【ゲームと生きる】ゲームで生み出す、新しい価値と笑顔(後編)

ごみ拾い大会で『ぷよぷよ』も!? ゲームが与えてくれる勇気とは?

ゲームを通じて生きる希望や頑張るきっかけを共創する㆒㆒そんな理念を掲げて会社を立ち上げた、高木ブラザーズの兄・NOBUOさん、弟・KOUZIさん。彼らの活動についてや、ゲームとのかかわりについて目指しているものについて、お話をうかがいました。

※この記事は、2021年5月21日発売のニンテンドードリーム7月号に掲載したものを、ほぼそのまま掲載しています

▶︎ 前編はこちら

eスポGOMI 〜ゴミもぷよも消していこう!〜参加レポート

スポーツとごみ拾いを掛け合わせた「スポGOMI」。ごみ拾いを競技化することで、楽しく環境保全に取り組める活動です。さらにeスポーツと組み合わせて開催されたのが、2021年4月に横浜で開催されたこちらのイベント「eスポGOMI 〜ゴミもぷよも消していこう!」
「ごみ拾いよりゲームが楽しみ」と参加した子供もいる中、ニンドリ編集長りふぁ(当時)も一般参加。その様子をお伝えします!

※当時の誌面をそのまま紹介しています

■ 主催:eスポGOMI開催委員会(日本スポGOMI連盟/株式会社Life Reversal Gaming. /横濱OneMM) ■制作協力:株式会社Engi ■後援:ヨコハマ経済新聞 ■協力:ルーデンス株式会社/一般社団法人藤っこコミュニケーション研究会/象の鼻テラス


3人1チームとなり、決められた範囲のごみを集めます。可燃・不燃・缶・ペットボトル・タバコ…と分類し、それぞれの重さがポイントに。
ゲーム感覚で集めると、ふだん見えていなかったごみが見えてくる! 大物をゲットする喜びも!


(1)中盤は、おまちかね『ぷよぷよeスポーツ』で対決! 上位チームは、ごみ拾い後半戦用のアイテムを獲得することができます。「頭を使うゲームなら得意かも」といったお父さんの声も聞こえ、世代を超えて楽しむとともにKOUZIくんの実況で盛り上がりを見せました
(2)あえて「ハーピー積み」というトリッキーな手段に出るりふぁ。結果は…「あ、勝っちゃった」。チームに貢献したものの、アイテムはゲットならず!
(3)大量のごみを集めた、計12チームの参加者たち。優勝は、『ぷよぷよeスポーツ』に勝ち抜き、アイテム「スポGOMI名人・ディレクター」を手に入れた(?)チームが逆転するという結果に! スポGOMIもぷよぷよも、極めようとすると奥が深い…

 

【ゲームと生きる】ゲームで生み出す、新しい価値と笑顔(後編)

闘病のなかで経験した、かけがえのないゲームの存在。どんな決意が生まれたのでしょうか。
ゲームを通じて笑顔を作る会社、「Life Reversal Gaming.」(以下LRG)の立ち上げや、未来の目標にもつながっています。
ちょっと深刻な話も多いですが、ぜひ楽しくお読みください!

参加メンバー
NOBUO:『マリオカートWii』世界公式大会優勝6回の記録をもつ。15年前に発症した線維筋痛症と闘いながらプロゲーマーとして活躍し、現在はLRG取締役を務める。
KOUZI:LRG代表取締役。兄・NOBUOの活動を支え、YouTube「THE TAKAGI BROTHERS」を配信。
りふぁ:本誌編集長(※当時)。任期も4年目を迎え、新しい切り口として今回の企画・取材を独断で決行。
特別参加ケンシン:イチ読者ながら「ゲームに恩返しをしたい」という思いで、本取材に補佐役として同席。

ゲームが与える、生きる勇気

KOUZI:いま一番やっていきたいところって、病院とか、施設に対してのアプローチなんです。
まず、病気の子供の中で長期入院をされている方は年々増えていると。その理由も、病気やケガで入院してから、周りと接する機会が減っていく中でうつ病を併発するケースが増えてるみたいなんですよね。
でも、病院って実際はめちゃくちゃ人がいるじゃないですか。そこでしか出会えなかった人たちと出会えたり、今まで趣味が合わなかった人たちとも出会う機会っていうものがあるにもかかわらず、そのコミュニティが薄いままなのは少しもったいないと思うんです。
今はオンラインが発達してますし、病院や施設でゲームを使って縁を広げられたら、同じ病気の人とつながって励まされるし、治療の共有ができたりするんじゃないかなと。

NOBUO:自分が病気だったというのもあって、できることがない期間を支えてくれたゲームの存在はすごく大きかったんですよね。外との連絡も取れないし、外の人たちと比べたときに、自分がものすごく劣っているというふうな感覚が拭えないんです。
そういうときに、ゲームがつらいことを忘れさせてくれたり、ストーリーものであればそこから良い価値観を与えてくれたり…病気でありながらも救われたんです。
それが今の自分の原動力にもなっているので、そういったことを子供たちだったり、身体の不自由な人たちにも感じてもらいたい。それで、強く生きてもらいたいし、治る病気だったらそれに向かって、頑張れる意欲に変えていってもらいたいなと思っています。

りふぁ:これ、ケンシンくんはすごく共感するところじゃないですか?

ケンシン:そうですね…。(涙ぐんで)すみません、いろいろ思い出して…。
僕は2〜3歳の頃に皮膚筋炎という指定難病にかかってしまいまして。ほとんど幼稚園に行くこともできず、1、2年くらい入院していたんです。僕の病室は病気が重い子たちが集められていたからかはわからないですけれど、中の子たちと話す機会は、先ほど仰っていただけたとおりあまりなかったんです。ちょっと仲良くなったとしても、事情があっていなくなってしまうことも多かったので、本当に人とのつながりが望める部屋ではなかったんですよね。
孤独な時間が多かったんですけれども、そのとき両親に買ってもらった『ポケットモンスター エメラルド』が本当に面白くて。ずっと『ポケモン』の世界の中で旅できるような、遊べるような感じで。ずっと入院していて外の世界は見ることがなかったり、人の話を聞いたりすることもなかったので、ゲームから外の世界を見せてもらえたっていうか…。

りふぁ:うん、うん。

ケンシン:本当にそのとき心の支えになりましたし、今でも僕の信念みたいなものに深く結びついているんじゃないかなと思っているんです。

孤独ではないと知ってもらうために

りふぁ:いまケンシンくんはバーチャル背景を『スーパーマリオ オデッセイ』にしてくれてますけど、それこそ身体が動けなくてもゲームさえ遊べれば、自由に歩き回れる夢のような世界ですよね。
私が気づかされたきっかけは『Miitomo』っていう任天堂のアプリなんですけど…。フレンドに闘病中の方がいたんですけど、SNSでつながった人たちのMiiを入れて凝った写真を撮ってて、すごく生き生きと楽しんでいたんですよ。この子にとってはゲームの中が、何でもできる自由な世界なんだなって。
私自身も入院の経験はあるんですけど…白血病で2週間くらい。

NOBUO:えー!?

りふぁ:こう、えーってなるじゃないですか。大層なこともなく退院してるんですけど。ただ、そのときは、ゲームって病院自体があまり受け入れてくれる存在じゃないな…って感じたんですよね。自分たちはこうやってゲームを仕事にしているのに、ちょっともやもやするわけですよ。
だから、そんな難しそうなことを掲げていこうっていうのは、チャレンジとして響くものがあったのかなと、自分の経験を通して思いました。
しかもNOBUOくんもケンシンくんも、治療が難しい、一般的にあまり知られていない病気でしょう。

NOBUO:そうですね。それこそ18歳で発症したとき、病院もそれが線維筋痛症であるってことが発見できなくて。医者でもわからないくらい認知度は低かったんです。病名がわかってからも、それを他人にアウトプットしたところで「それって何?」くらいの知名度だったので、それは本当に孤独でしたね。

りふぁ:ですよね。自分なんかはメジャーな病気だったので、説明がいらないから楽ちんだなって思ったんですよ。

NOBUO:そんなことは(笑)。

りふぁ:みんなが想像するような大変な治療もしなくて済んで。ただ伝わりやすい病気を経験した分、伝わりにくい病気の人って大変そう…ってヒシヒシと感じて。だから難しい病気の方って、まずは知ってほしいというところからなんじゃないかなって。治療の進歩も、結局は患者数や知名度に左右されるわけでしょう。

KOUZI:そうですね。環境というか国が認知して寄り添ってあげないと、本当の意味での完治って多分ないと思うんですよね。
それで今回NHKさんの取材の中では、NOBUO自身が寝たきりになっている姿も初めて撮ってもらったんです。辛いっていうアピールのように受け取る人もいるかもしれないですけど、実際にはそれを見て励まされたりとか、私も頑張らなきゃって思う人たちのことを、僕らは大切にしなくちゃいけないなと思っています。

▶︎ NHK|“SDGs × eスポーツ” ゲームで環境問題を攻略する兄弟の挑戦

りふぁ:それは、いいことですね。

KOUZI:自分は一人じゃないんだよと伝えていくうえで、ゲームを使うことによって自然と友達になれる、関係性が持てると。そういう病院プロジェクトを、LRGのゴールとまでは言わないですけど、やっていきたいと思っているんですよね。

※線維筋痛症:特別な異常がないにもかかわらず、全身に激しい痛みが生じる病気。睡眠障害、うつ状態などさまざまな症状が併発する。原因はよくわかっていない。
※皮膚筋炎:免疫異常からなる膠原病の一種で、筋肉に炎症が生じる指定難病。筋肉が破壊されて力が入りにくくなり、動かすと痛みを感じる。原因はよくわかっていない。
※白血病:血液や骨髄に白血病細胞が増え、正常な機能を失う血液がん。急激に進行する急性とゆっくり進行する慢性があり、ここでは慢性骨髄性白血病(CML)の経験談。原因はよくわかっていない。

苦しみの先にーー人生逆転ゲーム

りふぁ:会社名の「Life Reversal Gaming.」、意味が「人生逆転ゲーム」ということで力強い意志が込められている感じがしますけど、これを名付けたのは?

KOUZI:2人で考えました。NOBUOの好きな映画が、「カイジ」なんですよ。

NOBUO:100回以上は観ましたね(笑)。

KOUZI:その中のサブタイトルに「人生逆転ゲーム」ってあって、それがすごくいいよねって話していたんです。
「Life Reversal Game」って「ゲーム」ってついてるし、「ゲーミング」にしちゃえば、みたいな流れでスッと決まっていきました。NOBUOの病気に関しても、それを治すことを仕事にできれば、という思いがあったんです。

NOBUO:そうですね。ただ僕の本意で言うと、「人生逆転ゲーム」には、「それまではほぼ負け組の烙印を押されたような人生を送っている人たちが、最後は一番幸せになるんだよ」っていうメッセージも込めたくて。その苦しい思いをしたことが、ただ地を這いつくばっただけじゃなくて、最後に誰よりも幸せになるために生きているんだよって。そういうメッセージも込めて、推しました。

りふぁ:いい話…なんだけど、私この話を聞いたがために、キミたちを「カイジ」のビジュアルで想像してしまうわ(笑)。

一同:(笑)

高橋名人のような存在への憧れ

りふぁ:最終的に、病院での活動を目指していく、と。

KOUZI:本当は今すぐにでも動いていきたいんですけど、やっぱり私たちみたいな小さい会社では費用感みたいなところが難しくて。
なので、こういった話をさせていただく機会を増やしながら、その思いに協賛してくれる会社さんや近い取り組みをしている団体さんと連携して、一緒にやっていけたらいいなと。

りふぁ:なるほどね。ニンドリはお金が出せるわけではないので、まあ知ってもらうとこだけちょっと力になれれば(笑)。

KOUZI:いやいやもう、すごくありがたいです本当に。

りふぁ:ニンドリを読んでくれてる人たちの中には、ゲームに勇気をもらったみたいな体験をしている人も、すごく多いんじゃないかなって。だから、何かできるかできないかじゃなくて、同じゲーム好きとして、とにかく知ってくれる1人になってもらえれば嬉しいですね。
…NOBUOくん、以前、高橋名人の話をしてくれたの覚えてます?

NOBUO:覚えてます。僕が子供のときから一番憧れていた人っていうのが高橋名人で。
というのも、今でこそ他人に簡単に抜かれてしまうような記録ばっかりかもしれないですけど、あの時代の中であれだけのものを築き上げて、人が目指す「名人」と呼ばれた高橋名人って、本当に偉大だなと思っていて。だから僕がプロになったときに、目指すプロ像も当時の高橋名人っていう感じでした。

りふぁ:高橋名人への憧れ的なものって、コントローラーの連射みたいな「自分にもできそう」と思わせる部分だったとか。

NOBUO:そうですね。実際、16連射とかも自分もチャレンジしてできたりもしましたし。それでもやっぱり「目指したくなるような存在」だったっていう、それがすごいなと思いますね。

りふぁ:その話を聞くまではNOBUOくんって、絶対的な記録やストイックに強さを求めているイメージがあったんですよ。
でも「NOBUOには勝てそう、と思ってもらえる人になりたい」っていう話をしてくれて、印象が変わったんです。
今回の「ゲームを使って人を笑顔にする」みたいなのは、そのときしてくれた話と結びついて、しっくりきたんですよね。

NOBUO:ありがとうございます。

りふぁ:もちろんKOUZIくんも、兄が世界チャンピオンで、そんな近い距離感で自分もそこに続いていっているってすごいことですよね。

KOUZI:とはいえ、僕の目線からは皆さんの持つ印象とはちょっと違うかもしれないですね。僕は兄が実際に連打してるところも見ているし、連打でコントローラーをめちゃくちゃ壊してるところも覚えていて。そういう思い出だったりします(笑)。

りふぁ:そんな裏側が(笑)。

役割はキノピオ!? みんなを主役に

りふぁ:高木ブラザーズ自身は、どういう存在にしていきたいですか?

NOBUO:僕らがどうというより、このあいだの「eスポGOMI」であれば『ぷよぷよeスポーツ』をやってくれた人が、今後医療問題にかかわっていけるのであれば病気と闘っている人たちが主役です。
僕らは、より面白くしたりより良くしたりっていうのが目的なので…、『マリオパーティ』でいうキノピオみたいな感じですね。

一同:(笑)

NOBUO:「ゲームハ コウヤッテ ヤルンダヨー」みたいな(笑)。

りふぁ:それで、主役はプレイヤーであるみんななんだよっていう。

NOBUO:そうそう、そうです(笑)。

りふぁ:では最後に、ニンドリの読者に向けてなにかメッセージをもらえますか。

NOBUO:そうですね…。
勉強や仕事と比べたら、ゲームのほうが抜群に面白いって思う方は、読者層としてはきっと多いと思うんですよ。でも、ゲームから離れた瞬間って現実の世界に戻されたような気になるけど、実はゲームの中の世界で起きていることを現実の世界にも当てはめていけば、きっと現実の世界もうまくいくよってことを知ってもらえたらなと思います。

KOUZI:そうだね、確かに。僕からもそれで十分です。

りふぁ:ではそれで! 今日はありがとうございました。今度は、高木ブラザーズでニンドリチャンネルに遊びに来てね(笑)。

NOBUOKOUZI:ぜひぜひ!

(2021年4月27日 リモート取材にて)

※この取材より1年半…、いまだニンドリチャンネルに遊びに来てもらえてはいません!

関連リンク
▶︎Life Reversal Gaming.
▶︎eスポGOMI

eスポGOMIに参加!

3名のチームを結成し、各大会のエントリーフォームから参加できます(1名でも申し込みできます)。参加料無料、定員オーバー次第締め切り。
直近のイベント情報は、▶︎eスポGOMI開催委員会 公式Twitterをご覧ください。

▶︎2022年10月30日 eスポGOMIから学ぶ社会課題解決ワークショップ(長野県)
▶︎2022年11月03日 eスポGOMI with 琉球コラソン(沖縄県)
▶︎2022年11月13日 eスポGOMI 2022 横浜大会(神奈川県)

 

WEB公開に寄せて

https://www.ndw.jp/ndw/wordpress/wp-content/uploads/2121/12/rifa_80x80.jpg
りふぁ

この取材ののち私はニンドリ編集部を卒業しましたが、「ゲームと生活との関係性(を良くする)」というテーマはやれることがもっとあるかもなぁと考えていました。そこでNDWの再始動に伴って、この記事をWEB公開することにしました。
当時ニンドリ読者に向けて編集したインタビューなのでWEBとしては少々違和感もあるのですが、そのまま公開です。大会参加は純粋に楽しかったので、機会があれば皆さんも参加してみてください!


© SEGA

関連記事