『逆転裁判6』山﨑ディレクターと振り返る第1話「逆転の異邦人」(2016年8月号より)
『逆転裁判6』発売後、ニンテンドードリームで行われた連載を再掲載。山﨑ディレクターに『逆転6』を実際にプレイしていただきながら、細かいところまで解説してもらうというディープな内容となっています。今回は第1話「逆転の異邦人」編。ぜひ、ゲームをもう一度遊びながら、一緒に楽しんでみてください。
第2話「逆転マジックショー」編はこちら
第3話「逆転の儀式」編はこちら
・ネタバレを含んでいます。
【今回の事件】第1話「逆転の異邦人」
修行中の真宵を迎えにクライン王国にやってきたナルホドくん。ガイドのボクト・ツアーニとともに観光しているなか、秘宝「始祖の宝玉」が盗まれ、警備員が殺害される事件が起こる。さらに、その容疑でボクトが逮捕されてしまうのだった…。
タイトル画面とオープニングムービー
—— ではよろしくお願いします。まずタイトル画面から見ていきましょう。
山﨑 こういうの初めてなんでドキドキしますね。で、いきなり地味なんですけど、実はタイトル画面に背景があるのって、ナンバリングタイトルでは初なんです。
山﨑 『逆転4』までは黒バックにロゴだけという巧(舟さん。シリーズ生みの親)のこだわりもあって。僕も『逆転5』をつくったときはその流れを継いだんですが、今回は少し違う形で新しさを提示したかったので、パワーアップさせました。背景を法廷にする案もあったんですが、上下画面でひとつの絵にしたかったというのと、異国感を出したかったのでタペストリー風にしました。
—— ロゴの『6』を紫色にした理由ってあるんですか?
山﨑 江城(元秀さん。プロデューサー)が「真宵の色がいい」って言うからですね。僕は6って勾玉っぽい形なので緑を推したんですけど…ダメでした(笑)。
—— ではゲーム開始です。まずはクライン王国から始まるオープニングムービーですね。
山﨑 これ、辻褄を合わせるの大変だったんです。というのも、サイトで公開している短編アニメ「逆転裁判6 プロローグ」で、ナルホドくんがなぜクラインに行くのかがわかるんですけど、観ない人もいますよね。だから、どちらでもわかるようにするのが難しかったんです。
—— ムービーの最後にポットディーノが出てきますが、出し方についてのこだわりは?
山﨑 やっぱり犯人の出し方は気を使いますね。こいつを倒したいと思わせないといけないので、ワルそうに描くのは大事なんです。この動きはモーションキャプチャーで録ったあとに、『逆転』らしい動きにするための調整をしています。だからリアルかつ『逆転』の世界でも違和感のない動きになっていますよね。
本編開始! ボクトも登場
—— さて始まりました。プロローグアニメを観てからだと、最初はナルホドくんが観光モード全開だったことに違和感があったんですよね。
山﨑 観た人、観てない人、両方に通じるようにする問題(笑)。なので、オープニングムービーで描かれる“飛行機を降りたタイミングでかかってくる電話”の相手は真宵ちゃんで、無事を報告されたから観光モードになっているということにしました。あ、鳥もバシャバシャ撮っていますけど、前号のニンドリに書かせてもらった話はこれを意識しています(注:ニンテンドードリーム2016年7月号において、山﨑さん書き下ろしのオリジナルショートストーリーを掲載)。本編とつながってくれればいいなって仕込んで書かせてもらったんです。
—— そうだと思ってました(笑)。そして、ボクト登場。さらに初「アッピラッケー」ですね。
山﨑 アッピラッケーは書きながら思いついた挨拶そのまんまです。
—— ということは、山﨑さんがこのへんを書いているんですか?
山﨑 そうです。このあたりは僕が書いています。ほかの話も同時進行で作業を進めてはいたんですけど、やはり第1話がすべての指針になりますので。
—— クライン王国からスタートさせるのは、最初から決めていたんですか?
山﨑 異国というインパクトもあるので、ここは最初から決めてました。これまでの第1話は法廷から始まるものだったと思いますけど、この見知らぬ国を知ってもらうために短い探偵パートのような状況を説明するものを入れました。そういえば、帽子を抱えたボクトのポーズ、かわいいんですけど、開発中にスタッフが冗談で、お金をめぐんでもらおうとしてるポーズに見えるって言い始めて。「この帽子に入れてくださーい」って、勝手にアテレコして遊んでたのが思い出されます。
—— そこからの「まがたまん」です。お皿ごと取り出してるんですよね?
山﨑 お皿ごとですね。鞄の中に入っている皿とまがたまんを一緒に手づかみで取り出しているという。鞄の中はどうなってるんでしょうね、犬も入ってますし(笑)。
—— まがたまんはどうやって生まれたんですか?
山﨑 記憶がさだかじゃないんですけど、シナリオとキャラデザインが同時に進行していたのでアイデアを出し合っていた気がしますね。だからボクトの初期のラフにはすでにまがたまんが描かれていたと思います。
—— プロローグアニメで真宵ちゃんたちも食べていますが、中に何かが入っているわけじゃないんですよね?
山﨑 うーん。アンコ的なものが入っているものもあるのか、そもそも甘いのか。どうなんでしょう(笑)。
—— きっと手作業でつくられているんでしょう。
山﨑 そうだと思いますよ。きっと細いものをねじって形をつくって蒸すんだと。だから、ものによっては勾玉の跳ね具合が違うんだと思います(笑)。で、色は勾玉の色になってます。
—— ロゴにしたかった緑ですか。
山﨑 そうなんですよー。あ、背景奥の店で蒸しているの、まがたまんですからね。
—— ちなみに通貨のダーマという単位は?
山﨑 僕が適当に書いた言葉で(笑)。円からイメージしてます。
—— まがたまんの20ダーマって、日本円ではどれぐらいのイメージなんですか?
山﨑 細かくは決めていないですが、日本とそんなに変わらないイメージです。
—— そして、イメージの真宵ちゃんがチラ登場!
山﨑 ここでは見えそうで見えない! ぎりぎりの線を狙って調整しました(笑)。
ジーイン寺院へ
—— 奥に見えるのは雲ですか?
山﨑 そうです。クライン全体が高地にある国なので、寺院はさらに高いところにある設定です。だから3話に登場する舞台は、もっと山の方にあることになります。
—— しかし、こんなに序盤なのに、実は伏線がバンバン出てますよね。
山﨑 詳しくは言えないですけどね。そういう意味でも、第1話からつくっていますけど、それより前に骨組みをつくってから制作したので、頭から伏線を張っていけたのがよかったですね。毎回第1話の制作で難しいのは、被告人を助けたいと思わせる部分なんです。さっきの国の説明じゃないですけど、第1話は探偵パートがないので、キャラ説明もあんまりできなくて。だからボクトの場合も悩んだんですけど、まずは純粋な少年であることをアピールしつつ、真宵との関係を見せてプレイヤーに愛着をもってもらえるようにしました。それで真宵への期待感を高めていただいて、真宵の登場する話へいってもらえたらなって思っていました。
—— ガイド料金は10ダーマなんですね。まがたまんより安い。
山﨑 いやいや、ひとつの説明で10ダーマなんで、そこそことってます(笑)。彼は勤労少年なんで、家族を養わないとね。
—— それにしても自分の住んでいる国を「霊媒と神秘の国」って言い切れるのはスゴイですよね。
山﨑 でもほら、ガイドブックとかだとそんなこと書くじゃないですか。だから、単純に外国の人が付けたキャッチを、クライン王国の人たちが「そうなのか」と思ったんじゃないですかね。そうすれば観光客が増えるんだというか。儀式の歌の歌詞カードも日本語が併記されているぐらいですから、観光業にはけっこう力を入れている国なんだと思いますよ(笑)。
寺院で儀式を観覧中に
—— ゲーム中のアニメでレイファ登場。公開でやっている儀式になるんですよね。
山﨑 ええ。お客さんを呼んで観光客も見に来ている設定です。
—— 毎日2回やる儀式にものすごい数のお客さんが入ってますよね。
山﨑 たぶん、リピーターもたくさんいるんじゃないかと思います(笑)。まぁ信者の方々が大半だとは思いますけどね。観光で来る方のおかげで、クライン王国の財政が何とかなっているんじゃないかなぁ(笑)。
—— ここにアニメを入れるみたいなのはあらかじめ決めていたんですか?
山﨑 入れるならここかなって。今回はリアルタイムデモもありますから、住み分ける必要はあったんですけど、やっぱりアニメに向いているシーンは数が少ないので。
—— しかし、踏み込んでくる警察の人たち。せめて儀式が終わるまで待てよと。
山﨑 (爆笑)。神聖な儀式じゃないんかと。でも逃げられては困るので!
—— で、レイファのこの顔です。
山﨑 レイファを敵ヒロインとして認識させるための顔ですよね。
山﨑 踊っているアニメシーンは、最初に3Dのデモをつくって、それを見ながらアニメーションをつくってもらいました。歌は霜月はるかさん、曲は岩垂徳行さんです。歌わせたいという話をしたら、岩垂さんが「霜月にしよう」とおっしゃって。そりゃもう、ぜひぜひって。
—— 霜月さんは『逆転4』のラミロア以来でしたっけ?
山﨑 ですね。でも、あのときはコンサートで歌っていただいただけなので、ゲームになったのは初めてです。
—— 音楽の尺に合わせてアニメをつくっていったんですか?
山﨑 そうなんですよ。しかも、3Dリアルタイムデモでレイファが踊るシーンとアニメも動きを合わせてもらっているので、アニメ監督さんはコンテを切る時点から苦労されていました。
ボクト逮捕。法廷開始!
—— ボクトが捕まってからは1日経ったわけですよね。
山﨑 そうです。法廷控室の係官の人、最初はいつものように背景だけで、前面に出てくる予定はなかったんです。でも、係官の存在がこの話だけではなくてほかの話でも出てきそうだったので、ちゃんとつくることになりました。あと異国のやばそうな感じを出したくて、銃を持って出てくるとインパクトがあるんじゃないかと。ちなみに、写真を撮るときの敬礼のようなポーズは開発チームみんなで考えました。
—— 海外のお店の前とかって、こういった銃を構えた警備員がいたりしますよね。
山﨑 まさにそれなんですよ。もちろん、どのくらい物々しくするのかは議論になったんですけど、海外に行くと駅とか空港でも警備に大きい銃を持った人がいるじゃないですか。それを見たときのドキッとする異国感を出したいなって思ったんです。あと法廷控室の背景も、構成的には日本と同じなのですが、異国感を出すために、右側のほうに祭壇を設けて祈りを捧げられるようにしました。
—— 日差しで舞っている埃が見えて、祭壇の神秘感が増しています。
山﨑 背景担当の手腕で、空気感が伝わってきますよね。この祭壇は有罪になることが確定している被告人が祈りを捧げる場所なのかもしれませんが(笑)。
—— そして、ナルホドくんが扉を開けて法廷に入ると全体がわかる演出が挿入されます。
山﨑 全体を見せたかったんですよね、レイファの冷たい威厳感をわからせる意味でも(笑)。
—— 今回はこういった演出のおかげで、法廷内の立ち位置がわかりやすいですよね。
山﨑 今回はレイファの立ち位置が結構変わるじゃないですか。証人席だったり、その前に立っていたりとか。なので、位置関係の変化をちゃんと描くことにしたんですよね。
—— 裁判長もここで初登場ですが、デザインはいかがですか?
山﨑 裁判長はきっとどこの国もこんな感じなんだろうなって(笑)。「有罪=死」というイメージにしたかったので、閻魔大王というのがデザインのキーワードです。
—— 金ピカ亜内も登場。
山﨑 タスキに亜内の亜の文字が連続して書いてありますね。
—— 聴衆が「ウル・ディーハラ・クライン」って合言葉のように言いますが、これはどういう意味が?
山﨑 某ロボットアニメに出てくるシュプレヒコール的なヤツです(笑)。日本語には訳せないですが、「クライン王国、万歳!」ぐらいの意味ですね。
—— そしてナルホドくん、ついに弁護席に立つ! ただ20年間弁護士がいなかったのに、弁護席があるのは驚きでした。
山﨑 たしかにそうですよね。もちろん、最初は弁護席を汚くしておこうとか、なくなっているんじゃないか? という意見もあったんです。でも、かといって弁護席を出してくるシーンをつくるのか? とかいろいろ問題もありました。結果、検討はしたんですが、自然に裁判に入れるのが大事なのでやめることにしたんです。
—— 弁護士がいなかった時代は、「御魂の託宣」が終わったあとすぐ有罪だったんですよね?
山﨑 そうです。まさにナルホドくんが入ってきたところまでで「ハイ終了。有罪」。なので、ひとつの裁判がすぐ終わるから、裁判長もそのあとに予定を入れているんですよね。
—— つまり傍聴人は有罪になる人を見に来ているだけと。
山﨑 そうですね。よく考えたら、罪人をやっつけるエンターテイメント的な意味合いもあるのかもしれない。
—— レイファにとってみたら、生まれたときにはすでに弁護士はいないわけで。
山﨑 ええ。レイファ的にもそれが当たり前と思って生活しているわけです。そうなるとナルホドくんに対してもこういう態度になりますよね。だから第1話が異国の法廷の恐ろしさを一番表現できていると思います。傍聴人がよく喋るというのもそこからきていますし。きっと20年前によっぽどのことがあって、当事者じゃなくても話が誇張されて受け継がれていってるんでしょう。
—— ちなみにレイファの後ろで揺れている煙は?
山﨑 雰囲気出しなんですけど、お香です。処理が大変なんですがスタッフが頑張ってくれました。
—— 裁判長の笑い方「カーッカッカ!」もいいですよね。
山﨑 この笑いを入れられたのはよかったです。基本的には普通の裁判長と同じにしようと思っていたんですが、ひとつだけ新しいものを入れたくて。シナリオを書いているときに笑わせたくなってきたんです。結果としてぴったりハマってよかったです。
—— とにかく習いごとに行きたいんですよね。
山﨑 そんなに大事なのかと(笑)。
山﨑 しかしこのへんからの流れを書くのは大変でした。結局、20年間弁護士がいなかった国にどうやって裁判を行わせるのか? 裁判を行う展開にするにはどうすればいいのか? というのは何度も書き直しました。
—— そういう意味ではそっちに導いてくれた亜内の存在は大きかったですね。
山﨑 たしかに亜内が罠に引っ掛ける形で裁判にもっていけたので、そのアイデアが思いついてよかったです。死ぬかもしれない裁判にナルホドくんを上がらせようとするわけですから、その恨みたるやよっぽどのものがあったんでしょうね。
ボクトに初尋問!
—— 初尋問で気を付けているポイントは?
山﨑 内容のわかりやすさと面白さです。さらに異国風にしたかったので、秘宝の箱を使いたかったんです。日本ではできない異国だからこそのものというところで発想しています。あとここで言うと、尋問開始や証言開始の文字デザインや演出を異国風にするにはどうするかと、たくさんの案を出して話し合いました。
—— 有罪などの文字も、異国風なのに日本語で読ませるわけですからね。
山﨑 そうなんですよ。漢字だけで異国風に見せるというのはかなりの手間がかかっています。いろんなパターンの字の中から選びました。
—— 最初の証言から尋問が開始されるまで、結構間が空きますがここにはどんな意図が?
山﨑 みんな弁護士に対して否定的なはずなのに、証言をしたからといってすぐに尋問にいくのはおかしいじゃないですか。なので、キャラクターたちがスムーズに尋問をしようとなるまでを描かないと説得力がないなと思ったんです。あと、尋問のチュートリアルをどう解説させようかというのはいつも悩むところなんですが、裁判長に教えるというパターンにできたのはよかったですね。これまでずっと違うパターンでやっていますけど、新しいシチュエーションだからできました。
御霊の託宣を執り行う
—— そして「御魂の託宣」一発目です。
山﨑 最初に考えたのもこの託宣です。ほかの話の託宣はまだ具体的になっていない段階で、システムを考えながら、シナリオに組み込んでいくという同時進行でしたね。で、この第1話でできた託宣をもとに、各話のシナリオでどう組み込んでいけるかを考えていくつくりにしていたので、本当にこの託宣がプロトタイプになります。
—— まずはレイファの3Dリアルタイムデモが入ります。
山﨑 この舞は大変でした(笑)。
山﨑 まず歌詞と曲をつくってから、モーションキャプチャーの方に振り付けをしてもらいます。そしてそのモーションをもとにつくっていくわけですけど、ふだんのバストアップで出てくるレイファのキャラクターモデルではこの動きに対応できないので、モデルの調整が必要だったり、ひらひらの布部分の動きはあとから手でつけていたりで。そこに一番見栄えのするカメラ位置はどこなんだろうとか、手間と時間がかかっています。あと背景をどうするのかも悩んで、最終的には暗くしましたけど、最初はナルホドくんとかもいた方がいいのかといった試行錯誤がありました。
—— 開発ブログでも触れられていましたが、御魂の託宣の演出方法はいかがですか?
山﨑 お香の煙にビジョンが映るものとか、人形に魂が宿ってそれを動かして事件を再現するものとか、いろいろとアイデアはありました。でも、ゲーム的なわかりやすさを重視してこの形になったんです。
—— 「少年の声」など、出てくる文字はレイファが見ているもの?
山﨑 これはみんなが見えているんです。設定的には、それぞれの人たちの国の言語でそれぞれ見えていることになっています。
ボクトのピンチにミタマル登場
—— レイファさんが論破されました。
山﨑 そしてその後、すごく重要なシーンになります。もともとのコンセプトどおり、ナルホドくんと依頼人の信頼関係を奪うところから物語が始まり、それを取り戻すというシーンですね。ここからボクトの信頼を得て逆転していく流れになるわけです。
—— ボクトの中でも逆転が起こった瞬間ですよね。
山﨑 そういうことですよね。ある意味、小さな革命が起こっているという印象にしています。今回の第1話は、弁護士のいない裁判からなんとか裁判にもっていくという段取りを追っていかなきゃいけなかったので、そこが一番の課題だったのかなと。最初は亜内がやろうと言って、裁判長が認め、ボクトがだんだん味方になっていくという。
—— 事件ありきだけども、いかにこの国でナルホドくんが裁判をできるかに重点を置いていったと。
山﨑 はい。もうひとつは、この国の裁判は弁護罪があるので、弁護士の命がかかっている裁判でもある。それでも弁護するんだという、ナルホドくんの感情をどうもっていくのかというのも重要視して、悩みながら考えていたところですね。
—— そして、きましたミタマル! ここで出す意図は?
山﨑 ミタマルはシナリオの第一稿にはいなかったキャラで、あとから出すことになりました。で、やっぱりボクトが一番追い詰められたところがいいんじゃないかなと。なので、そこまでにミタマルの名前だけを伏線ではっておいたんです。そうそう、最初は名前もミタマルじゃなかったんですよ。僕が書いたときは、仮名で「ヌーイ」って名付けてて。
—— イヌの逆ですね(笑)。
山﨑 『逆転』は、これまでトラのラトーとかもあったんで、その流れで仮に付けてたんですけど、意外とヌーイのネーミングの評判がよくて。ただ僕は仮のつもりだったのと、ラトーのようにサムネイルみたいなキャラではなかったので、ちゃんとした名前を付けてあげたくて(笑)。ヌーイ派も多かったんですけどね。
満を持してポットディーノ
—— ポットディーノがついに登場です。
山﨑 そして裁判長の習いごとの先生だったという事実(笑)。これは裁判長も少し敵側のような印象を与えたかったんです。ポットディーノのことを先生と呼んでいたら、弁護士側が不利な感じがするじゃないですか。
—— ポポポで歌わせるのも最初から?
山﨑 いや、歌わせようとは思っていましたけど、どこまでやろうかというのはあとで決まった話でした。最初はもっと手軽に、いわゆる汎用の曲にあてはめていくだけにするつもりだったんです。でもしっくりこなくて、ここは徹底的にやろうとなっていきました。
—— 以前、ロム容量を相当使ったと言っていましたが。
山﨑 そうなんですよ。証言でも歌うので、ひとつの証言がひとつの曲になるんですよね。ポットディーノのために何曲つくってるんだよ! っていう(笑)。
ここまで!
—— …といったところで、第1話はまだ続きますが記事はここまで!
山﨑 ここまでかー! じゃあ、ここから先はゲームで楽しんでください! 後半は第1話から逆転につぐ逆転の展開になりますので。
—— だいたい今回ので第1話の半分くらいじゃないでしょうか?
山﨑 そうですよね。だから最初から結構盛りだくさんになっています。
—— 『逆転6』全体の伏線もいっぱい入ってますからね。
山﨑 ええ。もうクリアしてくれた方は、そこを見ながらもう一回遊んでもらえるとうれしいですね。
—— 最後に第1話を総括していただきます。1話目って、ほかの話と作り方に違いはありますか?
山﨑 ほかの話とそんなに変わらないです。逆転のポイントから考え始めて前提をつくる。秘宝の箱もギミックありきでデザインが決まるみたいな。しいていえば、チュートリアルというのが重要なんです。例えば最初のボクトの尋問内容は考えどころでした。“わかりやすいけどつまらないものではダメ”。そのバランスが難しいところでした。あと、第1話ですからできるだけシンプルにするというのがあります。とはいえ、『逆転1』のシンプルさに比べたら、シリーズを重ねるごとに複雑化していっているとは思いますけど。
—— ポットディーノの設定は最初から決まっていたんですか?
山﨑 第1話は異国の紹介もしなきゃいけなかったので、レイファの舞を事件に絡めたかった。だから、奉納舞の演奏をしているポットディーノを出そうと考えました。ボクトが被告人なのも、異国を紹介する立場の人が必要だったからです。実は異国の裁判のアウェー感を出すために、第一稿を書いたときはもっとシリアスなノリで、真面目に弁護士を排斥していたんです。だけど『逆転』だからもう少しユーモアを足したいということもあって、裁判長が習いごとに行きたいから早く終わらせたいといった設定に変えていきました。
—— 話を書いた自分に対してダメ出しをしていくと。
山﨑 もちろんチームのみんなに確認してもらって意見を集めたりもしながらですけどね。シリアスな部分も描かないといけないんですが、そっちによりすぎたのでユーモアも足していく。なかなかバランスが難しいところではありますけど。結局、いかに異国で裁判をやるのかが一番大変だったんですよ。最終的にはナルホドくん自身が追い詰められて弁護罪で死を覚悟しつつ、それでも「弁護してボクトを守る!」という決意をするところは、ドラマティックに描けたと思うのでぜひ見てほしいですね。
第2話「逆転マジックショー」編はこちら
第3話「逆転の儀式」編はこちら
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