ソニック生誕25周年記念 ソニックチーム座談会 後編(2016年12月号より)
1991年に誕生した、セガの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』は2016年に25周年を迎えました。そこで『ソニック』シリーズを長年彩ってきたキーパーソンのみなさんにこれまでの歩みを語っていただきました。
後編では、25年の月日を一緒に紡いできたファンとの関係性、そして現在(いま)を中心に語り合います。
ソニック生誕25周年記念 ソニックチーム座談会 前編
<ソニックチーム プロフィール>
プロデューサー 飯塚 隆さん
1993年から、『ソニック』シリーズに関わる。現在は渡米し、シリーズの統括役を行う
好きなキャラ:シャドウ
飯塚 唯一出生に関わる過去を語っているキャラですし、彼には深みがあるんですよね
アートディレクター/イラストレーター 上川 祐司さん
『ソニック』シリーズなど、おもにキャラクターデザイン・イラスト・監修を担当
好きなキャラ:ソニック
上川 限定はしたくないですが、描いていて楽しいのが表情もポージングも豊かなソニックです
サウンドディレクター 瀬上 純さん
『ソニックアドベンチャー』シリーズ、『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』などを担当
好きなキャラ:シャドウ
瀬上 『ソニックアドベンチャー2』で最初に作ったシャドウ関連の曲は「ラジカルハイウェイ」でした
サウンドディレクター 大谷 智哉さん
『SONIC THE HEDGEHOG』『ソニック カラーズ』『ソニック ロストワールド』などを担当
好きなキャラ:シルバー
大谷 初登場作品を担当したので思い入れがあります。キャラ設定からテーマ曲の方向性を考えました
25年経つ今もなお、新たに息づく『ソニック』
飯塚 前編では、私たちが開発に加わった時の話や『ソニック』の25年間を振り返りながら話してきましたが、改めて25年という月日は長いようであっという間でしたね。
上川 特に20周年からの5年間が早くて。
飯塚 CGのTVアニメーションを中心とした新しいブランドの『ソニックトゥーン』(海外の名称は『Sonic Boom』)への取り組みがありましたからね。
上川 そうなんです。TVアニメの制作が始まる段階から私にも話が来て、アニメ版のキャラデザインですとか、これまでのソニックとの整合性なども監修していたので時間が経つのがあっという間で。
TVアニメ「Sonic Boom」。北米とフランスをはじめ、現在では世界100か国で放映され親しまれている
飯塚 上川はかなりの初期段階から関わってくれているんですよね。TVアニメを作っているのは海外チームが主体ではあるんですが、私たちもソニックを作ってきた立場として日本からアドバイスをして共同で作っています。『ソニックトゥーン』の世界はコメディで、「村人やエッグマンとのドタバタさ」「コミカルで小粋なコミュニケーション」といった面白さを楽しんでいただくのがTVの目的なんです。なので、日本のみなさんにおなじみのソニックを登場させると、コンセプトとしてちょっと違ったものになってしまうという部分もありました。
瀬上 これまでのタイトルでは、エッグマンとあそこまで近しい関係ではないですからね。
エッグマン
自分勝手でわがままな、自称・悪の天才科学者。三度の飯よりメカが好きで、人の迷惑をかえりみず世界をエッグマンランドにしてしまおうと目論む
上川 『ソニックトゥーン』では、いままでのソニックシリーズとの違いを明確にするため、ポイントとなるスカーフやテーピングがされたデザインでの提案を受けました。自分の中でも現行のシリーズとの違いを受け入れるのに少し時間がかかりましたが、結果的には世界観を含め、新しい展開を広げることができたと思っています。原作側ではなかなかこういった思い切った変更はかえって難しいですから。
飯塚 そうそう、『ソニックトゥーン』で初めて登場した「スティックス」というキャラは、海外の制作側で「元気で野性的な女の子のキャラ」がほしいという要望をもとに、日本にいる上川にデザイン原案を担当してもらっているんですよ。
スティックス
森に住む、明るく自由奔放なアナグマの女の子。ブーメランの名手。
大谷 スティックスといえば、実は僕にも『ソニックトゥーン』に接点ができたんです。『マリオ&ソニック AT リオオリンピック™』(※1)のBGMに、スティックスのテーマ曲が必要という話になりまして。TVアニメやゲームにもスティックスのテーマ曲がなかったので、作曲してほしいと依頼がありました。そこでまずは飯塚さんにキャラについてのヒアリングをしたら、「ジャングル育ちの野生児で、クレイジーでハチャメチャな非文化人で、ガラクタ集めが大好き」など、見た目の可愛さに反した設定を聞かされて、そのギャップでスティックスのことがちょっと好きになりました(笑)。
※1『マリオ&ソニック AT リオオリンピック™』
ニンテンドー3DS・Wii Uにて発売、またアーケードにて展開された、任天堂とセガが共同開発するスポーツゲーム。2016年夏にブラジルのリオで開催された夏季オリンピックが舞台(画像はWii U版)
好きになってくれる人がいまもいてくれるんです
飯塚 前の20周年の時には、日本がプロデュースと開発を手がけた『ソニックカラーズ』(※2)や『ソニックジェネレーションズ』(※3)というタイトルが続いて、いい20周年が迎えられたと思います。そこからは海外開発タイトルも入ってきて、TVアニメも立ち上がり、「ソニック」がいろんな方向に向き始めた。これまでを見てきても特に大きな動きのあった5年間だと個人的には感じています。
瀬上 単にプロデュースしているだけではなかったというわけですよね。
飯塚 アメリカ赴任も今回で3回目になりますしね。
上川 10周年から5年刻みで大きなイベントをやらせていただいてますが、「ああ、もうそんなに経ったんだ」というのはそのたびに感じています。イベントに用意するグッズやスライドの素材を見ても懐かしいですし、登壇してあの時はどうだったという話をすると「あれから〇年も経っているのか」と驚きます。
飯塚 この間、私はサンディエゴのイベントで『ソニック』のファンに会う機会があったんですけど、25年もタイトルが続いていると、メガドライブの時代に生まれていなかった方も「ソニックが好きです」と言ってくれるんですよね。もちろんメガドライブの『ソニック』シリーズが好きですという人もいれば、『ソニックアドベンチャー』シリーズ(※4)、いまでは『ソニックトゥーン』から好きになってくれたファンとも会うことができました。そういった場面でも、25年の歴史を感じるといいますか。いろんな方に『ソニック』を楽しんでもらっているんだな、と感慨深いですね。
瀬上 年齢層も幅広くいてくださる印象ですね。
飯塚 全員とお話ができているわけではないんですけど『ソニックアドベンチャー』シリーズ、『ソニックヒーローズ』(※5)あたりからのファンが特に多いのかな、と思っています。あとは、「ソニックX」(※6)のアニメで知りました、という人もイベントでは多くて。
瀬上 ああ、確かにそれも多い!
大谷 イベントなどで常に感じていることですが、少しずつ新しい層のファンに出会うことができているのも『ソニック』の面白いところだなと個人的に思っているんです。25年が一本道の歴史ではなくて、波のようにいくつもの新しいレイヤーが生まれては重なって大きな海になって、たくさんのファンの皆様が形作られているんだなと感じています。
※2『ソニックカラーズ』
2010年にWii・ニンテンドーDSで発売。不思議な生物「ウィスプ」がもたらす「カラーパワー」によって、地中をドリル状態で掘り進んだり、空中浮遊をしたり、光となって瞬間移動したり…といった多彩なアクションが楽しめる
※3『ソニックジェネレーションズ』
2011年にニンテンドー3DS・Xbox 360・プレイステーション3で発売された、ソニック20周年記念作品の総称。2Dのクラシックと3Dのモダンソニックが共演
※4『ソニックアドベンチャー』シリーズ
1998年にドリームキャストで発売された『ソニックアドベンチャー』からソニックは3D化されモダンソニックに。より多彩なアクションが楽しめるように正統進化し、ソニックにとってターニングポイントにもなったシリーズ。画面は『ソニックアドベンチャー2バトル』
※5 『ソニックヒーローズ』
2003年にプレイステーション2などで発売。総勢12人ものプレイキャラクターが登場し、3人1組のチームを操作して進めていく。ストーリー的には『ソニックアドベンチャー2』の後日談となる
※6 「ソニックX」
2003年から2004年までテレビ東京系列で放送されたテレビアニメ