイデアが生まれました。そのときに何をほおばったら一番身近に感じて、それがすごいと思えるかというのを検討しました。

—— どういう風に考えられたのでしょうか?

神山 要は、魔法のスティックみたいなものをすいこむよりも、現実にある車や自販機など、身近な物をほおばった方がすごいと実感できる、と考えました。カービィが車を口の中にほおばって、パツパツのカバーのようになっている方が、すごさを想像しやすくて、遊びとして適切なんじゃないかと思ったんです。

遠藤 草原にビルが建っているっていうのを、それ自体を遊びにしないといけないなぁと思いました。ワールド1-1でいきなり広々とした草原があって、草原を走るんだけどビルが立ち並んでいて。それらをひとつずつ辿りながら、ゴールを目指すみたいなステージを作っていきました。ビルを登って「ほおばりヘンケイ」をして、コピー能力を活かして冒険して、また「ほおばりヘンケイ」をしてビルドトータロスを倒す…みたいな、『ディスカバリー』の基本となる遊びを1-1の草原ステージに全部詰め込んでます。

二宮 とにかく何回も調整しました。もう最初に作った原型がほとんど残っていないぐらい(笑)。1ステージが大きくなり過ぎた後、いいところだけを残して削っていくみたいな、贅沢な作りになっています。ゲーム全体のベンチマークって訳じゃないですが、その後のお手本になるようなステージになるように、何度も作り直して完成させていったワールドです。

イメージスケッチ1

イメージスケッチ2

ワールド2 エバーブルグ海岸

熊崎 今回は思い切って水中アクションをカットすることに決めました。遊びやすい3D作品を目指すときに水中アクションは操作が難しいんです。ですから、今回は水面を泳ぐ遊びに絞りました。水中に潜りたいという欲求に駆られるかなぁと心配したのですが、今回は泳ぎながらすいこめたり、コピー能力が水面で使えたりと、陸地と水面を行き来するだけでもかなりの遊びになったんです。陸地と水面をシームレスに、ストレスなく冒険できたことで、潜れなくても十分に水のステージらしさを堪能できるようになったんじゃないかと思います。

神山 地面を走るときはJoy-Conの左スティックだけで操作できますよね? これは「面」の動きだからです。でも、水中ではカービィが浮かぶことになるので「面」の動きに加えて「高さ」も操作する必要が出てきます。こうなると操作が格段に難しくなります。加えて水の中だと、制動性が悪く、ピタッと止まれなかったりして、だれもが遊べる3Dアクションを目標にしている本作では足かせになるだろうと判断して、思い切って無しにしました。最初に私がこの提案をした時には、けっこう心配されましたが、水面の遊びをしっかり取り入れることで、水のステージの遊びは十分できたと思います。

遠藤 遊びやすい3Dゲームに仕上げつつ、水面と地上という使い分けで遊びの違いが出せたので、よかったかなと思います。

ワールド3 ワンダリア跡地

熊崎 ワンダリアは見どころの多い場所です。遊園地を冒険するというのは、アクションゲームの夢ですね(笑)。皆さんも知ってるような大型遊園地をイメージしてるんですが、それと同時に、地方にあるようなコンパクトな遊園地の要素も入っています。

—— 例えばどんなものですか?

熊崎 デザイナーの個々が持っている遊園地像を固めていった感じです。幼少の頃にあるイメージを感じさせながら、世界中の遊園地の要素をモチーフに折衷したり、いろいろ混ぜたりして考えています。創設者の名前はワンダリアで、ワンダリアさんが作ったからワンダリア遊園地です。マスコットは男の子の犬がワンダックス女の子の犬がワンダリィと言います。デザインはファーマン(力さん。アートディレクター)で、割と早くから決まっていました。

神山 遊園地のモチーフはデザイナーの発案です。今までの「星のカービィ」シリーズでは、現実世界を匂わせているものはあまり取り入れてなかったのですが、本作は現実世界のモチーフなので、ぜひやりたいという意見が出て遊園地を取り入れました。

熊崎 遊園地って、ノスタルジックな部分もあって、子供の頃の感動した思い出、迷子の思い出、夜のちょっとした怖さもあってポジティブとネガティブが入り混じるような不思議さがありますよね。遊んでいただくといろいろ感じる場面が多いと思うんですけど、パレードの情緒にも誘われて…。その夢のような思い出を意味するステージ名「ワンダリアパレードの夢」と名付けたステージもあります。

二宮 遊園地で遊ぶって、どういう遊びをさせるのかが課題になってたと思うんですけど、「ほおばりヘンケイ」がここでかなり活きてきたと思いました。ジェットコースターも従来のコピー能力ではできない遊びですし、ゴーカートも「くるまほおばり」がパチッとハマったと思います。お化け屋敷では、開発の途中に追加で入った「でんきゅうほおばり」もかなりよかったです。

ワールド4 ホワイティホルンズ

熊崎 ホワイティホルンズは最初のステージから、遠くまで来た冒険のクライマックス感を出したかったので、一旦ここで終わりかな? と匂わせるムードを演出するために選ばれたモチーフです。ゲームも後半に入るので、音楽もこだわって作っていきましたね。最初のステージ「北のホワイトストリート」で流れる曲は、サウンド担当の小笠原(雄太さん。リードサウンド)が作りました。前作『スターアライズ』では舞台が宇宙に広がった際、最初に訪れる惑星「フォルアース」で流れる「フォルアースに吹く風」を作ってもらったのですが、ここでゲームのイメージを一気に変えたことがあって。あそこが秋のステージだったので、今回は冬…というわけではないですけど(笑)。「フォルアースに吹く風」のような雰囲気をもう1回作って定番化したいねって話を小笠原にして、その上であれを超えるフレーズ感のある曲をお願いしました。

星のカービィ スターアライズ

星のカービィ ディスカバリー

熊崎 ロケーションは『星のカービィ』でやりたかったモチーフとして、遊園地の次にやりたかったのが「凍った街」でした。欧州のような人が住んでいそうな町を探索するっていうのは、レベルデザイン泣かせですね(笑)。欧州方面の資料などを見ながら、デザイナーたちが一生懸命作りました。リアリティもあって、しかもそこに街があった感じはするんですけど、どう見てもあのアスレチックステージになっているんですよね(笑)。感動的なロケーションでありながら、面白いアクションステージが実現できました。

遠藤 雪のステージで何をするかって、やっぱり雪合戦ですよね(笑)。これをやったら面白いんじゃないかって思って、それでコロリが雪玉を転がしてくるという訳です(笑)。ポピーブラザーズjr.が爆弾を投げてくるのも、ガボンが骨を投げてくるのも、全部雪合戦をイメージしてます(笑)。

二宮 雪のステージは、滑ってダメージを受けたりとか、ちょっとしたストレスのある要素が多かったので、風で押されて早く進めて気持ちいいとか、滑って気持ちよくコインスターを取れたりとか、意識的に気持ちいい瞬間を用意していただくのをお願いしましたね。

ワールド5 オリジネシア荒野大地

熊崎 オリジネシア荒野大地は、我々地球の人類の歴史に置き換えて紐解くと、化石などが砂漠から発見されたりするじゃないですか? オリジネシアは、ビースト軍団であるアニマルたちが発祥した最初の地と考えられています。はじめに大きな大陸があって、その北端のホワイティホルンズ以降にたどり着く、彼方にある第2世界のイメージでもあります。ホテルやショッピングモールもあるんですけれど、より第2世界というイメージを印象づけるために砂に埋もれるなど、最初の大陸とは違った自然との融合表現で考えられています。ワールド名は、動物発祥を想像させる、オリジンからイメージしました。砂漠ステージはアクションゲーム的にはお約束ではあるんですけど、今作ではロケーションの見せたい順番もあって後半戦に持ってきています。砂に埋もれたショッピングモールとかは、何だかこれまでのステージより寂しい感じがしますよね?(笑)。草に覆われたものとはまた違った、時の経過を感じさせるところもあり、すごく感情に訴えかけることができました。

—— 時の経過、ですか。

熊崎 私は本作でもっと広さを感じる場所をたくさん作りたかったんです。ただ、二宮さんと話した時もよく言っていましたが、密度の問題やどこに進んだらいいかわからないストレス、自由に歩けるという開放感との兼ね合いについては、慎重に考えないとなと思っていました。自由で嬉しいけど、どこに行けばいいかわからない、広くて爽快だけどあまり敵と出会わなく退屈というのは、常に存在してしまう問題なんですよ。遊ばれた方はわかると思いますが、前半と違った印象になるように敵に囲まれたりピンチとなる場面を作り、結果的にすごく密度があるステージになったと思います。オリジネシアは広さと遊びの密度のチャレンジが成功したマップになったと思います。

遠藤 砂漠は細かいこだわりを積み重ねて、広くしながら迷わないようにするっていうことを実現しました。もともと海に沈んでいた地域だったので、スタート地点から見ると遠くに灯台が見えて、あそこを目指せばいいんだっていう風に作っていたんですよ。ところが開発中に、単なる砂漠のステージではなくて、やっぱり新大陸に来たんだからもっと何が起きるかわからないような雰囲気にしようという話になりました。ある種のおどろおどろしい表現を入れよう、といったイメージです。その結果、砂嵐が吹き荒れて、せっかくランドマークを作ったのに全く見えなくなってしまいまして(笑)。

熊崎 どうしても広範囲に吹く砂嵐で遠くが見えなくなっちゃうという(苦笑)。

遠藤 でも、ステージに仕掛けを密度濃く作って、砂嵐の中でもちゃんと見えるものがあって。敵を倒したらすぐ次の行き先が見えるみたいな、密度が濃い展開を意識して迷わなくしました。カメラもかなりこだわって、細かい調整を入れたステージです。

熊崎 作る順序としては最初に広いマップを作ろうとテーマを決め、最終的なロケーションを仕上げ、砂嵐を作って視界を見えにくくしました。改めて、この広さに対して視界が悪いところを進むという険しい大冒険感が作り出せたと思います。嵐の中でも見えるコインスターやランドマークを見ながら、手がかりを探りつつ広いところを冒険するというテーマとなり、後半ステージらしい難易度の高いステージが実現できたかなと思います。

二宮 砂漠って、どうしても広くて何もない退屈みたいなイメージになりがちなんですけど、しっかり密度濃く作ってもらいました。あとは砂を吹き飛ばしたりとか、毒を水で振り払ったりとか、そういう気持ちいい仕掛けをたくさん入れていただいたので、すごい気持ちいい砂漠ステージになったと思います。

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