『マリオテニス エース』任天堂×キャメロット 開発者インタビュー(ニンドリ18年8月号より)
Nintedo Switchだから実現できたスイングモード
テニスゲームにまさかのボス戦!?
宏之 ボス戦のルールの作り方も悩みましたよね。ミスを1回してゲームオーバー、っていうのも、テニスゲームとしては違うよなと。それで、ミスをすると秒数が減ったり、ダメージを受けるとラケットが壊れたりということでゲームオーバーになります。
伊豆野 つらいときはマリオのレベルを上げて挑めたりもします。
—— とはいえテニスゲームなのに、敵からテニス以外の攻撃を受けて秒数が減るとなかなかショックです(笑)。
秀五 試合でボディショットを食らったらショックを受けるでしょ、それと一緒!(笑)
—— それから、まさか「テクニカルショット」を敵の攻撃を避けるために使うとは思いませんでした。
秀五 あれをボス戦で使えるようにするのは大変だったんですよ。スタッフが「ボールがないところでテクニカルショットは出せません」って。
宏之 「そういう使い方は聞いてなかったんで」って言うんです。でも、必要だから! と組み込んでもらいました。
—— ボス戦そのものは、ストーリーモードが決まってから生まれたんですか?
宏之 そうですね。
伊豆野 最初にパックンフラワーの土管のギミックコートが実験のときからあったんです。で、森なら森で通常のコートとギミックコートとボス戦があってひとくくり、というように3つずつセットの流れになるほうがきれいだったので、やっぱりボスがいるんじゃないか、という話になりました。
宏之 とはいえマリオの世界観に合うボスを作るにあたっては、締め切りとの戦いという葛藤がありましたね。
秀五 ボツになったネタもたくさんあります。
伊豆野 実際に新キャラクターとしてご提案いただいた鏡の女王「ミラージュ」は、新しくキャラクターをデザインするならマリオの世界観に合わせないといけないので、何度もやりとりしながら落としどころを決めていきましたね。
宏之 お話を楽しむためには、バリエーションも欲しいし、ああいうファンタジックな雰囲気のものも欲しいと思ったんです。あの部分はストーリー自体も込み入りそうだったのでストーリー作りはあと送りにして、ギミックを先に決めていきましたね。
秀五 ギミックを作るのも、ミラージュの館が一番時間がかかっていると思います。
—— しかし盛りだくさんですよね。テニスゲームの中にRPG感のあるストーリーと謎解きはあるわ、ボス戦はあるわ、アクションゲームのような手応えもあって…。
宏之 ボスパックン戦よりもウッドラケットを取るミッションの方が人によっては難しかったりね。ガボンとのリターンエースチャレンジなんだけど、そこで「ねらいうち」してくるのかお前は、みたいな。
振動とセンサーに技アリのスイングモード
—— Switchということで、Joy-ConやHD振動についてはいかがでしょうか?
伊豆野 スイングモードは遊ばれましたか? あの振動は、任天堂にあるテニスコートで実際にテニスをやって、計測器をつけて収録したリアルな振動を元に調整して実装しています。テニス部の社員を呼んでやってもらったんです。
宏之 ふつうに作ると、「ミスしたときの振動ってこうじゃないよね」っていうものになるじゃないですか。
伊豆野 だから、わざとガットの端の方に当ててもらったりとか。
秀五 スイングモードはぜひ試していただきたいです。『Wiiであそぶ マリオテニスGC』のときに、スイングモードをどうしても入れたかったんですが、「下から上」とか「上から下」っていう振り方の違いはWiiリモコンでは感知できなかったんです。それでも擬似的にショットの打ち分けを取り入れはしたんですけど、自分たちの思っているものには程遠かったんですよね。そのときいつかリベンジしよう、と思っていたものが、今回のスイングモードなんです。
—— ついに思うものが実現できた、と。
秀五 だから、できればちゃんとテニスのように振ってほしいんですよね。ゲームが上手い人ほどチョイチョイ、と小さく振るんですけど、そうじゃないからテニスは、と(笑)。周りのものには気をつけつつ、大きく振ってほしいです。
—— じゃあ、本当のテニスのような操作が体験できるんですね。
秀五 …それが、製品版ではだいぶ緩くなりました(笑)。開発途中は本当のテニスでしたけど、それだととてつもなく難しいわけです。テニスって本当は、難しいんですよ。でも、だれでも錦織選手やジョコビッチ選手を目指せるものが“ゲーム”ですから。
—— リアルなスイングモードを実装してしまうと、楽しめるゲームではなくなってしまうと。
秀五 そう。だから、開発途中は“「リアルな世界では錦織選手やジョコビッチ選手にはなれないんだな…」ということを思い知ることができるゲーム”になっていました。
一同 (笑)
宏之 スイートスポットに当てるって難しいんだな…っていう。
秀五 リアルにテニスを始めたころを思い出しましたね…。
—— リアルを追求しつつ、最終的にはゲームとしてのバランスに落とし込んでいったわけですね。
宏之 やっぱりコンピューターゲームとしては、現実の世界を超越していないとダメだと思うんですよ。現実の世界の方がコンピューターよりすごかったら、わざわざコンピューターでやる必要ないじゃないですか。エンターテインメントという部分で、映画とか漫画と次元としては同じだと思っています。
まだまだ聞きたい開発秘話Q&A
インタビューの最後に、いくつか細かいところも訊いてみました。本作は発売後もアップデートを続けていくということなので、今後の展開にも期待しちゃいましょう!
※発売当時のインタビューであることをご了承いただきお楽しみください。
Q.タイトルが『エース』になった経緯は?
伊豆野 これは任天堂側で決めたものになりますね。「ねらいうち」で文字通り「ねらいうちエース」が狙えますし、スペシャルな技を使えるキャラクター1人1人がエースですし、1人1人のプレイヤーがオンラインでエースを目指して頑張れるといったことがかかった名称になります。
秀五 すごいテニスプレイヤーのことを「エース」と呼んだりしますので、意味としてもすごく合っていると思います。
Q.ストーリーモードのミッション「カメックとのラリーチャレンジ」がクリアできません
秀五 あ、やっぱり!? 僕も言ったんだから、「これ強すぎる」って! だから彼とは「ラリーを続けよう」って気持ちじゃダメなの。「叩き潰してやる!」って気持ちで挑んでください。
Q.ここを見て、という部分について教えて!
秀五 グラフィックでいちばん大変だったのはテニスシューズなんです。
伊豆野 実物を作っても耐えられるような質感にしよう、ということで、かなり細かく作っていただきました。裏のへこみ、メッシュ素材と側面の質感の違いですとか。
秀五 パーツも細かいし、いちばん時間かかってるんじゃないかなあ(笑)。
Q.ストーリー中の名称の由来を教えて!
宏之 ソルはラテン語で太陽という意味ですし、ほかにも光と影、四季といった意味の言葉からとって名前をつけています。ラズはラテン語で「光」、エスターは「存在する」という意味です。
最後にメッセージ
秀五 実はまだ作り続けているんですよ。ですので、遊んでいただいたみなさんの意見をいただきながら、今後も進化し続けると思います。これは私たちにとって久々の感覚なので、皆さんの反応を楽しみながら開発を続けられればと思っています。
宏之 本作の路線がお客様にどのように受け入れられるかが、『マリオテニス』の今後の方向性にも大いにかかわってくると考えています。たくさんの方に楽しんでいただけることを願っています!
伊豆野 オンライントーナメントももちろんですが、キャラも今後追加されていきますし、盛り上げていけるようさまざまな施策を考えています。発売後もこのソフトがどうなっていくのか、期待していただければと思います!
※本インタビューは2018年6月のソフト発売直前に行われたものです。その後、更新データによりキャラクター(ゲッソー、ノコノコ、ディディーコング、キャサリン、パタパタ、ボスパックン、ヘイホー、チコ、ブンブン、ポリーン、カメック、カロン、ファイアパックン、ほねクッパ)などの追加や各種調整がされていますので、詳しくは公式サイトをご覧ください。
※更新データのダウンロードにはインターネットに接続する必要があります。
マリオテニス エース
対応機種:Nintendo Switch
発売日:2018年6月22日
希望小売価格:パッケージ版、ダウンロード版ともに6,578円(税込)
▶︎公式サイト
※オンラインプレイのご利用には「Nintendo Switch Online」への加入が必要です(有料)
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