『ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王』インタビュー(前編)(2017年7月号より)
お客さんからの声も届き始めた2017年4月某日。開発元であるインテリジェントシステムズにお邪魔してお話を聞いてきました。
後編はこちら
※記事は修正している箇所もありますが、基本は掲載時と同じものになります。ネタバレも含んでいます。
本作の制作に掛けた想いと開発経緯
プロデューサー/山上 仁志
任天堂所属。シリーズプロデューサー。入社2年目のときにオリジナルである『ファイアーエムブレム 外伝』のデバッグを担当し、本作で25年ぶりの邂逅を果たす。好きなキャラクターはセリカ。「昔と別人だなぁとか思いながら、amiiboも買いました!」。
ディレクター/中西 健太
任天堂所属。亡くなった父の影響でシリーズを遊び始めた。シリーズには『覚醒』のデバッグにかかわったのち、『if』でサブディレクターとしてかかわる。TCG『サイファ』にもメインで携わり、立ち上げた企画者のひとり。好きなキャラクターはジェニー。「シスターなのに前線で大活躍するので」。
▲中西さんの胸には手づくりのアルムとセリカのアイロンビーズが
プロデューサー/樋口 雅大
インテリジェントシステムズ所属。『ファイアーエムブレムif』に続きプロデュースを務める。シリーズの開発には『聖戦の系譜』から本格的に参加。好きなキャラクターは女性ならペガサス三姉妹。男性ならセーバー。「渋めのおじさんキャラが好きなので」。
ディレクター/草木原 俊行
インテリジェントシステムズ所属。シリーズには『暁の女神』の後に開発を行っていた幻のWii版『ファイアーエムブレム』のディレクターから参加し、『覚醒』『if』でのアートディレクターを経て、再びディレクターとなる。好きなキャラクターは男性はクレーベ、女性はパオラ。「おっとりしたお姉さん系が好きなんです」。
発売日を迎えてホッとしている理由
―― すごく評価が高いですが、発売された現在の心境を教えてください。
樋口 『エコーズ』に限らずなんですけど、ようやく発売できたというところでホッとしています。つくっているとクオリティをどんどん上げたくなって、山上さんに「開発期間を延長してください」と頭を下げたり、発売日が決まった後もなかなか開発が収束せず、焦りを感じた時期もありましたから。
中西 『覚醒』『if』などに比べると短い開発期間だったので、間に合って良かったという意味でもホッとしています。
草木原 『覚醒』はチーム一丸で「これが最後かもしれない」と、これでもかと詰め込んでつくったんですね。そして『if』ではそれよりもっと詰め込みました。で、次はどういうものをつくったら、これらより見劣りしないだろうかと悩んだんです。『エコーズ』は我々もかなりの制限の中でつくっていましたし、最近のシリーズを遊んでいただいた方にも受け入れていただけるかは本当に不安だったんですけど、反応を見ていると楽しんでいただけているようで、まずはホッとしています。
中西 今回はそういった『覚醒』や『if』で新規にシリーズに触れた新しいお客さんと、昔『外伝』を遊んでいただいた古くからのお客さんの双方に楽しんでいただきたいと思ってつくったんです。ですので、発売後の反応を見ていると、原作を知るお客さんも「これちゃんと『外伝』だ」と言ってくださっていますし、新しいお客さんも「システムが独特でおもしろい」と言っていただけて、どちらも楽しんでくださっているのがうれしいです。
―― シリーズが『覚醒』と『if』で爆発的にユーザー層を拡大させたことにより、いわゆる古参ユーザーと新規ユーザーの好みが分かれてしまった部分があるのは事実ですよね。それが本作ではみんながひとつにまとまっていく様子が見られて、こんなことってあるんだなと思いました。
中西 新しく『覚醒』や『if』で『FE』に入ってきたお客さんは、例えばキャラクターの掛け合いやキャラクター同士の関係性が『FE』のおもしろさだと思って遊んでくださっている方が多いと思うんです。でも、それは昔の『FE』でも変わらない部分なんですよね。昔のおもしろい部分を今のお客さんにも伝わるように表現できたら、両方のお客さんに遊んでいただけるものになると思っていたので、それが実現できたんじゃないかと思っています。
―― みなさん、口々にホッとしているとおっしゃっていますが、今の状況は本当にそんな感じなんですね。
草木原 もちろん、厳しい意見も拝見していますが、喜んでいただけている声のほうが大きいのでそこは良かったなと思っています。
―― 山上さんはいかがでしょうか?
山上 プロデューサー的な立場で言うと、絵は旬な方に描いていただいているし、ゲームシステムも過去作を取り扱いながら、最近入った方々にも少し変わった『FE』という意味で、興味をもってもらえるものになっている。さらに、ここ3作でインテリジェントシステムズ(以下イズ)さんのゲームづくりは飛躍的にお客さんとマッチングしたので、バランスを考えたりする部分もなんの問題もない。こういう、どう考えてもうまくいきそうなプロジェクトって……ビジネス的に失敗するんです。
一同 (笑)
山上 ジンクスみたいなものがあるんです。だから僕は、このゲームはどこかに穴があるだろうってことをずっと考えていたんです。これまでもリメイクは何回かやっていますけど、それがすべていい数字を取れたわけではないですから。そのなかで、この出足の反応を見て「あー良かった」って、ホッとしました。
―― すごい深いホッとした、ですね。
山上 僕はここで結果を出して、次もつくらせてもらえるようにする役目ですからね。前作で3DSは終わろうかなと思っていた一昨年の初夏のころに、「まだやり残したことがある」とか「リメイクなら期間的にも短くできる」って言われて、「Nintendo Switch向けの新作もあるんだけど」とか思いながらも、「9月までだったら」ってOKしたんです。でも結局、開発が半年も延びちゃって。そういったいろんなことがあったプロジェクトなんですけど、すべて丸くおさめて発売日を無事に迎えられ、好調に広がってくれるのをみたら「あー良かった」ってなるんですよ。
樋口 延びたことに伴い、山上さんから「簡体字版」や「繁体字版」のご提案をいただいて組み込めましたので、より広いお客さんに触れていただけるようになったのではないかなと期待もしています。新しい組み込みを行いつつ、本作は『外伝』当時の90年代テイストも含め、オリジナルを大切に考えてつくってきたので、発売が楽しみでもありました。
山上 批判もありますけど、批判が出ていいんです。その批判も、世に出ないことにはわからないことなんですから。草木原さんはじめ、世に出なかったものをつくることの辛さも知っていますから、世に出るということがまずうれしいし、そしてそれがお客さんに届くということがうれしいので、「あー良かった」ってこの時点で思っちゃうんです。
▲もととなった『外伝』よりアルム。25年の時を経て、生まれ変わった
3DSで3作目だからこそ実現できたさまざまな取り組み
―― 「まだやり残したことがある」というお話ですが、『if』は本当に盛り盛りだったのに、何をやり残していたんですか?
山上 基本的な考え方として、ひとつのハードで制作回数を重ねると技術が進化して、昔はできなかったことができるようになっていくんです。それで『覚醒』であきらめていたことが、『if』でできるようになった。そうなると当然『if』をつくっているときも技術は進化していきますから、終盤には「これやりたい、でも入れられない」みたいなことがあるわけです。で、僕のところに「もう一作やりたい」という話がきたんです。
―― 具体的にはどういった部分だったんですか?
草木原 ダンジョンなどがそうですね。『if』のマイキャッスルは途中までは3Dで歩き回れたんですが、いざ歩き回ってみると粗さが目立って商品としての成立が難しかったんです。そういったところを今回、ダンジョンとして歩き回れるようにしました。
▲プレイヤーが探索することができるダンジョン。シリーズでは異質な存在
中西 実はすべてのフィールドを歩き回れるようにはつくってあるんです。戦闘シーンになるとき、キャラクターにカメラが寄っていきますよね。
―― その地形で戦闘が行われます。
中西 ということは。
―― なるほど! あの世界はすべて3Dでつくられているんですか!
中西 はい。本当はRPGのようにあの世界を歩き回ることもできたんです。ですが、あまり広げすぎても面倒になる部分もありますし、初めてのお客さんには歩くだけで新鮮な驚きをもってもらえるだろうと、あえてシンプルにダンジョンのみにしています。
草木原 ほかにも、これまでよりもキャラクターの頭身が上がっています。頭身が高い人物を自然に見せようとすると、モーションデザイナーの力量がかなりいるんですね。『覚醒』『if』の開発を経て蓄積できたノウハウもありましたので、今回は今後のSwitch版も見据えて、より標準形に近いプロポーションの人間を動かすという挑戦を行っています。
―― たしかに、アルムとマイセンのくだりといった3Dモデルの演出もカッコ良かったです。
樋口 そのモーションをつけたスタッフも今回は全部社内の人間なんですが、普通の戦闘シーンだとオンマップバトル(演出をカットしたマップ上でのバトル)があるので、バトルの映像はカットされやすいじゃないですか。
▲3Dモデルの多彩な動きも印象的な、物語のはじまりとなる演出のシーン
―― スピードアップのためにカットする人も多いですよね。
樋口 もともと『覚醒』のときに入ったメンバーが『if』、そして『エコーズ』とやっていくなかで、どんどん良くしていこうという意識が強くて、今回はその戦闘シーンもテンポアップすることでカットされないようにしたいと試行錯誤をしていきました。例えば本来だったら1回の戦闘は、攻撃、回避、攻撃の3ステップなんですけど、それを攻撃からカウンターのような2ステップにしたりとか、抜刀しながら走っていくとか、とにかくそこに留まることなく、そのままスッとバトルに入っていけるテンポの良さを重視しています。
中西 攻撃を避けるにしても横に避けたり、避けながら攻撃したりとか弾いたりなど、今までやっていないことも多用しているので、戦闘シーンもふだんよりは見ていただけているのではと思っています。
樋口 キャラクターがちゃんと生きているんだなというふうに思ってもらえたらなと。で、バトル班としてはリアルなかっこ良さをテーマにつくっています。『if』などではわりと超人的な動きにも対応していたんですけど、そこをちょっと抑えつつ、頭身が上がったことでの地に足をつけたモーションをつくることをこころがけています。
―― さらっと言われてますが、これってシリーズの改革になるぐらいにすごい話じゃないですか?
樋口 そうですね。それも段階を経て3DSでここまでつくってこられたからというのが大きいですね。
山上 そんなに一遍にできないですから。
一同 (笑)
▲敵の攻撃を避けつつカウンター! こうした生きている動きにも注目
今リメイクをするのなら『外伝』がいい
―― 『外伝』のリメイクにしようというのは最初から決められていたんですか?
中西 「リメイクにしよう」ということだけが決まっていた感じですね。で、『外伝』にした理由は、さきほどのダンジョンとの相性の良さもありますし、25年前のタイトルとして『暗黒竜』はあれだけリメイクをされてきたのに、『外伝』はずっと置いていかれた状態だったので、ここで新しくつくり直そうというのがありました。
―― イズさんのほうから『外伝』を提案したんですか?
樋口 そうですね。「リメイクなら『外伝』をやりたいです!」って。
山上 僕は『外伝』大嫌いだったんだけどね。
一同 (笑)
山上 当時、僕は『FE』を好きで買って遊んでいたのではなくて、デバッグとして仕事でやっていました。その思い出なんて、「難しい」とか「つらい」だけなんです。あの最後のビグルが湧いてくる面は何回やっても終わらなかったよなぁとか、本当にこんな難易度でいいのかって思いながらやっていたこととかを、『外伝』って言葉を聞くたびに思い出すわけですよ。
―― では最初は難色を示したんですか?
山上 嫌な思い出は蘇りましたよね(笑)。でも『外伝』を今風にするということには、すごく興味があったんです。アルム軍とセリカ軍という2つの軍で攻めあがるということ自体は好きだったのもありますし。だから、僕は今リメイクするなら『外伝』が非常にいい題材なんではないかと思ったんですね。さきほど話した、開発期間の短縮など、いろいろなメリットと条件もそろっていましたし、難易度さえ間違えなければ受け入れられるだろうと。
『外伝』を研究し、いきついた男女の物語と対の設定
―― では、GOサインが出たあとは、何から始めたんですか?
草木原 とにかく調査ですね。イズの中にも『外伝』当時のスタッフが残っていますので、当時のチームの雰囲気であったり、当時のディレクターが何を言っていたか、何を参考にしていたかなどをヒアリングしていきました。『外伝』は派生の小説などもいろいろ出ていたんですが、我々はどこをベースにするかを考え、やはり本編だろうということで、あまりそういった派生ものは見ずに本編の情報だけを掘り起こして本質をつかもうとしました。いったん自分たちの中で噛み砕いてから、より掘り下げていくことにしたんです。
―― 『外伝』の核は何であり、どう掘り下げようと思ったんでしょうか?
草木原 『FE』全体のテーマとしては、家族や血の物語なんですが、そのなかで『外伝』は男女の物語なんですよね。例えば2章の終わりで、アルムとセリカがものすごく理不尽な喧嘩をしますけど、あれも実は男女間でよくある感じじゃないですか。ふだんのやりとりの中で、男性は女性が怒っている理由がわりとわからなかったりしますよね。あと、アルムとセリカのように、バレンシア大陸全体が対になるものが多い世界に設定されているんです。ミラとドーマしかり、リゲルとソフィアしかり。それぞれが男性的、女性的なものの象徴になっているんです。そのなかで、アルムが力を追求していく道、セリカが愛の道、愛からアルムたちを救おうとする、ある種自己犠牲の道なんですけど、シナリオ上も対になっているんです。
▲力に溺れる存在として描かれるベルクト。しかしそれは、叔父であるルドルフの信頼を得ようともがく、哀しき姿でもある
―― 核は「男女の物語」と、「対になっている設定」であると。
草木原 掘り下げ方としては、そこにアルムと対になる者としてベルクト、セリカ側には仮面の騎士を登場させました。話を掘り下げようと思ったときに、続けて何回か同じ人物が出てきて物語を引っ張っていってくれないと盛り上がりにくいんですよね。ベルクトは力におぼれた存在としてアルムの対として描かれていて、もしもアルムがマイセンのもとで育てられず、セリカとも出会っていなかったらこうなってしまったかもしれない、という存在なんです。
中西 『外伝』は、アルムとセリカそれぞれの思いで、それぞれ平和を目指していくというドラマチックなストーリーだったので、今のお客さんにも喜んでもらえるだろうとは思っていたんです。でも、残念ながら原作の物語は説明書にしか書いていなくて、それを読まないとそのドラマチックさをあんまり感じられなかったんですね。なので、今回はキャラクターの関係性などをしっかり見せたいと思いました。フルボイスにしたのも、キャラクターが生きている感じを出して、思い入れをもってもらうためなんです。逆に言うと、システム部分は昔のユーザーにも「これぞ『外伝』」と思ってもらいたかったので、今のお客さんがプレイして「これは煩わしいな」とか、「これ理不尽だな」と思うところ以外は、なるべく残すようにしています。
―― 弓の射程や、HPを使って魔法を撃ったりとかですね。
中西 そういった『外伝』独自の部分を変えると、昔のお客さんに「『外伝』じゃない」と思われてしまいますよね。それに今のお客さんにも新鮮に感じてもらえるんじゃないかと思って残しています。だから、どこまでを煩わしいと思われるのかの線引きをしていきつつ、リメイクで変える部分を考えていきました。
―― つまり、私のソフトにレア装備が入っていないのは、理不尽だから変えていくものとして線引きされたと。
中西 (即答で)いや入ってますよ!(笑)
一同 (笑)
―― じゃあ、編集部で検証企画をやってみます!(記事はこちら)
中西 そういった線引きで迷った部分には、一部のアイテムをどうするか? という問題もありました。例えば「天使の指輪」なんて、原作だとすべての能力値がレベルアップ時に2ずつ上がる、めちゃくちゃ強力なアイテムだったんですね。なので印象に残っているアイテムとして覚えている人が結構いると思うんです。でも、このまま残すと、それを持っているとき以外はレベルアップをしたくないとか、それを手に入れるまでは成長を止めたいっていうふうにもなって、遊びが窮屈になってしまうんです。こういったものに関しては、残したいなと思いつつも、効果を変えていきました。
―― 「天使の指輪」については「さすがに変わったんだね」くらいに受け入れられてますよね。
中西 そうですよね。好意的に受け取ってくださる方々が多いので良かったって思いました。
―― でも、魔戦士からの村人ループなどは残すと。
草木原 村人をどの兵種にするのかは『外伝』でいちばんの自由度だと思っていましたし、あと忍者っぽいものが村人になるというのはすごく自然な話じゃないですか。現実の世界でも、仕事のないときの忍者は村人をしていたと思いますし。
―― それもヒアリングの結果ですか?
草木原 ええ。もともと魔戦士って「忍者にしてください」という明確な指示のもと、ああなっていたみたいです。
▲村人にクラスチェンジできる魔戦士。たしかに忍者っぽいですね
『エコーズ』を出すということ自体が新しい挑戦
―― 草木原さんは『覚醒』『if』のときはキス顔を提案したりとか、かなりシリーズの壊し屋だと言われてましたよね。
草木原 そうですね。
―― でも『外伝』をかなり忠実にリメイクしているので、今回は違ったんですね。
草木原 いや『覚醒』『if』からの『エコーズ』って、すごくシリーズの流れを壊してませんか? みんなの間で「『FE』ってこうだよね」っていうイメージが前2作で確立したところからの『エコーズ』なんで、これも壊し屋の仕事です。
―― 自分で言いますか!?
一同 (笑)
草木原 シリーズはこうだって固定化させないほうが、将来的にも動きやすいという考えもあって、やるなら今がギリギリのタイミングだなと思ったんです。『外伝』というテーマならできると思ったのもありますけどね。
―― なるほど。じゃあ樋口さんは今回、草木原さんの提案で頭を抱えることはなかったんですか?
樋口 なかったと思います。
山上 しいていえば開発が延びたことぐらいですね。
樋口 それを言われるともう。
一同 (笑)
―― キャラクター同士の結婚システムみたいなものも今回は提案しなかったんですね。
草木原 結婚も、それが当たり前になるとつまらないですよね。結婚がない『FE』というのにも触れていただけたらいいかなと思ったんです。
中西 『覚醒』から遊んだ人には、本作でなくなったという見方もできますけど、こちらからするとたまたま2作連続であったという認識なんです。あとアルムとセリカの物語である『外伝』に、結婚システムを入れるのって結構厄介ですよ。場合によってはバレンシアを統一できなくなりますから。
―― じゃあ、なんでエフィをあんなアルム大好きキャラにしたんですか!(笑)
一同 (笑)
草木原 実はもともとシナリオライターから聞いていた当初のエフィは、もう少し違ったキャラだったような気がしていたんですが、出来上がってきたらああなっていたという。でも、このキャラはこのキャラでおもしろいよねって話になりまして、いてもらうことにしたんです。
―― 物語を進めていくと、できた子であるのはわかったんですけど、シルクとの最初の支援会話のインパクトは結構強かったです(笑)。ネットでも話題になってましたよね。
草木原 すごくまっすぐなかわいい子だなと思っていますけど、たしかに最初の支援会話は強烈で、樋口もそこのテキストだけ見たときは震え上がってました。「こ、この子はヤバい」って。
樋口 あ、言った!
―― 頭抱えてるじゃないですか!
一同 (笑)
▲女性村人の新キャラクター、エフィ。アルムのことを王子様のように慕う
中西 結局、昔のキャラがそうだと「こんなの違う!」になると思うんですが、今のお客さんに向けたキャラクター性の持ち主が新キャラにいるのはアクセント的にもいいのかなと思いました。あと、女の子の村人は原作にいなかったので、華を添えるという意味でも良かったと思います。
―― なるほど。そういったキャラや物語部分については後ほど聞かせていただくとして、新しいシステムとしては、ミラの歯車が大きいですよね。
草木原 ミラの歯車は戦略シミュレーションをもっと楽しんでもらいたいという思いでつくりました。『if』でフェニックスモードを搭載したんですけど、あれは考えなくても進めてしまうので、失敗したときに、自分がどうしてやられてしまったのかを振り返る暇がないんです。ミラの歯車を使うと、この状況をどうやったら修復できるのかを自分で調べていろいろと試すことができるので、シミュレーションの本来の楽しさも感じてもらえるのではないかと思ったんです。
中西 リセットによるやり直しを簡易化したものといったらわかりやすいかもしれないです。ユニットを失ってリセットをしていた頃って、これがダメだったという試行錯誤を全部一からやっていたわけですが、その試行錯誤を一手一手でできるようになったものといいますか。
―― フェニックスモードがなくなったのもそういう意図があるんですね。
草木原 システムがどんどん複雑になっていき、すべての情報量を読み解かないと遊べない、初心者の人が見るにはあまりにも情報量が増えてしまっていたんです。それを簡単にするために生まれたのがフェニックスモードだったんですけど、もうちょっとそこを根本的に変えられないかとミラの歯車を入れました。
―― ちなみに歯車のデザインにしたのはなぜなんですか?
草木原 あれはアンティキティラ島の歯車をイメージしました。
―― オーパーツ的な?
草木原 そうです。海から引き揚げられた古代のギリシアのものですけど、古代と歯車というのが神秘的だなとモチーフにもってきました。
▲ミラの歯車。「小さな歯車」を見つければ、使用回数の上限を増やせる
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