『ドラゴンクエストXI』3DS版開発スタッフインタビュー 新世代スタッフが挑戦した国民的RPGに懸ける思い(2017年9月号より)
国民的RPG最新作『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(以下『DQXI』)のニンテンドー3DS版開発スタッフにインタビュー! 制作秘話をお届けします。
(ニンテンドードリーム 2017年9月号より)
<プロフィール(上の写真左から)>
横田賢人さん
3DS版『DQXI』のプロデューサー。『DQ』には『DQⅨ』から携わり、その後シリーズの広報として『DQⅩ』『DQモンスターズ テリーのワンダーランド3D』など、数多くの『DQ』タイトルを担当。今作で初めてプロデューサーとなる。好きなモンスターは『DQⅥ』の頃からキラーマシン2。
内川毅さん
3DS版&PS4版の総合ディレクター。『DQⅨ』からシナリオアシスタントとして『DQ』シリーズの開発に参加し、『DQⅩ』『DQモンスターズ ジョーカー2』からモンスターズシリーズでシナリオやバトルを担当。好きなモンスターはトロルと…フロッガー!
齊藤陽介さん
『DQⅩ』やニコニコ生放送DQXTVでは「出たがりおじさん」の愛称で親しまれている名物プロデューサー。『DQXI』では3DS版&PS4版の総合プロデューサーを担当。初めて手掛けた『DQ』シリーズはSFC版『DQⅥ』のバランス調整。好きなモンスターはキラーマシン!
5年ぶりの本編最新作『DQXI』ついに完成
―― マスターアップを終え、発売日を待つばかりとなった現在の率直な気持ちをお聞かせください。
横田 期待はもちろん大きいのですが、『DQXI』で初めてプロデューサーを担当しまして、この立場で発売日を迎えるのが初めてでして。あとは発売を待つばかりですが、この期間ってお客さんの温度感やネットの評判を見たりして、楽しみでもあり、漠然とした不安もありますね。ユーザーさんが楽しんでくれるかとか、うまくいくかなとか。
齊藤 『DQ』の新作を待っているお客さんって、『DQ』しかゲームは買いませんっていう方が、もしかしたらいると思うんですよ。あらためて私たちがいうのもおかしな話ですが、カウントダウンカーニバルで全国を回ることで、国民的RPGというところを目の当たりにしました。お子様からお年寄りの方まで、発売日を楽しみに待っていただけているんだなぁという気持ちが高まりましたね。
内川 僕は前代未聞の試みだと思っている、全く異なるプラットフォームで2本同時に発売するということが、どう受け入れられるのか…素直に発売後のお客さんの反応が楽しみです。
齊藤 怖くもある?
内川 うーん、怖くはないですね。2機種で発売されることが、良い方向に転がっていくと信じています。
―― 開発はどのように進めていったのでしょうか?
内川 まずPS4版から作り出したのですが、3DS版も制作するというのは最初から構想がありました。本格的にこれならいけるなと思ったのは、2Dモードと3Dモードの連動のアイデアが出た時ですね。作ろうと開発側から言ったときに、堀井(雄二さん・ゲームデザイン&シナリオ担当)さんが「できるならやってみようか!」というところから3DS版の開発が始まりました。
齊藤 PS4版を先行で作っていたというのは、正確にはゲームエンジンのUnreal Engine 4を使った技術検証ですね。
↑3DS版は2Dと3Dを同時に作り、さらにこれとは別にPS4版も並行で制作
―― そういうことだったのですね。では続いて『DQⅠ』のものを反転したロゴデザインにした経緯について教えてください。
内川 ロゴは堀井さんが最初に掲げた「新しい原点」というテーマをもとに、その想いを込めてデザインしました。原点回帰しつつ、昔のものを大事にしながらも、まったく新しいものを作りたいという思いの表れです。あとは、世界観的にも、ちょっと意味がありますし、ドラゴンが振り返っているのは…。
齊藤 過ぎ去りし時を求めて!
内川 そうなんです。齊藤さん、どうしても言いたかったんですね(笑)。
一同 (笑)
齊藤 デザインについては全然もめなかったよね。
内川 それはやっぱり堀井さんの想いが素直に出たのと、開発スタッフ的にもステキだなと思って、バッチリはまったからだと思いますね。
―― 『DQXI』で実現したかったことはどんなことでしょう?
齊藤 やっぱり30周年の「集大成」だと思うんですよ。結果的に30周年から2か月こぼれてしまったのですが、『DQXI』にとってはいい2か月だったと思います。最後の最後で調整することでよくなったところはいっぱいありました。30周年の節目として、やりたいことをちゃんと形にできたのではないでしょうか。内川やほかのスタッフも含めて、頑張ってくれた部分も大きいですね。ただ、古きよきものを集めた集大成ではなく、そこにプラスして、3DSとPS4の2機種同時開発という新しさや、ゲーム内にちりばめられた新しさなど、ぜひ集大成プラス新しい要素として見てもらいたいですね。
『DQXI』のキャラクターが出来るまでの過程
―― キャラクターデザイン担当の鳥山明先生とどのようにしてキャラクターを作っていったんですか?
内川 キャラクターのデザインを発注する際は、鳥山先生に弊社に来てもらい、どういうコンセプトでキャラクターを描いてほしいかを説明します。個人的には、鳥山先生に会うのが初めてだったので…、すごく緊張しました。でも、鳥山先生の気さくな人柄のおかげで、話し合いは順調に進みましたし、休憩中にも、たくさん雑談してくれました。あの憧れの鳥山先生とお話しできるなんて…それだけで、素晴らしい思い出です(笑)。
横田 鳥山先生は話しやすい人でしたね。
内川 あと、こだわりがすごくて。細かい部分をすごく気にする方ですね。例えば装備の剣の鞘はどういう風にしたほうがいいとか。
―― 主人公などキャラクターデザインはどのように決めていったんですか?
齊藤 設定をテキストで用意し、あえてふわっとした状態でお願いします。あとは鳥山先生に渡してお任せしていますね。
―― ちなみに、みなさんの好きなキャラクターは誰ですか?
齊藤 マルティナ!(即答)
一同 (笑)
内川 僕はシルビアですね。堀井さんからキャラのイメージを聞かされた時、一瞬焦りましたが、話を詰めてく内に、これは『DQXI』の名物キャラになるぞと思って、俄然やる気になりました。
齊藤 今までにいないタイプだもんね。
内川 そうなんです。だから、いろんな人に、シルビアってどういう人なの? って聞かれて(笑)。間違いがないよう、何度も何度も説明していたので、気がつけば、一番思い入れがあるキャラになってましたね。
横田 僕はカミュですね。これは見た目の話になっちゃうのですが、鳥山先生に描いてもらった際、最初と今で雰囲気がガラッと変わりました。その時、僕がこだわったところもあって、見た目や髪の毛をもうちょっと変えてほしいと鳥山先生にお願いさせていただいて、現在の姿になりました。主人公との関係は、一番最初に仲間になる兄貴分で、長く行動をともにするキャラですので、こだわったというのもあります。あと、「ドラゴンボール」のサイヤ人みたいなツンツン感がすごくうれしくて(笑)。
内川 カミュって一番鳥山明感がありますよね(笑)。
横田 そうそう。それで今のように描いてもらったんです。かっこよくて、とても好きです!
齊藤 主人公は真ん中分けですしね。
横田 その代わり、毛量が多くてギザギザしているこの髪型をポリゴンで作るのはたいへんでした。自分で自分の首を絞めてしまいましたね(苦笑)。
齊藤 堀井さんはベロニカが一番好きって言ってましたね。
―― セクシーなお姉さんキャラがお好きな印象があったので…意外ですね(笑)。
内川 それは今回齊藤が担当ですからね!
齊藤 わからないよ? ベロニカも実はセクシーかもしれないよ?(笑)
一同 (笑)
内川 群像劇として、まずは、どういうキャラクターが魅力的かを堀井さんと決めて、そこから「こういうことが起きると面白いよね」という感じで話の詳細を詰めていきました。『DQXI』はキャラクターの魅力を引き立てるストーリーになっているので、感情移入してプレイしてくれるとうれしいなと思います。
仲間たちの思い出を深く残すための工夫
―― 3DS版『DQⅦ』や『DQⅧ』では職業や装備に応じて見た目が変わりましたが、『DQXI』ではどうなっているのでしょうか?
内川 基本的に変わりませんが、一部変わるものもあります。過去作で言うと『DQⅧ』に近いイメージですね。全身の見た目が変わってしまうと、キャラクター性っていうのがわからなくなってしまうんです。例えば、カミュがもともとどんな格好や髪型だったのか、プレイヤーの記憶から薄れていって、カミュの思い出が共有できなくなる。そうなるのが一番怖かったので、常に見た目が変わるのは避けました。ただ、『DQⅧ』のゼシカに見た目が変わる服装があったのは、すごく楽しかったし、あのくらいであれば、味付けの範疇かなと感じたので、落としどころとして、そちらを採用させていただきました。
―― 『DQⅤ』以降、モンスターが仲間になったり一緒に戦ったりするのが定番になりましたが今回は?
内川 今回は、仲間との冒険を大事にしていますのでありません。モンスターを仲間にしたり、モンスター主体のシステムをゲームの中に入れることは面白いとは思いますが、『DQXI』で入れるとコンセプトと作品性がぶれてしまうので、今回はあえて外しました。
齊藤 その代わり、モンスターに乗って移動することは出来るようになっていますよ。
3DS版2Dと3D、PS4版前代未聞の同時開発
―― 3DS版とPS4版は異なる開発会社がそれぞれ開発を担当していますが、どのように制作進行していったんですか?
内川 まずはPS4版の開発会社のオルカさんと先行して企画や開発を進め、そこで決めたデータや仕様を3DS版開発会社のトイロジックさんに共有していきました。『DQXI』の開発は情報共有という部分で、たいへんな思いをしましたね(苦笑)。
―― どうしていったんですか?
横田 できるだけ情報共有を早く正確に行うために、3DS版のトイロジックさんとPS4版のオルカさんが直接連絡できる体制を作りました。そして3DS版の開発会社でPS4版のROMを、PS4版の開発会社で3DS版を、最新の状態でプレイできる環境を作り、常にキャッチアップできるようにしました。
―― それをトイロジックさんとオルカさんが、それぞれの機種に反映していくと。
内川 互いの実装状況を管理する専門のスタッフもいました。過去に例がない開発体制で、手探りな部分が最初はありましたが…後半は軌道に乗っていきました。
齊藤 オルカさんとトイロジックさんのスタッフに、それぞれ『DQⅩ』の開発チームにいた経験がある人がいたことも大きいですね。あとは3DS版とPS4版で全部を全く同じに作るのはさすがに無理ですので、あるところから線を引いて「それぞれでちゃんと最適な形にしなさい」というふうにしました。それでも最後の最後までなるべく両機種でそろえられるように粘って調整していきました。
内川 3DS版とPS4版、『DQXI』として、どこまでそろえるべきかというところが肝になるので、最後のほうは僕がそれぞれの開発会社さんに足しげく通って、細かく指示を出していきました。
↑3DS版の3Dモードと2Dモード、PS4版でそれぞれ見た目の印象がかなり違う。イベントシーン自体は後で自由に見直すことが可能だ
―― ちなみに、携帯機の3DS版と据置機のPS4版で、音の違いなどはあるんですか?
内川 基本的にどちらも一緒です。ですが3DS版の3Dモードと2Dモードでは音源をちょっと変えているものもあって、30年の音の歴史を感じられるようになっているんです。持ち運べる3DS版は、電車の中で音を消してプレイする人も多いかなと思うのですが、『DQXI』に関してはヘッドホンを装着してプレイすることをオススメします!
横田 そうそう、SEと言われる効果音については、3DS版は完全に3DS版用として作りましたし、しかも2Dと3Dでもかなり違いますね。これは音を作っているスタッフのこだわりで、やっぱり見た目にあわせて効果音を変えることにこだわってやってましたね。最初の構想では、一部の音だけ2Dモード用に変えようかなくらいに思っていたのですが、最終的にはほぼすべて2Dモード専用に作りなおしました。過去作にはない、新しいSEもあったりします。
内川 あと、『DQXI』は、すぎやまこういち先生渾身の新曲も多いので、これを聴かずにプレイするのはもったいないかなと思います。ぜひ音楽も一緒に楽しんでほしいですね。
マチュピチュの空気感が世界観構築のヒントに
―― 数年前に堀井さんがマチュピチュに取材を兼ねて行ったそうですが、みなさんは行かれたんですか?
内川 この3人の中では僕だけ行きましたね。
齊藤 お土産はもらった記憶があります!(笑)
↑堀井さんがツイートしていた取材旅行の様子
―― 実際に感じたことなどが、ゲームにも表れているんですね?
内川 (主人公が暮らしている冒頭の村)イシの村や主人公が挑む試練、デルカダール地方など、空気感がイメージ的に反映されていますね。ほかにも、ナスカの地上絵などを見てきました。当時の記録写真や遺跡文明の資料から、実際のゲームの内容やアートの方向性が決まったものも少なくはありません。実りある取材旅行だったと思っています。
―― 以前、ニンドリ20周年スペシャル対談で堀井さんに登場していただいた際、「2Dと3Dで動いている時の感覚が違うので大変」とうかがっていたのですが、その後どのように調整していったのでしょうか?
内川 これはもう、素直にマップをあわせていきました。2Dモードの1歩と3Dモードの1歩は移動速度が違うので、まずそれを計算しました。同時に動いた時の見栄えを含め、これだ! と言うのはないので、それぞれ作って微調整をしていきました。
横田 開発初期の頃にダンジョンを作っていた時は、まずは3Dで作って、2Dだとどれぐらいの広さや形状であるべきかを、3Dでダンジョンを歩いた時の歩数などを基に計算していました。
↑3Dモードは高低差もしっかり表現しているので、単純な2Dでの再現は難しい
齊藤 ただ素直に作っていくと、2Dのマップがとても退屈な広さに見えてしまうんですよ。あとは建物の扉の位置ですね。3Dモードだったら横から入れるけど、2Dモードでそんな家ばかり作ってしまったら、上から見たら扉の場所が全然わからないですし。屋根をとっぱらったり、手前から扉を見えるようにしないといけませんからね。
内川 特に、冒険の序盤は上画面に3D、下画面に2Dを連動して遊べるようにしているので、そこはとても気を遣いました。
―― 2Dと言えば、2Dモードにしか登場しない「かくれスポット」がありますが、3Dモードではどうなっているのでしょうか?
内川 ここはフォローしておいた方がいいですね。「かくれスポット」は3Dモードにはないんですよ。
―― そこでしか手に入らないアイテムはどうなっちゃうのでしょうか?
内川 2Dモードではフィールドの視野が広いので、3Dと同じ要領で置くと素材が落ちている「キラキラ」だらけになってしまうんですよ。だからと言って、2Dで手に入る素材を減らすのはないですよね。そういった経緯があって、「かくれスポット」という専用の詳細のマップを用意することで、問題を解決したのが「かくれスポット」の意図です。
横田 探す楽しみを作る、という思想から生まれた場所です。ただ単純に2Dモードで同じ場所に置くのも面白くないので、それをいかに面白くするかを堀井さんと一緒に考えて、こういう形になりました。
今の時代にあわせた「しばりプレイ」の提案
―― 『DQ』シリーズ初の新システム「しばりプレイ」を導入した狙いは?
内川 これは堀井さんのこだわりですね。
齊藤 堀井さんはサプライズが大好きですから(笑)。「買い物できない」「戦闘から逃げられない」「防具を装備できない」「恥ずかしい呪いに掛かる」の4つですね。
内川 3つのしばりはプレイヤーが「これをしないぞ」と決めればできることなのですが、「恥ずかしい呪い」だけはシステム側から用意をしないとできない遊びです。どんな内容かと言うと、「人と話す時に恥ずかしい呪いが掛かっていて話せない」と「戦闘中に突然恥ずかしい呪いに掛かって動けなくなる」ですね。
横田 純粋なしばりプレイのしばりとちょっと違って、新鮮な感じで楽しめると思います。
内川 テキストもぜひ見てもらいたいですね(笑)。最近はYouTubeやニコニコ動画などで実況プレイが流行っていますので、システム側で「しばりプレイ中」であることを表示するのは、そういうところでアピールできますし、わかりやすいかなと。あとは単純にプレイヤーの達成感でしょうか。たぶん、堀井さんの中で難易度があって、「戦闘から逃げられない」だったらやれるかなとか、段階を刻んでいるのかなと思います。簡単なものから、謎の「恥ずかしい呪いに掛かる」みたいなものまで。好きなように冒険に味付けができるので、実際にやってみると結構面白いですよ。
―― ご褒美要素はあるんですか?
内川 特に何もありません。やっぱり称号やトロフィーなどがあると、やらなくてはいけないものになりますから。そういう立ち位置ではなく、完全に自己満足のシステムになっています。あとは、すれちがい通信でプロフィールを交換できるのですが、そこでどのしばりプレイに挑戦しているのかはわかります。その中で達成していたら、印が付きます。
横田 すれちがい通信でプロフィールを交換するなら、やっぱり自慢したい人もいると思うので、「達成した人は見せられるようにした方がいいんじゃないか」という堀井さんのご意見がありました。
内川 ドヤ顏ができますよね(笑)。あくまで人と人のコミュニケーションツールとして対応している感じになっています。
キャンプシステムが物語をより深める
―― フィールド上でキャンプが可能になったのにビックリしました。
内川 今回のストーリーが「追われる勇者」なので、町の中で、のんびり宿をとったりするのが、あまりテーマ的にあっていなかったんです。それから、冒険の途中に中継地点があるとホッとしますよね。昔の『DQ』では、ものすごく準備してからダンジョンに向かい、死に物狂いで冒険していくじゃないですか?
―― 昔は中断セーブもありませんでしたし、なおさらですね。
内川 それはそれで面白いのですが、ちょっと時代的にあわなくて。行く先々で休憩ができる、冒険の拠点が欲しかったんです。あと、『DQXI』では、仲間と一緒に冒険している感じを強く打ち出したかったので、そういったところから今回はキャンプの仕様を採用しました。過去作で言えば、『DQⅥ』のオープニングでもそういう雰囲気がありましたしね。
横田 キャンプに絡めた話と言えば、最初の頃は料理システムの案もありました。素材を集めて、食べ物が作れて、それがアイテムになるという内容だったのですが、途中でなくなっちゃいましたね。
―― そういえば、PS4/Xbox One/PC『ファイナルファンタジーXV』(以下『FFXV』)にもキャンプシステムがありましたよね。何か意識したりしたことはあったのでしょうか?
内川 開発中は社内で進捗報告会というのがあって、『FFXV』にキャンプがあるのは、その時に発覚したんですよ。スクエニで謎のキャンプブーム(笑)。
横田 えっ、『FFXV』にもキャンプがあるんだ! ってみんなで騒然となりましたね(笑)。
内川 まあ、スクウェアとエニックスも合併したし、問題ないかって。今の仕様のまま行くことにしました(笑)。
一同 (笑)
↑PS4/Xbox One/PC版『ファイナルファンタジーXV』(左)のキャンプシーン。現在は『ファイナルファンタジーXV ポケットエディションHD』(右)がNintendo Switchでも遊べる
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戦闘回数のバランスは2Dモードをメインに
―― 2Dモードと3Dモードで戦闘回数自体に差が出てしまいますが、どう調整していったんですか?
内川 そこに関しては、あまり心配していませんでした。どちらかというと2Dモードのバランスに特に気を遣いましたね。2Dモードは強制的に敵とエンカウントする仕様なので、遭遇率などを見誤ると、理不尽に敵が強かったり、レベルがボスに到達するまでに上がっていなかったりと、問題が起きてしまいます。そうならないよう、過去作を参考に、まずは2Dモードのバランスを決めて、それを3Dモードに反映させました。3Dモードのシンボルエンカウントは、自分で好きなように戦ったり逃げたりできるので、プレイヤーが遊びの一環として難易度を調整できるんです。そこが、3Dモードのいいところかなと。実際にやってみると、遊びやすいバランスになっていると思いますよ。
横田 プレイヤーによって戦闘回数が全然違う3Dのエンカウントに無理やり2Dがあわせようとするのではなくて、むしろ2Dのエンカウント率は従来の感覚を重視しています。あくまで2Dモード単体で遊んだときに、面白くなるようにと試行錯誤しました。
内川 堀井さんからも「ちょっと敵と出遭いすぎだね」とか意見をもらったらすぐ反映しました。
横田 なので、2Dは敵との戦闘は任意で避けられないけど移動距離が短い、3Dモードは2Dモードより移動距離は長いけど敵を避けることができる。その違いをユーザーに遊んで比べてもらい、選んでほしいと思っています。
―― 戦闘にサイドアタックなどが導入された経緯を教えてください。
横田 実は戦闘の有利不利にはそんなに影響がなくて、どちらかというと見た目の楽しさを重視して考えました。モンスターに遭遇したとき、たまにそういうシーンがあったら面白いよねって。実際、モンスターと遭遇したら、きれいに対面に並んで戦うわけではありませんし(笑)。
内川 あくまでも戦闘のバリエーションのひとつとして、単純に「先制攻撃されやすいから囲まれている」といった臨場感を出したくて入れました。
↑いつモンスターと遭遇するかわからないドキドキ感は2Dモードならでは。3Dモードでは戦闘前に敵に攻撃すると少しダメージを与えた状態で戦いが始まる
新システム「ゾーン」で戦闘バリエーションがUP
―― テンションに代わる戦闘の新システム「ゾーン」は、戦闘終了後もしばらく継続するのですね。
内川 「せっかくゾーンに入ったのに、1回の戦闘で切れてしまったら寒いよね」って言うところから継続することにしました。継続すること自体が『DQ』シリーズでも新しいですし。もちろん、ゾーンを溜めまくってボスのところに行くのがセオリーになるんじゃないかという懸念は開発中にもありましたが、実際にやってみたらそんなことはありませんでした。
―― それがバランスに影響を与えませんでしたか?
内川 バランスブレイカーになるような感じにはなっていません。ボスと戦っている最中にもゾーンは入りますしね。バランス的にはいい感じに落とし込めたと思います。
これまでのノウハウを詰め込んだすれちがい通信
―― 3DS版だけで楽しめる「すれちがい通信」は、すれちがいが少ない地域に住んでいる人でも楽しく遊べますか?
内川 実は地域格差をフォローするために「疑似すれちがい」と呼んでいる機能を搭載しています。すれちがわない時間を内部的に計算していまして、一定の時間が経つと疑似的にすれちがえる仕組みになっています。それに加え、フィールドにもヨッチ族が点在していますので、こまめに足を運んでもらえればそれだけでも十分に楽しめるバランスになっていますよ。
横田 ちなみにフィールドにも結構な数のヨッチ族がいますので、それを集めていけばすれちがわなくても十分に楽しめるように設計しています。
見た目がリニューアルしたスキルシステム
―― スキルシステムがパネル形式になり、プレイヤーによってキャラクターの育て方が変化しそうですね。
内川 『DQⅧ』からスキルシステムが登場したのですが、新しい試みとして今回は視覚化したいと思ったんです。今までのような一直線のスキル獲得ではなく、いろんなスキルの取り方ができるようになりました。ほかの人とプレイ環境が変わるので、友達とどういう風にスキルをとっていったのかなど情報交換が盛り上がるかなと。考える楽しみを含め、意図して変えました。
横田 「今回のスキルシステムを導入したことで、プレイヤーのスタイルが出るのは出来たら面白いよね」って堀井さんと話して、開発の一番初期の頃からあったシステムです。
内川 実は、スキルを視覚化したことには、もうひとつ意味があって…スキルパネルは、お話にも絡んでいるんです。それが、どういうことなのかは、やってみてのお楽しみということで!
―― ちなみに、パネルは全部埋めることはできるんですか?
内川 できます(きっぱり)。レベルを99まで上げて、あと一押し工夫してもらえれば可能です。
齊藤 スキルのたね?
内川 なんで言っちゃうんですか(笑)。その通りですよ。
『DQⅩ』から続いて登場するシステム
―― 『DQⅩ』に続いて『DQXI』でもジャンプができるんですね。
内川 これは完全な手遊びですね。『DQⅩ』でジャンプができたのが、とっても楽しかったんです(笑)。
横田 移動しているときに意味がなくてもボタンを押せて、ポーンという軽い音がしてジャンプができることが、まっすぐ歩いているだけでもちょっとしたアクセントになるんですよ。手遊びと言ってしまえばそれまでですが、「その行為自体が楽しいよね」と堀井さんもおっしゃっていて。僕らもそれに同意だったので、『DQXI』でもジャンプを採用しました。
―― 「鍛冶職人システム」が『DQXI』にも採用されましたが、システムの発案者である『DQⅩ』ディレクターの齋藤力さんは何か言ってました?
齊藤 「やった甲斐があった!」と喜んでいましたよ。採用したのは、堀井さんから「鍛冶を入れようよ」という話を頂きまして。でも、「鍛冶」「錬金」「裁縫」「木工」など、全部はめちゃめちゃ大変だから!
一同 (笑)
齊藤 ですから、何か1つにして「ふしぎな鍛冶」という名前にすることによって、ゲームで作れるものを集約してできるようにしました。堀井さんから「『DQⅩ』を遊んでいないユーザーが『DQXI』を遊んでもらって、『DQⅩ』でこういうものがあるんですよというのを知ってもらいたい」って言ってもらえたのがうれしかったですね。
―― 最後に「ぱふぱふ」のことを聞かせてください。今回かなりの力を入れているようですが…!
内川 『DQ』と言えば「ぱふぱふ」というのは初期の段階からあったのですが、当初は、あるシナリオの一部のおまけイベントくらいにしか考えてなかったんです。そんな軽い気持ちで、新ネタを堀井さんにお見せしたら「内川くん、ぱふぱふは、もっとイケるよ!」って言われてしまって(苦笑)。
一同 (笑)
内川 それを聞いて、これは本気でやらないといけないなと心を入れ替えたんです(笑)。さっそく、ぱふぱふ担当大臣をスタッフの中から1人アサインして、過去作のぱふぱふを全部研究し、そのオマージュとして、『DQXI』に入れました。そして最初に堀井さんからダメ出しされた新しいぱふぱふは、その後、堀井さんと何度もアイデア出しを繰り返して完成させました。歴史ある11番目のぱふぱふが堀井さんに認められ、今はホッとしています(笑)。
横田 新作ぱふぱふもあるし、過去のオマージュもあると。『DQXI』はぱふぱふ最高作品ですね(笑)。
『DQXI』を楽しみに待っている読者へメッセージ
齊藤 私の中ではゲームは1日3~4時間だと思っています(笑)。ちょっと多いですが、あまり駆け抜けないでほしいかなって。早く結末が見たい人は多いと思いますが、いろんな遊びがありますので、ゆっくり、じっくり。時には足を止めて仲間との会話を楽しんでみてください。せっかく30周年を記念した『DQXI』というタイトルが出るので。駆け抜けるならもう1回遊んでもらえたらと。ぜひじっくり遊んでもらえたらと思います。
内川 3DS版は3Dモードと2Dモードが入っていて、2つのゲームが入っていると言っても過言ではありません。お話にも、かなり力を入れていますので、最初は自分の好きなモードで遊んで、クリアしたら、もうひとつのモードで最初から…と、何度もストーリーを楽しんでもらえると幸いです。こだわりのエンディングは必見ですので、ぜひ最後まで遊んでもらいたいですね!
横田 3DS版は頭身が低いので、どちらかと言うとデザインは全体的にリアルではなくデフォルメに寄っています。例えばキャラクターの表情や動きなど、表現もちょっぴり大げさにして、「遊び心や楽しさ」を重視して作りました。すれちがい通信もですね。本編のお話をしっかり体験してもらうことも大事ですが、お話以外にも面白い要素を多く盛り込んでいるので、外出先でも自分の部屋でも、3Dでも2Dでも、自分なりのスタイルで気軽に遊んで楽しんでもらえたらと思います。
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