『星のカービィ Wii デラックス』Return to Dream インタビュー【後編】
「星のカービィ」シリーズにおける平和の象徴「チョウチョ」
『星のカービィ』における平和の象徴
—— オープニングやエンディングのムービー中に、カービィやデデデ大王の近くをオレンジ色のチョウチョが飛んでいますけど、あのチョウチョは別タイトルにも登場しているものと同一の存在なのでしょうか?
熊崎 ストーリーに関しては、ゲームデザインのほうを優先して考えている部分が大きくあります。ですが、世界観がより奥深いものになったり、シリーズ全体が盛り上がるのであれば、なにかそういう深みになるものはないかと考えているので、いろいろと想像していただく種となるものは蒔いていたりはします。
—— 先を見据えているんですね。
熊崎 前提として『星のカービィ』の世界観はシリーズごとの多様性を考えた結果、時系列として繋がっていないパラレルの要素が多く、あのチョウチョが別のシリーズで同じ役割を持っているかまでは明言しません。ただしアクションだけでなく、より物語も楽しまれたい方に向けて、深く想像ができる部分を残しています。
—— なるほど。
熊崎 メタナイトの持つ戦艦ハルバードがありますけど、『星のカービィ スーパーデラックス』の「メタナイトの逆襲」で一度水没しているんですよね。ただ、その後に出た『星のカービィ 参上!ドロッチェ団』では戦艦ハルバードは過去に水没したという事実を活かし、海底に存在しています。そういう過去の設定や事実を活かすことで、新たな物語が実現する部分もありますので、やんわりと知られている事実を活かしたり、知らない方でも物語の謎を感じながらも、ゲームプレイは問題なく楽しんでいただける範囲で、過去の設定を活かす形もあります。
なのであのオレンジ色のチョウチョも、知らない人だったら平和の象徴として「冒険の前の静けさ」とか「エンディングのムード」を自然に感じてもらえるかと思いますし、さまざまな視点で見てもらえますよね。プレイヤーの皆様の中にはストーリーを気にされない方や、シリーズをよくご存じでない方もいらっしゃって、それぞれ見え方が違い、それぞれの物語を自由に感じていただければと思っています。
—— 考察がいろいろ捗ります(笑)。
熊崎 いろんな『星のカービィ』シリーズを遊ばれてから、また『星のカービィ Wii デラックス』を遊んでいただくと、「もしかして!?」と思っていただけるかもしれません。あと、エンディングでチョウチョがデデデ大王に直接ふれず、お花にとまるようにしたのは…ちょっとした配慮ですね。
「星のカービィ」シリーズにおいて、ゲーム中に見かけるチョウチョ。『星のカービィ Wii』以降では、平和の象徴としてオレンジ色のチョウチョが、オープニングやエンディングなどに登場していました。
▲星のカービィ Wii(オープニング)|星のカービィ トリプルデラックス(オープニング)
▲星のカービィ ロボボプラネット(エンディング)|星のカービィ スターアライズ(オープニング)
▲星のカービィ スターアライズ(星の○○○○)|星のカービィ ディスカバリー(オープニング)
「マホロアエピローグ」は「カービィ」の新たな挑戦
マホロアの活躍を描く「マホロアエピローグ」
熊崎 本作は格闘王への道やエクストラモードもあるので、王道『星のカービィ』としてのボリュームは十分だと思うのですが、既にWii版を遊ばれている方も多くいらっしゃると思いますので、なにか新作のように知らない部分があって、新たに楽しんでもらえるゲームにできないかと考えたのが始まりです。
あと、同じアクションでもメインモードとは違う遊びの体験を入れたいなとも思いました。4人で遊べることが軸のゲームなので、「マホロアエピローグ」もマホロア4人で冒険することができるんですが、このモードでは弱くなってしまったマホロアを成長させて、強くしていきながら冒険できます。「4人でわいわい遊ぶ」に成長が加わったゲームデザインになっており、その辺もこだわって作りました。
渡辺 ゲームシステム寄りの話になるんですけど、『星のカービィ』シリーズであまりやってこなかった、プレイヤーキャラクターを自由に強化する仕組みを今回入れたんです。力を失ったマホロアが立ち上がっていく物語とリンクさせることで、導入の納得感を上げて物語に入り込みやすくすることを狙いました。
—— RPGのように成長していくのが楽しいですね。
渡辺 物語とのリンクも狙いのひとつですが、このゲームシステムにした一番の理由は「誰でも遊べる間口の広いゲーム」にするためです。このモードはクリア後に登場するので、やや歯ごたえのある難易度に調整しているんですけど、アクションゲームが苦手なお客様がプレイした時も、マホロアを十分に強化すれば次のステージに挑めるようなバランスにしています。アクション経験者向けの難易度にしつつ、初心者でも遊びやすいシステムを目指しました。
—— ちなみに、一度も強化をせず最後までクリアすることは可能なんでしょうか?
渡辺 可能です。「しれんのトビラ」というステージは特定の強化が必要ですが、そこはクリアしなくても最後まで遊べるようになっています。私も実際に試してみました。かなり歯ごたえはありますので、腕に自信のある方は挑戦してみてください!
中西 クリア後の要素だからこそのチャレンジみたいなこともできましたね。『星のカービィ ディスカバリー』でカービィのコピー能力を成長させる要素があったのですが、それがお客様に好評だった印象がありました。今作のものはちょっと要素は違いますけど、成長させてアクションが変わっていくという要素は今までのカービィになかったので、普段と違う部分がどう受け入れられるか楽しみです。
—— マホロアの衣装が灰色基調になったのはどうしてでしょうか?
熊崎 ある戦いを経て、力を失った表現のために白くなったんです。エネルギーがなくなったよっていうことを表すためです。シリーズの時系列を明言することはないんですが、『星のカービィ Wii デラックス』ではちょっとだけストーリーの繋がりを色濃くした部分でもあります。
—— エネルギー切れ、ですか。
熊崎 あと、白装束になっているのは、『星のカービィ Wii』の世界では、さまざまな世界を行き来することができる「ディメンションホール」というものがありますので、そういった設定を活かして「もしかしたら!?」って物語を感じていただけるように、マホロアの服の色を白に決めました。答えを示唆する場面があるのですが、「マホロアエピローグ」をクリアして「なるほど、それで白い服だったんだ!」と感じていただければうれしいです(笑)。
—— ちなみに、マルチプレイでマホロアが4人になることが可能ですが、これは魔法かなにかで分身してるみたいな設定なんでしょうか?
熊崎 『星のカービィ スターアライズ』のクリア後のコンテンツ「アナザーディメンションヒーローズ」では、カービィがドリームフレンズそのものに変身してしまうという場面がありました。『スターアライズ』では、1Pの人がドリームフレンズを自分で操作することがなかなかできなかったので、最後はドリームフレンズを全員操作できたらいいんじゃないかという、特別なゲーム体験のために考えて作りました。
「アナザーディメンション」という空間自体が、不思議なことがたくさん起こる場所になっているのです。だけど…マホロアが、カービィ、デデデ大王、メタナイト、バンダナワドルディなどを召喚していっしょに冒険するよりは、マホロア4人になってしまったほうが違和感が少ないと思いますし、特徴も付きますよね。マホロアを4人登場させることで、「マホロアエピローグ」というマホロアしかいない世界観をより色濃くできるんじゃないかなと思いました。
—— 全員マホロアで4人同時に遊べるってなかなかですね(笑)。
熊崎 例えば、『星のカービィ 鏡の大迷宮』の冒頭でダークメタナイトに切られて4人に分離してしまったカービィみたいになにかが起きたわけではなく、ゲームシステム的にパワーを集め成長していくマホロアが4人でわいわい遊べたほうが楽しいんじゃないかということに重きを置きました。その辺は独自性と、遊びの特性のために考えたものと捉えていただければと思います。
—— 4人のマホロアのお話ついでに、マルチカラーのカービィで4人で遊ぶことについても教えてください。
熊崎 マルチカラーのカービィって、誰もが主役であることがポイントかなと思っています。よく似ているゲームシステムとして『スターアライズ』のフレンズヘルパーがありますが、そちらはカービィ以外はCPUが操作することで、冒険を手伝ってもらったり、剣に火を付けてもらったりと、能力を掛け合わせ、助け合う関係性になっています。
—— フレンズヘルパーはカービィの冒険をサポートする立ち位置の印象が強いですね。
熊崎 対してマルチカラーのカービィは、いっしょにプレイする友達みんながカービィになっているので、誰もが主役になって冒険できるということが特徴です。テーマの違いがあるんですよ。ゲームのテーマ性に合わせて、4人4色のカービィになるゲームは、誰もが主役になれます。一方、フレンズヘルパーはヘルパーって名前に現れているようにカービィをサポートしてくれる存在で、ゲームシステムの上でそれぞれのシリーズのニーズを叶えるための存在なのです。
以上、『星のカービィWii デラックス』の開発者インタビューでした。
今後、NDWでは盛りだくさんだった記念年について、「熊崎さんと振り返る、星のカービィ30周年」も掲載予定です。お楽しみに!
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ⓒ HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
ⓒ1993 HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
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