星のカービィ スターアライズ Vol.3 インタビューTheアルティメット 前編(2018年7月号より)
ジャマハローア!(意:こんにちは) 1人でも友達とでも、最大4人でワイワイ遊べるNintendo Switchの『星のカービィ スターアライズ』。ニンテンドードリーム誌上で行われた開発者インタビューを複数回に分けてお届けします。
今回は、熊崎ゼネラルディレクターに加えてファーマンさんと東藤さんも登場。プレイして気になったあれこれと、本編クリア後の要素「The アルティメットチョイス」について伺いました! 開発経緯やキャラクター・世界観などをお聞きしている「産地直送インタビュー」と合わせてお楽しみください。
『星のカービィ スターアライズ』Vol.1 山梨直送インタビュー(前編)
『星のカービィ スターアライズ』Vol.2 山梨直送インタビュー(前編2)
『星のカービィ スターアライズ』Vol.4 インタビュー The アルティメット(後編)
・ネタバレを含んでいます。
<ハル研究所 プロフィール>
Q.坂を転がっていくワドルディたち。一番大きい塊は全部で何体いるんですか?
熊崎 ワドルディ1000匹相当の塊になるように、プログラムで作られたものになります。ただしそれは、表面に張り付いている部分だけで、中の質量も計算するともっといることになります。ワドルディが頑張った結果、こんな姿になっちゃったようですが、一体彼らの身に何が起きたのかは…謎、にしておきますね。HDゲーム機ならではの物量ネタとして考えられました。
Q.ファーマンさんが一番力を入れたキャラクター&コピー能力は?
ファーマン 一番ですか…迷いますね! ヨーヨーやクリーンなど、初3D化の能力も作っていてとても楽しかったのですが、やはり新能力である「スパイダー」には思い入れがあります。クモの巣を放ったり足場にしたりした時のボヨヨン! という動きの気持ち良さは特にこだわりました。意外と気付かれていないのですが、実はフレンズ技の時だけクモの巣がハート型になっているんです。キャラクターだと、つい最近まで作っていた追加ドリームフレンズの「マルク」でしょうか! マルクは人気キャラなので、昔の完全再現をするところと現代風にアレンジするところの線引きが難しかったですね。マルクに初めて出会う人は「なにこれ!」と驚けて、マルクをよく知っている人は「これこれ!」と納得してもらえるようにしたつもりです。実は、最初はもっと軽めな仕様だったのですが、気が付けば担当プログラマーさんが昔のボス挙動を追加していて、「あとはデザイナーさんがモーションさえ作ってくれれば…」という、半ば脅迫めいたことをされながら(笑)最終的にはとても豪華なキャラになりました。
Q.「星の〇〇〇〇」に、サブタイトルを付けるアイデアはどのように思いついたのですか?
東藤 そこのアイデアは自分だけじゃなくて、デザイン案の監修の際に、デザインディレクターのファーマン、デザインを担当した河田(茂幸さん)、リードUIの私とで、ふざけて話したのが始まりだったと思います。サーキブルに「斬撃の回転刃」とか、ボンカースに「とにかくデカイ猿」とか、「サブタイトルつけたらおもしろくない?」「ヘルパーひとりひとりの個性が出せるかも!」みたいな感じでわいわい話していました。それを熊崎に提案したら、「じゃあ、サブタイトル考えてみるよ!」とノってくれて(笑)。会話の中で生まれた提案を、皆がノリノリで実現していく過程が楽しかったです。
Q.『スターアライズ』では残機が3桁になって記録もされるようになったのはなぜでしょう?
熊崎 近年、リスタート性が高くなっているアクションゲームにおいて、ゲームオーバーってもはやそこまで存在感のある仕様ではなくなっていて。撤廃も考えましたが、1UPアイテムの存続にも掛かりますし、シリーズ集大成でなくなるのも少し寂しく思えて…。であれば、もう残機もスコアみたいな概念になっても良いかなと思い、高い数値でカンスト可能にしました。そして小ネタとして、カンストすると、カービィのアイコンにクラウンがついて、ちょっぴり嬉しい仕込みも入れました。
Q.デザインディレクターの立場から一番見てほしい部分はどこ?
ファーマン キャラクターも背景もUIも、HD機ということで今までよりも綺麗で細やかになっていますので、いろんなところで「かわいい!」「きれい!」と思ってもらえたら嬉しいです。また今作の主役と言っても過言ではない「フレンズたち」にもカービィ同様に愛着を持ってほしかったので、ステージをクリアした時のダンスもそれぞれ専用になっています。ステージ内でコントローラーを放置した時のリアクションも個性的なものになっていたりするので、たまにはぼけーっとカービィの世界を眺めてみてくださいね。
Q.メモリアルイラストのイラストレーターはどのように決めていったんでしょうか?
熊崎 まず私からの候補案と、東藤をはじめ絵描きさんに詳しい社内スタッフから情報を集め、検討を開始しました。描かれる世界観に個性があることと、全体のバランスからカービィと親和性の高そうな絵柄の方も取り入れつつ、8枚並べた時のバランスを考慮して、選ばせていただきました。
Q.一部のボス撃破後にフレンズハートを当てると、通常と違った演出になるのは?
熊崎 開発中、任天堂さんと話していた時にアイデアの1つとして「ボスも次々と仲間にできたら凄いですね」と言われて。さすがにウィスピーウッズを仲間にはできませんが、デデデ大王やメタナイトであれば、もともとドリームフレンズにする計画はありましたので実現させました。そうすると、ポップスターでジャマハートの影響を受けた残りのメンバーもハートで何か起きた方が自然だと考え、ちょっと懐かしい裏技みたいに、ウィスピーウッズにも仕込みました。そして裏技のヒントになるよう、ハートで改心させるのが必須なポン&コンを作り、ポップスターのボスたちには効くことを示唆しました。
Q.HD振動でグリーングリーンズの曲を鳴らす仕掛けは、どんな過程で実現したんですか?
Q.吸い込んだ敵の数や物の感触がHD振動で伝わるってスゴイ! もっと詳しく聞かせて!
熊崎 振動で奏でるグリーングリーンズの曲もなかなかのエピソードかと思いますが、いろいろなことにチャレンジしました。どこまで組み込めるか分かりませんでしたが、最後の方には担当の永田がかなり慣れてきて、さまざまな場面で活用ができました。簡易的に、効果音から割り出して自動で振動を作れたりもするのですが、それだけではイマイチで。1つ1つ丁寧に調整してあります。好きな振動は、ギャラクティックホームラン王の打った時の感触と、惑星を粉々にする感触ですね。あとは、エンデ・ニルの第二楽章が流れる場面で、あの胎動に合わせてドクッドクッと脈打つ部分も、最終決戦の組曲をより感慨深くさせる、大事な演出になりました。
Q.ユーザーインターフェース(UI)デザインで一番大変だったのはどんなことですか?
「The アルティメットチョイス」制作秘話
ここからは、ストーリー星の〇〇〇〇クリア後のお楽しみ要素であり、やり込み系モード「The アルティメットチョイス」についてのお話です。ネタバレ要素を含みますので、ゲームをたっぷり遊び尽した後に読んでくださいね。
『星のカービィ』シリーズお馴染み、ボスと連戦で戦うモード。今回は辛さによって戦う回数が選べるんです。
―― ここからが本番みたいな部分もありますよね(笑)。
熊崎 その達成感のためにも、選ばれた方にしかクリアできない難易度にしないとってなりますよね。コアユーザーさんが誰でもクリアできる内容をクリアして「Congratulations!」って言われても…納得できないですよね? とはいえ普通に開発すると難しくなりがちですので、そこは本当に毎回バランスが難しい部分です(苦笑)。
―― 簡単すぎても達成感が味わえないですし。
熊崎 そこで今回考えたのが、幅広い層のために、自分の満足いく難易度である程度の達成感が得られるようにしました。一緒に挑むプレイメンバーも任意で4人まで自由に選べますし、序盤は割と簡単に「やったー!」と満足度が得られるようにしています。クリアしたというマークも付きますし。
―― amiiboを使えば回復アイテムが貰えて、よりクリアできる確率があがりますし。
熊崎 ある程度クリアできるようなると、次はもうちょっと辛い難易度がやりたくなりますよね? ひとつくらい上の辛さにしてみても、意外と多くの方がクリアできたりします。選択肢はいろいろあって、コックカワサキなど回復ができるフレンズヘルパーを連れて行けば、自分がストーン能力で身を守っている間に勝てるみたいなこともできます。一緒に行くフレンズたちを考えて選ぶことで、難易度が大きく変わってきます。難易度を選べる以上に、フレンズヘルパーのチョイスなどで、多くの方がクリアできる可能性を増やしています。
―― そういうことだったのですね。
熊崎 カービィの集大成として、アクションゲームが苦手な方にも辛口モードをどう楽しんでもらえるか? という考えで作りました。辛口を用意することで喜ぶお客さんもいますし、これはやらなきゃって言う義務感で頑張っている方、ストーリーだけ楽しみたい方、アクションゲームが得意じゃなく、クリアだけでも限界の方、いろんな方がいますよね? 今回の格闘王は、カービィらしく間口が広く奥深く、難易度をプレイヤーが自由に調整してプレイできるのはいいアイデアだと思いました。
―― クリアしたと思ったら、さらにその上の難易度が出てきて。一番ビックリしたのがカービィの顏ですが(笑)。
東藤 私が担当した中でも、特にやりきったなぁと思うのが「The アルティメットチョイス」の難易度選択です。難易度を上げる毎にカレーに入る激辛ソースの量が多くなって、カービィの表情が焦っていくというアイデアから担当しました。最大難易度のカービィの悪~い顔を描いている時は楽しかったですね…! 2001年に放送していたアニメカービィ好きの方に見ていただきたいです。
熊崎 「魂が飛び出る辛さ」っていう言い方はちょっと迷いましたが、ここから先は地獄だから…お好きな人だけどうぞ! っていう気持ちが表れています(笑)。DS『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』の「真・格闘王への道」みたいなEXモード的な分け方をする案もありましたが、普通にクリアするだけでも難しくなりがちなので、難易度をグラデーション式にすることで、幅広い年齢層の方にもクリア体験をしてもらえるようになるかと思って作成しました。
『星のカービィ スターアライズ』Vol.1 山梨直送インタビュー(前編)
『星のカービィ スターアライズ』Vol.2 山梨直送インタビュー(後編)
『星のカービィ スターアライズ』Vol.4 インタビュー The アルティメット(後編)
関連リンク
『星のカービィ スターアライズ』 公式サイト
星のカービィ ポータル
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