8年ぶりの完全新作!『ロックマン11 運命の歯車!!』開発スタッフインタビュー
カプコンより、『ロックマン』シリーズ最新作『ロックマン11 運命の歯車!!』(以下『ロックマン11』)が、Nintendo Switchでいよいよ発売となりました!
ニンドリでは「新生ロックマン開発スタッフに訊く ボスロボットデザイン秘話」と題した、『ロックマン11』インタビューを前編・後編の2号連続でお届け。ゲームに登場する個性的な8体のボスロボットたちについて、ディレクターの小田さんとアートディレクション&キャラクターデザインを担当した石原さんに伺いました。
ニンドリ11月号(9月21日発売)では「ブロックマン」「ヒューズマン」「ブラストマン」「トーチマン」、ニンドリ12月号(10月20日発売予定)では「パイルマン」「ラバーマン」「アシッドマン」「ツンドラマン」を掲載します。
↑これが『ロックマン11』に登場するボスロボット8体。「ニンテンドーeショップ」で配信中の体験版では左上の「ブロックマン」のステージをまるごと遊ぶことが出来ます
実はボスロボットデザイン秘話だけではなく、『ロックマン11』の開発秘話も同時に訊いており、NDWでは本誌に載っていないお話もあわせてお届けします!
<プロフィール(上の写真左から)>
小田晃嗣さん(ディレクター)
1991年入社。『超魔界村』『極魔界村』『ストライダー飛竜』等の2Dアクションゲームやオリジナル版『バイオハザード』、ゲームキューブ版『バイオハザード0』、近年発売のHDリマスター版も手掛けたベテランクリエイター
石原雄二さん(アートディレクション&キャラクターデザイン)
1991年入社。『ロックマンDASH』シリーズ、『ロックマンエグゼ』シリーズ、『流星のロックマン』シリーズなど、『ロックマン』の派生タイトルを多数手がける。近年は『ガイストクラッシャー』のデザインも担当
■8年ぶりの王道『ロックマン』完成!
―― 発売日までもうすぐですね。現在の心境は?
小田 ベタですけど、ドキドキしています(笑)。『ロックマン』30周年にあわせて発表した段階から反響を頂いていたのですけど、開発チームとしてはベストの回答を出したつもりです。
石原 僕は「やっと出せるな!」って気持ちが強いですね。早くユーザーさんに遊んでもらいたいですね。
―― 開発を振り返って、楽しかったことや思い出に残るようなエピソードがあれば教えてください。
小田 私は『ロックマン』の最終的な進化形って、2010年3月9日に配信された8bitテイストの『ロックマン10 宇宙からの脅威!!』ではなく、1996年12月17日に発売された『ロックマン8 メタルヒーローズ』以来と思っているんです。22年の時を経て、ようやく新しい『ロックマン』を最高のスタッフと一緒に作ることが出来たのが嬉しかったですね。その裏返しに、第1作『ロックマン』でほぼ完成されていると言っても過言ではないゲームですので、その骨太な面白さを残しながら間口を広げるゲームにしていくところが、最初から最後まで苦労しました。
↑1996年12月17日に発売された『ロックマン8』
(画面は『ロックマン クラシックス コレクション2』のものです)
石原 楽しかったことは無印『ロックマン』本編が作れたことですね。『ロックマン4 新たなる野望!!』が発売された頃にカプコンへ入社したのですが、当時行われていたボスロボットのデザインコンテストに個人でこっそり応募したんです。その時は「採用されたら断ろう・・・」とか相当厚かましいことを考えて(笑)、まあそもそも採用されなかったのですが、今回『ロックマン11』でボスのデザインを担当出来て当時の夢が叶いました(笑)。
小田 しかも8体全部(笑)。
石原 もちろん今回はファン目線ではなく、お客さんに楽しんでもらえるよう頑張りました。苦労したことは、『ロックマン』って歴史が長くて派生タイトルも多くて、ファンの好みも様々なので、どんな画にするかで結構悩みましたね。2Dドットのままでゴージャスに進化させようかとか、3Dで被写界深度を浅くしてリアルで複雑な画作りにしようかとか、その辺りの検討が大変で。最終的には、今回はレトロな路線にはいかず、変化球にもせず、ファミコンのイメージを元にしながらも素直に進化させたビジュアルにするのが良いだろうと判断しました。
↑『ロックマン11』のメインビジュアル
―― サブタイトル「運命の歯車!!」に込めた思いを教えてください。
小田 今回の新要素「ダブルギアシステム」を押し出しながら、ストーリーに絡めたものにしたいと考えました。活躍するギアと交錯するキャラクターにも注目してもらえたらと思います。
―― 声優陣もリニューアルしましたね。キャスティングはどのように決めていったのでしょうか?
小田 『ロックマン』を復活させるにあたって、これからのスタンダードとしてずっと長く愛される続けるものにするように、実力と新鮮さを兼ね備えた声優さんを選びました。
↑ロックマンの声優は福原綾香さん。公式サイトでサンプルボイスを聴くことが出来ます!
―― 「ダブルギアシステム」はどのようにして作られたのでしょうか?
小田 『ロックマン』って長年シリーズを重ねていくうちに、ある意味様式美みたいなものが出来上がりつつあると感じていて、上手い人のプレイを見ると、無駄のない固定した動きになっていっているように感じていました。それはそれでひとつの形なので、否定するものではありませんが、完成され過ぎていてパッと見た時に「僕、私には無理だな」ってゲームに捉えられかねない要因になっているって思ったんです。
―― 何度も何度も繰り返して覚えていくタイプのアクションゲームですし。
小田 そこで、『ロックマン』を触ったことがない人も「これなら自分に出来る」って思えるように敷居を下げ、ベテランの人には邪魔にならず、なおかつかっこよくプレイできるシステムになるようなシステムはどういうものがふさわしいかを考えたのが発端です。
―― パワーギアとスピードギアを切り替えて遊ぶのが楽しいですね。
小田 社内のテストプレイでは、最初はスピードギアの方が使いやすいって意見が多かったですね。それに慣れていくと、パワーもいいんじゃないのかとか、むしろあえて使わないでプレイしたりとか。プレイヤーの性格が反映されるシステムになったと思います。
―― 『ロックマン11』はどのような流れで作られていったのでしょうか?
小田 まず最初にボスのコンセプトを考えるところから始めました。その次にボスの具体的な攻撃方法やアクションを固めていき、それと並行してボスがどういう能力を使うのか、どのような悪さをした結果、舞台となるステージが荒廃していったのかを固めていきます。その間に石原の方でゲームデザインの中で実現出来るような姿や形、理に適ったものはどういうものかを考えていきます。今回はイラストテイストのグラフィックにしているのですが、それを3Dで表現しても実現するにはどうしたらいいかを考えていきました。
―― ちなみに最初に作ったボスは誰ですか?
小田 カプコンではゲームの本開発の前に、ビジネス的に成立するかどうかや品評を兼ねた「試作」を経営陣にプレゼンするんです。『ロックマン11』はこういうアクションをして、こんなボスが登場する…という、ゲームの要素がギュッと凝縮された「試作」を作ります。もちろん完成形ではありませんが、その「試作」がゲームの最後まで遊べないと面白さがわからない内容だと、評価の判断が難しくなります。その「試作」でどんなステージにしようかと考えて、作ったのがブロックマンのステージだったんです。
↑『ロックマン11』が正式に発表された時に公開されたブロックマンステージ
石原 まずはスタンダードなステージやボスってどんなものだろうと考えました。「『ロックマン』の面白さを現代のマシンに再現する」がひとつの命題でしたが、派手な演出などビジュアルの進化や魅力も伝えなければなりません。巨大なボスを登場させたり巨大化のイベントなどを作ったりしつつ、ブロック構成のシンプルな地形が無印ロックマン未経験のスタッフにも試行錯誤しやすいであろうということで、「試作」にブロックマンステージが選ばれました。なので一番最初に作られたのがブロックマンになります。
―― 今回は難易度が「NEWCOMER」「ADVANCED」「ORIGINAL SPEC.」「EXPERT」の4種類ありますが、バランスはどのように調整していったんですか?
小田 これは感覚に絡む問題なのですが、『ロックマン』って一律に難易度を作るのが難しいんですよ。そこで対象となる層に実際に遊んでもらってサンプルをとりながら、丁寧に難易度を調整していきました。開発中は何段階か制作のステップがあるのですが、区切りのいいところで難易度を反映して、それをチューニングチームの協力を仰ぎながらまた難易度を反映して…を繰り返して作っていきました。
―― 「NEWCOMER」でクリアしたら、次はひとつ上の難易度で遊んでみようと思いますし!
小田 『ロックマン』というゲームは、もともと学習効果を前提としたゲームです。難易度の差に応じても学習効果が表れるようにしてありますので、自分がうまくなることで難関を超える達成感を味わってもらいたいですね。もちろんパワーアップアイテムも用意してありますので、ご安心ください(笑)。あえてアイテムに頼らないでクリアを目指すやり方にも気付いてもらえればなぁと思っています。
―― 最新ゲーム機での登場ということで、性能面で恩恵を受けたことは?
石原 やはり画をゴージャスに表現出来た事が一番大きいのですね。また、今回はエフェクトにも力を入れなければと思っていました。平面的な横スクロールアクションで、画面上のプレイヤーも小さめなので、『ロックマン』という遊びを体験する上では最適なものの、どうしても迫力という点では弱くなってしまうんです。そこで遊びやテンポを損なうことなく迫力や進化を感じられるよう、エフェクトを派手に、元気にしました。エフェクトを担当したのは3DS『モンスターハンターストーリーズ』を担当していたスタッフなのですが、アニメのようなパッキリしてもりもりとした質量のある感じにしてほしいとお願いしたところ、思っていた以上のものが出来たのでとても良かったです。
小田 ベースは従来の2Dスタイルと言いながらも中身は3Dで作っていますので、いわゆる2.5Dと言われる全く別物と言っていいほど作り替えています。ゲームデザイン、ビジュアル、サウンドも含めて、すべてにおいてパワーアップしていると思います。ただ、最新のゲーム機のマシンパワーに頼って作ってしまうと、単に豪華さを追及しただけになってしまい、『ロックマン』の持っているシンプルでわかりやすい遊びやすさが削がれてしまいます。要所を押さえながら、イラストのような温かみを持った画面で、最初から最後まで楽しめるようにするところに神経を割いていました。
石原 なので、当たり前のことですけど、ちゃんと「『ロックマン』に見えるように」を強く意識しました。
8年ぶりに登場する『ロックマン』本編11番目の新作アクション!
これぞ王道! という内容に仕上がっていますので、ぜひ遊んでみてくださいね。
『ロックマン11 運命の歯車!!』は現在発売中。価格はパッケージ版が5389円(込)、ダウンロード版が4990円(込)、コレクターズパッケージ8629円(込)です。
©CAPCOM CO.,LTD. 2018 ALL RIGHTS RESERVED.
©CAPCOM CO., LTD. 2017, 2018 ALL RIGHTS RESERVED.
ロックマン11 運命の歯車!! 公式サイト