マリオ映画公開記念!宮本茂さんインタビュー 制作の始まりから驚きの設定まで
ひと足お先に、世界で記録的な大ヒット
Q ワールドプレミアには、マリオの音楽を手掛けてきた近藤浩治さんも行かれたと思いますが、お2人で話したことや、現地ならではのエピソードはありますか?
宮本:
一緒に行ってはいたんですけど、みんなおとなしいんですよ。
せっかく来たんだから、もっとどんどんしゃべってみんなに写真を撮ってもらって、目立たなきゃみたいなことを言ってたんですけど(笑)。
しかも近藤さんはちょうど、アメリカの議会図書館に音源が保存されるというすごく名誉なことがあったわけです。本当に数えるほどの作曲家しか入っていないところに入るので、その取材もあるし、行こう行こうと一緒に現地に行ったんですけど、とにかく物静かでしたね。
そもそも音楽のブライアンさんとはあんまり会ってないんですよね。最初だけ会って、あとはリモートでやり取りして。12月にスカイウォーカーランチで編集をしたんですけど、そのときに久しぶりに会ったくらいで。
ワールドプレミアでもお会いできたので、近藤さんと2人でいろいろしゃべってはいましたね。
ワールドプレミアといえば、ジャック・ブラックさんは自前でクッパのコスプレを作って着ていました。ジャケットの背中にトゲを付けて、鱗のシャツを着て。
ピーチ役のアニャさんも、ディオールのライダースで全身ピンクになって。
そういう気合を入れてくれて、びっくりしました。
Q 日本での公開前から世界で大ヒットしていることが報道されていますが、今の率直な気持ちを教えてください
宮本:
もう、ラッキーそのものです。本当に。
世の中に、良いモノはごまんとあるけど、気が付いてもらえるものは僅かしかないと思っているんです。
とくにこれだけネットで情報が流れるようになると、映像でもなんでも、ほとんどが埋もれる。で、埋もれるところで、選んでもらうっていうのが任天堂の歴史やって。埋もれないようにするっていうことが、どれくらいできるのかですね。
あまり良くない言葉ですが、「猫も杓子も」という言葉がありまして。任天堂って、やっぱり猫も杓子もっていう状態を何回経験するかで。それって、年に1回でも多いぐらいなんですね。
だから、何年かに1回はそういう経験をしたいなと思って、そのためにみんな働いていると思ったほうがいい、…っていうことを、新入社員研修でも言うんです(笑)。
宮本:
ただ、今回、騒いでもらえるかもしれないという手応えはあったんです。
「スーパー・ニンテンドー・ワールド」のオープニングをハリウッドでしたんですけど、そのときの熱量がすごくて。
その次の日には、パークにくる人のほとんどが「スーパー・ニンテンドー・ワールド」に入るために来ていると言われたり、マリオカートに3時間並んだりとか。
考えられないですよ。日本じゃ当たり前ですけど、アメリカのパークで3時間も並ぶというのは。それが起こっていて、すごい熱量を感じたんですね。
だから映画もいけるんじゃないかという期待はしていたんですけど、蓋を開けてみて想像以上だったことには驚いています。
何か幸運が手伝わないと、なかなかここまでにはならないですよね。
しかも、海外の評論家がけっこう低い評価をつけているんですよ。そういうところも話題性につながったと思います。映画の定義が変わったとか言ってもらえたら嬉しいなと。それぐらい幸運でした。
Q 海外のユーザーの反応で、印象深かったものはありますか?
宮本:
アメリカへ行くとき、入国審査っていろいろ聞かれて大変なので、自分からは滅多に言わない「任天堂で働いている。マリオを作った人です。通して」って言うんです(笑)。すると向こうも理解して、スッと入れてくれたり、「サインしてくれ」とか言われることがあったわけです。
それが、だんだんと効かなくなっていて。
でもここしばらくは、「任天堂で働いている」って言うと、向こうから「パークを開くよね」とか「映画も楽しみにしている」って盛り上がるようになって。
そのとき必ず、家族で行くとか、子供を連れて行くとか言ってくれるんですよ。
お父さん世代である40〜50歳の人たちは、やっぱりマリオで育っていて。アメリカの家族ぐるみでマリオに親しんでくれているんだなと。
宮本:
それで、面白かった反応というのは、おじさんたちが「涙が出てきた」って言ってて。彼らが「昔尖っていたころは、マリオはダサいとか、どのゲーム機がもっと速いとか言っていたけど、今となっては全部楽しい思い出です」って語ってくれるんです。
昔を振り返って、思い出で涙が出るっていうのは、よかったなと。
僕らは別に涙を出してもらおうと思って作っているわけじゃないんだけど、そういうふうに記憶を蘇えらせてもらえたという反応が、ちょっと意外でもあるし、ありがたいですね。
Q 宮本さんは、エンターテインメントが現実の人間に与える力というのをどういうふうに捉えているでしょうか
宮本:
マリオのキャラクターは「根っから明るい」だとお話しましたが、その根っこから明るい時間って、暮らしの中で必要だと思うんですよ。
作る人によっては、「考えるきっかけになるものにしたい」とかいろいろあると思うんですけど、マリオは「ああ楽しかった」って思える時間にしたいんです。ゲームでも、映画でも。
だからマリオのゲームは、お客さんがクリエイティブになることで試行錯誤するのが楽しいというものを、マリオの映画は、お客さんが楽しい気持ちになるものを、っていうふうに両方で積み上げていけたらなと思います。
── 今後も映画制作を続けられるんですよね。
宮本:
ニンテンドーピクチャーズという会社を立ち上げましたし、映像もコンテンツなので、ゲームに絞らずにコンテンツを作ろうということはもちろん今後もやっていきます。
ただ発表するようなものは当分は何もありません。制作発表とかも、絶対しないですから。
映像事業をやりますっていうことも、株主総会や経営方針説明会とかではお話しましたけど、それも経営にかかわる説明として、しているわけです。すると必ず、「いつ公開ですか?」とか言われますが、任天堂は面白いなと思ったものができたら発表するので、それまで待ってくださいとお答えしています。
だからゲームもそうですし、今後の任天堂のコンテンツを「面白いものができた」ってなったら発表するということには変わりないですね。
今は、いよいよ公開となるこの映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」にぜひ注目してください。
大勢の人の熱量に支えられて、何回も観ても楽しめるようなものになっていると思います。
終始笑顔で語ってくれた宮本さん。
ゲームキャラクターらしいマリオの新しい世界が広がりました。マリオやピーチの驚きの事実も、この映画で明らかに…!
シアター内が明るくなるまで、目が離せません。
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<映画情報>
公開日:4月28日(金)全国公開
配給:東宝東和
監督:アーロン・ホーヴァス、マイケル・ジェレニック
脚本: マシュー・フォーゲル
製作:クリス・メレダンドリ(イルミネーション)、 宮本茂(任天堂)
声の出演:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラック、キーガン=マイケル・キー、セス・ローゲン、フレッド・アーミセン、ケヴィン・マイケル・リチャードソン、セバスティアン・マニスカルコ、チャールズ・マーティネー
日本語版吹替声優: (マリオ) 宮野真守、(ピーチ姫)志田有彩、(ルイージ)畠中祐、(クッパ)三宅健太、(キノピオ)関智一
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