【ゲームと生きる】ゲームで生み出す、新しい価値と笑顔(前編)

ゲームを通じて社会貢献!?
マリオカートチャンピオンの経歴を持つNOBUOさんの会社では、現在「eスポGOMI」など、社会貢献とゲームを組み合わせた活動で広がりを見せています!
ここでは、ニンドリの攻略本に協力してもらったときのなつかしい話なども交えてお話しした、会社設立時のインタビューを公開します。
真面目なお話も多いですが、ぜひ楽しくお読みください!

※この記事は、2021年5月21日発売のニンテンドードリーム7月号に掲載したものを、ほぼそのまま掲載しています。

 

ゲームで生み出す、新しい価値と笑顔(前編)

ゲームを通じて生きる希望や頑張るきっかけを共創する㆒㆒そんな理念を掲げた会社が、2020年11月に創設されました。
「Life Reversal Gaming.」(以下LRG)、設立者である高木ブラザーズの兄・NOBUOは、『マリオカート』世界チャンピオンであり、ニンドリにも所縁深い人物。そこで、彼らが経験してきたゲームとのかかわりや、新しい価値づくりについてお話しました。

参加メンバー
NOBUO:『マリオカートWii』世界公式大会優勝6回の記録をもつ。15年前に発症した線維筋痛症と闘いながらプロゲーマーとして活躍し、現在はLRG取締役を務める。
KOUZI:LRG代表取締役。兄・NOBUOの活動を支え、YouTube「THE TAKAGI BROTHERS」を配信。
りふぁ:本誌編集長(※当時)。任期も4年目を迎え、新しい切り口として今回の企画・取材を独断で決行。
特別参加ケンシン:イチ読者ながら「ゲームに恩返しをしたい」という思いで、本取材に補佐役として同席。

 

5年ぶりの登場!

りふぁ:NOBUOくんにニンドリに登場してもらうのは、めちゃくちゃお久しぶりですよね。

NOBUO:そうですね。たぶん、何かの生放送企画が最後だったような。

りふぁ:スーパーマリオ30周年のときだ。
▶︎動画:スーパーマリオ30周年アニバーサリー|ニンドリ11月号企画

NOBUO:じゃあ5年ぶりぐらいですね。

KOUZI:5年ぶり!?

りふぁ:ゲームショウで会うくらいはありましたけど、ニンドリとしてお声がけするのは本当に5年ぶりですね。でもYouTube「ニンドリチャンネル」ではNOBUOくんにプレイしてもらった『マリオカート』の動画が未だに一番再生数あるので、ある意味、うちのエースですよ(笑)。
▶︎動画:【ニンドリ】マリオカート8世界記録に挑戦!

KOUZI:そうだったんだ。ほぼ初めましての自分のほうがびっくりしました(笑)。

りふぁ:あらためてよろしくお願いします(笑)。
そんな久しぶりに声かけさせてもらったきっかけなんですけれども、NOBUOくんがプロゲーマーを引退されて、弟のKOUZIさんたちと「ゲームで笑顔を作る会社」を立ち上げたと聞いて…。あ、ここでは2人ともさん付けのほうがいい?

KOUZI:大丈夫です、なんなら両方「くん」でも(笑)。突然さん呼びされるほうがNOBUOも戸惑うんじゃないですか?

りふぁ:じゃ、それで。嫌だったら言ってください。お2人とも取締役でいらっしゃるわけなのでね(笑)。

NOBUOKOUZI:いやいやいや(笑)。

りふぁ:ここでまあ「事業」というと少し堅苦しいので、ゲームを使って何をしようとしているの? みたいなところを、ぜひ聞かせてもらおうかなと思います。

ゲーム大会という場所

りふぁ:最初に会社設立のことを知ったときは、もっとeスポーツにかかわっていくのかなと思っていたんですけど…。

NOBUO:最初は本当にざっくりしていて。動き出してから方向性が固まっていたんです。ただ、人の役に立つことはしたいなという思いはずっとあって。

KOUZI:そうですね。私と兄の中には、「やっぱり子供に届けたいよね」というところがあるんです。でも子供だけにフォーカスするより、どうせだったら社会丸ごと良くしていっちゃえ、と。
ゲームって盛り上がってはいるものの、どこか批判的な人も多いわけです。同時に今、環境問題とか、日本国内ではSDGs(※)といったところが叫ばれています。
だからゲームを使って社会貢献ができたら、見え方や、皆にとってのゲームの可能性が変わるんじゃないかなと思っているんです。実際ゲームは、社会問題を解決するためのツールとしても優れているんじゃないかなと。

※SDGs(エス・ディー・ジーズ)…「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」。国際社会共通の目標として、飢餓、教育、福祉といったさまざまな問題について取り組みを行うもの

りふぁ:そこで掲げたのが、ホームページにある「世界中の人たちと繋がってゲームの未知なる可能性を見出し、新たなる価値づくりに挑戦する」…ですか。

KOUZI:そうですね。先日行われた「eスポGOMI」(詳しくは後編)というイベントも、eスポーツとごみ拾いの融合で。ゲームを使って社会貢献をしていくという一つの事業に当たると思います。

りふぁ:eスポーツが出てきたおかげで仕事につなげやすくなったとか、そういう背景もあるんですか?

KOUZI:時代の背景も大きいとは思うんですけど、これまで兄や私が全国大会の舞台に立たせてもらったようなゲームの大会も、商業にはなっていたはずなんですよね。大会が開かれて、そこに人が、子供が集まって、ゲームを買うきっかけになって、それでまたコミュニケーションが生まれて、友達ができて、次の大会でまた会おうねって約束をして…。その段階で、私たちが目指す世界っていうのは、ある程度できていたように思えているんです。
だからeスポーツという言葉ができてゲームが認知されて進化していく中で、今はまたあの時代のような、どこか懐かしいものが出てくるタイミングなんじゃないかなって思ってるんですよね。

ゲームに育てられて

りふぁ:すごいチャレンジですよね。私たちもゲームを伝える仕事をしているので、ゲームと社会のかかわりを良くしていきたい思いはあるんですが、なかなか手が出せなかった分野というか。

KOUZI:もちろん自分たちの力だけでどうにかしたということはなくて。NOBUOの実績もありますが、本当にゲームが繋いでくれた縁なんだよなといったところも、届けたい思いです。

NOBUO:そうですね。

KOUZI:2人でよく話しているのが、やっぱりゲームって「コミュニケーションツールとして優れている」ということなので、その延長上で僕らが生きているということをすごく実感していますね。

NOBUO:実際、僕ら兄弟もゲームに育てられた人間だなって思ってますね(笑)。

KOUZI:自分たちの年表って、このタイトルをやってたよねっていう年表で綴れるというか。…そうだよね?

NOBUO:そうそうそう。何歳のときにこのゲームにハマってたよみたいなのがあって、それのおかげで歳を忘れずに生きてるっていう(笑)。

りふぁ:それを作ると『マリオカート』なんて、しょっちゅうマリオカートいくつ、マリオカートいくつ…みたいに並んじゃうんじゃないんですか(笑)。

KOUZI:そうそう、大体『マリオカート』みたいな(笑)。

NOBUO:でも、そこは1作品ごとに覚えてますよ!

初めてのゲームの仕事

りふぁ:そんなNOBUOくんに、ニンドリというかアンビットでは、攻略本用にタイムアタックの仕事を依頼して…。

NOBUO:『マリオカート7』の攻略本ですね。僕はあのとき(前編集長の)カズヤさんに声をかけてもらったから、今の自分があると未だに思ってるんです。
18歳で病気を発症して、『マリオカート Wii』の世界一を獲った後は、バイトもほとんどできないくらいの体調だったんです。そんなとき、自分の全てを賭けてできる仕事って、あの攻略本しかなかったなって。

りふぁ:その頃は、私たちは病気のことをちゃんと聞いてはいなくて…。

NOBUO:そうですね。やっぱり病気って聞くと、ちょっと無理させないでおこうと思われちゃうだろうなというのがあったので。その代わり、文句も言わせないぐらいちゃんとこなそうと、自分の中で気を張っていましたね。
実際に本が出て、自分のことが書かれた帯を本屋さんで見たときは、泣きそうなくらい感動しました。

りふぁ:それもNOBUOくんが前向きに取り組んでくれていたからだと聞いていますよ。
挙句の果てには『ゼルダの伝説』の記念本にも引っ張り出して、『スカイウォードソード』のWiiリモコンを振りまくってもらったりとか(笑)。


[ゼルダの伝説 ハイラル百科]

NOBUO:しましたしました(笑)。

りふぁ:今だったら頼めないわー(笑)。

NOBUO:いや、そんなことはないですよ! 言ってもらえれば…
僕は今は体調がイマイチなので、弟が全部やります(笑)。

KOUZI:私が振ります(笑)。

りふぁ:その『スカイウォードソード』も、ちょうどリメイクされますね。Switch版は振らなくても遊べますよ!

▶︎ ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD

教育ツールとしても優れている!?

りふぁ:他に、ゲームとこれを組み合わせようというものは何かありますか?

KOUZI:ゲームと教育、でしょうか。ゲームって攻略するうえで、すごく頭を使うことだと思っているんです。兄も僕も学校の成績が良かったんですけど、それは小さい頃に親がゲームを真剣に教えてくれたおかげだと思うんですよね。

NOBUO:すごかったよね。当時小学2〜3年生くらいの弟が、深夜まで父親と特訓してるんですよ。ゲームの(笑)。

りふぁ:これが英才教育(笑)。

KOUZI:「勝つって決めたよな、ならちゃんとやれ」って。勉強しろって言われたことは一回もないのに、ですよ。でも、勉強にも就活にも、その経験が生きてくるんですよね。1位を取るためにはこの教科で100点を取らないといけない、なら一日にこれだけの勉強量をしなきゃいけない…みたいな。

りふぁ:目標を達成するっていう能力が、ゲームを通して身につけられていたと。

KOUZI:そうですね。それができるのがゲームであって、教育にも落とし込めていけたらなぁと思ってます。
ゲームはコミュニケーションツールのはずなのに、多くの場合、コミュニケーションが取れない道具という認識になっているじゃないですか。でも、ゲームに置き換えて話をしてくれたら子供もやる気を出したりすると思うし、そういった例も作ってあげられると良いのかなとは思っていますね。

りふぁ:親子の中でのゲームの在り方?

KOUZI:親子でも良いと思いますし、会社でも良いのかなと。…ゲームをやっているときって、素になれるじゃないですか。そういうところを上手く活用すれば、仕事の場でも生きるんじゃないかと。

りふぁ:たしかにゲームをやると、その人の性格が出たりしますよね。知らなかった一面が見えるというか。

KOUZI:そうそう(笑)。仕事ではすごく落ち着いている先輩が、ゲームをやったらめちゃくちゃ焦って「おいおいおい、負けるぞ!」みたいな。いやいや、営業のスタンスと全然違うじゃんっていう(笑)。

りふぁ:うちの編集部だとどうかなぁ。平和主義というか、絶対勝つ! みたいな人はあまりいないかも(笑)。

KOUZI:社内だけでやると余計にそうかもしれないですね。だから企業対抗とか、ちょっと対抗意識を持たせるようなことをしてあげれば、見え方が変わってきたりしますよ。しかも本当に上手くならないといけない状況があったりすると、よりコミュニケーションが活発化して、良い関係性を作れるんじゃないかなーと。

りふぁ:企業対抗は良いですね。そういう機会があると、やっぱり特訓するし。

KOUZI:はい。例えば上司と部下の関係で、上司のほうが当然仕事のことを知っている。でもゲームでは若い世代が勝つので、これはどうやるんだって上司が部下に聞くと。そういうコミュニケーションが発生するし、部下も部下で、この人はちゃんと話を聞いてくれる人だって信頼できるようになったり。
そういう、ゲームのまだ見ぬ可能性にかかわる事業をどんどんやっていきたいなぁって思っていますね。

NHKでもクローズアップ!?

りふぁ:理想としているゲームとの関係性みたいなものが、任天堂のゲームとも結びつくように思えるので、ニンドリとしては嬉しいですね。
たとえば『どうぶつの森』家族内のコミュニケーションをテーマに登場したタイトルだし、Wii「家庭内で嫌われないこと」を掲げていたり、3DSでの「すれちがい通信」ゲームで大勢の人をつなぐ仕掛けだったわけで…。

KOUZI:そうですね。僕たちも、任天堂さんのゲームで社会貢献ができれば嬉しいですし。

NOBUO:もともと『マリオカート』に救われたという思いがありますからね。プロゲーマーを引退したのも、もっとみんなに身近なゲームをやれたらというところが大きくて。

りふぁ:もちろん「eスポGOMI」で使われていた『ぷよぷよeスポーツ』も、勝敗ルールがわかりやすくて、色別に集めて消すのがごみ拾いともマッチしていて面白かったですね。

KOUZI:はい。すごく良かったです。

※『ぷよぷよeスポーツ』(セガ):定番の「ぷよぷよ通」ルールと、一発逆転が狙える「ぷよぷよフィーバー」ルールの2つを収録。インターネット対戦やオフライン大会モードも搭載。連鎖を学べるレッスンモードも

ごみ拾いをスポーツにした「スポGOMI」。さらに「eスポGOMI」ではゲームに勝つと、ごみ拾いで有利になる道具をゲットできました

りふぁ:それにゲーム雑誌の仕事でご縁のある中で、セガさんがいかにエンターテイメントを大事にされているかも感じていたし、しかも『ぷよぷよeスポーツ』って色覚多様性の方にも遊べるようにアップデートされたりもしていて…。社会性と相性のいいソフトだったなと感じました。

アップデートで追加された「色ちょうせい」で、遊べる人の幅が広く!

りふぁ:イベントにはNHKさんの取材も入られてましたが、(実際の放送では)番組内の5分という短い枠の中で、ゲーム映像が想像以上に長く映し出されていましたよね。

KOUZI:そうなんですよね。NHKさんの取材は「スポGOMI」からで、関係者それぞれに密着取材が入っていたんです。今回は「eスポGOMI」ということで、私たちのところにも来てくれていたんですよね。

りふぁ:そうなんだ! お2人の活動がメインの見せ方になっていましたけど。

KOUZI:はい。担当の方が、LRGっていう組織にすごく興味関心を持ってくださって。密着もNOBUOの体調のことを常々気にしてくれて、「無理だったら今じゃなくて大丈夫なので家の近くでスタンバイさせてください」みたいな。それはそれで、まあまあプレッシャーだなとは思うんですけど(笑)。
そんなふうに注目してくれて放送してもらったからには、価値があることなんだっていうことをどんどん広げていきたいなと思っています。

後編へ続きます…..
▶︎ 【ゲームと生きる】ゲームで生み出す、新しい価値と笑顔(後編)

関連リンク
▶︎Life Reversal Gaming.
▶︎ ぷよぷよeスポーツ


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