『星のカービィ Wii デラックス』Return to Dream インタビュー【前編】
リメイクでマホロアにフォーカスした訳
—— 熊崎さんはマホロアの生みの親です。今回のリメイクでマホロアをどうやって見せていこうとしたのかを聞かせください。
熊崎 ゲーム体験をおもしろくするためにキャラクターがあり、そのために世界観があるというのが私の変わらないスタンスです。ファンの方はどんな世界観なのかとか、物語も気にされる部分があると思いますが、今回『星のカービィ Wii』をデラックスにして、よりおもしろくするためには、マホロアはどんな役割が適任だろうか、ゲーム体験をより良くするためにどんな物語があるべきかを考えました。
追加される物語がないほうがいいんじゃないかという部分まで含めてです。新しい「星のカービィ」のゲーム要素を作っていく上で、これまでのゲーム体験のカラーを少し変えながらも、ゲーム体験をより色濃くすることにとても寄与できるキャラクターだと思いました。
—— マホロアはよくしゃべるキャラクターですし。
熊崎 「星のカービィ」はもともとあまりセリフのあるタイプのゲームではないですし、アクションの体験を通じて楽しんでいただければ、それで役割は果たせると思います。ですが、ゲームにさらに没入感を求めたときに、お客様が「これはどんな物語なのか?」「なぜこのアイテムを集めてるのか?」「なぜアイツを倒しに行かなければいけないのか?」「助けを求めているのは誰?」など、ゲーム体験に合った感情の揺らぎも必要だと考え、本作ではその役割をマホロアに担ってもらいました。
—— 過去作には「メタナイトでゴー!」や「デデデでゴー!」がありましたね。
熊崎 はい。クリア後の冒険の主人公なら、いつも通りデデデ大王やメタナイトでも全然できるとは思います。ですが今回は『星のカービィ Wii』のデラックス版なので、彼の出番が適任じゃないかと思いました。彼はちょっと芸達者で、いろいろなことをさせるのに無理がないキャラクターなので、マホロアに出番が回ってくるのですが、それも新作で提供したいゲーム体験には必要だからというのが大前提です。
中西 原作『星のカービィ Wii』の頃は、マホロアは本作にしか出てこない1キャラクターに過ぎなかったんですよね。当時Wii版のパッケージにはマホロアがいなかったんですが、それもマホロアをアピールするより、4人で遊ぶというゲーム性を重視して見せたかったから外したという経緯がありました。
—— え? そうだったんですか!
中西 はい。ただ今回のSwitch版にはマホロアがちゃんとパッケージにいます。その後、いろんなタイトルに出演して、いろんなところで活躍して人気も上がってきました。本作でも「マホロアランド」に「おたすけマホロア」にと大活躍してくれています。そんな訳で、今回のSwitch版のパッケージにはちゃんとマホロアの姿を入れています。
熊崎 どのキャラクターも初登場時は新米でしかないですからね。現在は人気のメタナイトも、かつては新しく入った新キャラでボスの1体でした。『スーパーデラックス』の「メタナイトの逆襲」でメインキャラになった流れもあるように、ゲーム中に必要とされる出番があればこそ認知度も上がっていくものなので、今回のリメイクではマホロアがキャラクターとしてもはや新米ではなくなり、成長したことを感じてもらえるんじゃないでしょうか。
—— Wii版とSwitch版のパッケージを見比べると、メタナイトの上にマホロアがひょっこりいますね(笑)。
熊崎 今回は「おたすけマホロア」の機能もありますし、「ストーリーモード」の冒険にマホロアがより介入することになったり、クリア後はプレイヤーキャラクターとしても活躍するので、このパッケージビジュアルの中にいるのです。
▼わいわいマホロアランド」やクリア後に遊べる「マホロアエピローグ」といった新要素の多くにマホロアが関わっています
「星のカービィ」シリーズにおける物語の繋がり
—— 本作で新たに「マホロアエピローグ」が追加されました。Wii版とSwitch版の物語は時系列的にどういうことなるのでしょうか?
熊崎 基本的に、シリーズ間に一方向へ進む歴史年表のような時系列はないけれど、緩やかな繋がりはあります。その間には彼らは平和な日常生活を送っているというイメージです。オープニングムービーはその日常生活を描いたもので、ケーキを持ったカービィをデデデ大王が追いかけているんですけど、その前にはいろいろな戦いがあったわけです。デデデ大王がまた悪さをして、カービィに懲らしめられて、ケーキの取り合いになった…みたいな顛末なんだろうなと、想像していただけるような内容にしています。
—— ケーキの奪い合いを見ると、ニンテンドーDS『星のカービィ 参上! ドロッチェ団』(2006年11月2日発売)から続いているようにも見えますね。
熊崎 彼らはお互いにバトルもしますが、基本的に仲はいいんです。キャラクターの関係性で言えば、例えばゲーム中にメタナイトの空中戦艦が必要となり、それが登場するときに、見たこともない謎の戦艦が突然出てくるよりも、メタナイトのかつて所有していた戦艦ハルバードが出てきたほうが舞台によっては自然なときもあると思います。
「ストーリーに時系列は設けない」のですが、お客様に浸透している事実やこれまでのキャラクターたちの関係性を少しずつ活かしながら、それぞれの個性を出していかないと毎回「はじめまして」という感じになってしまいます。必要に応じて、シリーズの事実や関係性を意識しながら物語を作ってます。
—— シリーズが長く続くが故の悩みですね。
熊崎 なので、デデデ大王が敵役を担うときもありますし、カービィをライバル視しているのはずっと変わらないです。これは最近の「カービィ」シリーズでも普遍的な設定です。ちょっと意地悪なこともしますが…それにいつもくっついていくのがバンダナワドルディで、タイトルによってデデデ大王の家来だったり仲間だったりするんですけど、最近は家来というより仲間の一員としてみんなについていっているイメージですね。
—— メタナイトは?
熊崎 デデデ大王同様、目的があればカービィと戦うこともあり得る存在です。今回は読書しているシーンがオープニングで描かれ、カービィたちを見てまた読書に戻り、少し呆れた素振りをしますけど、いつも冷静に彼らの動きを見たり、デデデ大王がまた悪さしないかとか、プププランドの平和を脅かすものがないかを、剣の修行をしながら見ています。彼らの個性を考えた結果、ここに落ち着いたのが『星のカービィ Wii』かなと思います。
—— Wiiの物語とSwitch版の物語の関係性はパラレル扱いに?
熊崎 実は今回のSwitch版の世界は、マホロアのテーマパークが存在する点を考えると、Wii版のパラレルと言えます。ただ、クリア後で明かされる要素の中には、物語として時間の連続性にチャレンジしてる部分があります。特に時空を超える「異空間ロード」というのがあり、時間の経過が1つではないので、どのように変わっているかをお客様が自由に想像することができるんです。
また、今回の「わいわいマホロアランド」はおめんを付けて本編といつでも行き来できる場所なのですが、カービィたちはマホロアランドのあるどこか遠い別世界にワープして移動していると解釈しても問題ないようにしています。
—— ええっ!?
熊崎 もちろん気にされる人にとっての話ですが、そうすることで、ストーリーモード本編ではマホロアは船が壊れてしょんぼりしているんですが、「わいわいマホロアランド」のある世界では支配人として登場しても変じゃないのでは、と考えました。最後まで本作を遊んでいただけると見られる、その辺を示唆する表現もちょっとだけ入れてます。もしかしてこんな設定なのではと想像していただけるような要素を随所にちりばめています。
読者へメッセージ
熊崎 今回の開発を進める中で、11年前にWii版を作った頃の若かった自分自身も垣間見れたような気持ちになったんですが、当時と変わらぬ思いで、少しでも良いゲームにしようと開発に挑みました。そしてWii版の開発時から比べても、新しいことにもっとチャレンジできる可能性を感じました。今回Switchでデラックスになって、『スターアライズ』のときよりもっと4人で遊ぶことが楽しいゲームが作れたと思えました。
この『星のカービィ Wii デラックス』を遊んでいただいて、そしてもしまだであれば、30周年に発売された『ディスカバリー』や『カービィのグルメフェス』なども遊んでいただき、また我々の作る新しい『カービィ』シリーズの今後にもご期待いただければと思います。
渡辺 ただのリメイクではなくて、デラックスな『星のカービィ Wii』を目指して開発しました。これから新しく遊んでくださるお客様はもちろんですけど、過去にWiiで遊んだことのあるお客様にとっても、懐かしいだけでなく、新しいと思ってもらえるような体験をたくさん盛り込みました。手に取って、懐かしさと新しさを両方感じていただけたらいいなと思っています。
谷藤 凄くたくさんの要素が入っています。ストーリーモード、10種類のサブゲーム、マホロアエピローグ。「わいわいマホロアランド」単体でもたくさん遊べるので、パーティゲームとしても定番のゲームになったらうれしいです。本当にたくさんの要素があるので、きっとお買い得です(笑)! ぜひ遊んでくださいね。
二宮 今回はもともとボリュームがたくさんあった『星のカービィ Wii』を、さらにてんこ盛りにしたゲームになっていますので、ぜひ遊んでいただきたいです。あと、これからも『カービィ』シリーズは続いていきます。てんこ盛りの『星のカービィ Wii デラックス』を超えるようなものを、これからも考えていきたいなと思います。
中西 ここまで誰でも遊べるとか、初心者の方でも楽しめるということをお伝えしてきたんですが、本作にはゲームが得意な方でも楽しめるような要素もたくさん入っています。
たとえば、メインモードを難しい難易度でプレイできる「エクストラモード」や、いろいろなコピー能力を使って遊ぶチャレンジステージ、また、本作で追加された「マホロアエピローグ」もとてもやり応えがありますので、Wii版をプレイされた方にもそういったところも楽しんでもらえたらと考えています。新しく追加されたコピー能力「アーマー」や「サンド」にもチャレンジステージがありますので、たっぷり楽しんでください!
開発者へ一問一答
敵キャラの多くはゲーム中に名前が表示されないので、姿はわかっても名前を知らない人は結構多いかも?
ということで、最後に『星のカービィ Wii デラックス』に登場する「敵キャラ」と、「コピー能力」の好みについてうかがいました。
Q.好きな敵キャラクターは?
熊崎 パクトという、カービィを丸呑みにしてしまう敵がいますが、空のステージ用に作られた雲に擬態した「パクラウド」が好きです。『星のカービィ Wii』には場面に合わせたデザインの異なる、通称コンパチキャラがいて本作ならではのユニークさがあります。ボスならHR-D3です! 驚きのタイミングで出会えますのでぜひ戦ってみてください!
渡辺 吸いこもうとすると怒る、スカーフィです。カービィのすいこみってザコ敵に対しては最強なんですが…それに対するアンチテーゼといいますか。駆け引きを要求するザコ敵という、遊びの面でもすごく好きですし、純粋に通常時と怒ったときのギャップも好きです!
谷藤 今回追加された新キャラのサンドランが好きです。現実の公園の砂場とかにいたら癒されそうだなぁって(笑)。あと、よく見るとまつげが生えててかわいいんです!
二宮 私はランディアです! デザインがいいです。あと『星のカービィ Wii デラックス』だけではなく『カービィハンターズ』でも何度も戦ったボスなので愛着があります。ボスとしての登場だけじゃなくて、その後カービィといっしょに戦ったりする部分があったりして、思い入れの強いキャラです。
中西 被った~!(笑)
熊崎 ちなみに、仲間になってもおかしくないように、「ダークドラゴン」とかいかにもな名前じゃなくて「ランディア」という名前にしています。デザインも「友達になれそう」な感じを意識しました。
Q.好きなコピー能力は?
熊崎 (即答で)「ニンジャ」! (『星のカービィ Wii』では)空中で「かえし4れん」が使えるからです!!
渡辺 新コピー能力の「サンド」ですね。単純にステージ攻略にすごく便利なので好き(笑)。
谷藤 「ウォーター」です。Wii版の開発時に初めて作ったコピー能力だったので、今でも愛着がすごいです!
二宮 私は「ハイジャンプ」。ジャンプの気持ちよさと特定の方向にしか攻撃できないクセの強さが良いです!
中西 めちゃくちゃいろんなことができる「アーマー」ですね。火をつけたり、連続攻撃からのキャンセルでビームを撃てて気持ちいい!(笑)
インタビューは後編に続きます。
インタビュー後編では、「わいわいマホロアランド」や「マホロアエピローグ」などのお話をお届けします。
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