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絶望と孤独によって怪物となってしまった少女「ケイ」の旅を描いた『Sea of Solitude: The Director’s Cut』クリエイターインタビュー&コンセプトアートを初公開!

クリエイターインタビュー&初期コンセプトアート
ゲームを開発した「Jo-Mei」のコーネリアさんと、パブリッシャーを担当した「Quantic Dream」のギョーム・ド・フォンドミエールさんに、本作についてお聞きしました。
開発スタッフから送られてきた初期コンセプトアートも公開します。


Q.この世界はどのような所で、主人公の女の子は何を目指しているのでしょう?
コーネリア 『Sea of Solitude』は表向きは、巨大で不気味なモンスターと水没したヨーロッパの都市が登場する幻想的なアドベンチャーゲームです。プレイヤーはボートに乗って、廃墟と化した都市の屋根の上を探索しながら、この街とその住人たちに何が起こったのかを探ります。
しかし、これはあくまで “表面上” のストーリーであり、その奥にあるのは圧倒的な「孤独」の感覚と、その感覚に苦しむ人々が自分自身をどう捉えているのか、どのような痛みを経験しているのかについての物語なのです。
本作では「希望」、そして「孤独」を克服した私の個人的を反映させています。これらはすべて主人公のケイを通して描かれており、この世界を探索し、不思議なモンスターたちと出会うことで、ケイがどのようにしてこの世界に陥ってしまったのか、彼女の心の痛みと、彼女の目的、そしてどうすればこの深い暗喩的な世界を変え、最終的には克服することができるのかを知ることができるでしょう。
Q.レトロライクな街並が印象的ですが、モチーフになった場所はありますか?
コーネリア 私の故郷・ベルリンが一番のインスピレーションの源です。もう20年間もそこに住んでいます。「シュレジシェス・トーア」や「ビューロウ通り」という駅のように、ベルリンの実在する場所がゲーム内に登場します。
Q.本作に影響を与えたゲームや映画などがあればお聞かせください。
コーネリア 『サイレントヒル』シリーズ、特に『サイレントヒル2』は、人間の不穏な深層心理を比喩的に描いていて、他に類を見ない優れたゲームだと思っています。次に影響を受けたのはスタジオジブリ作品で、人間の世界とクリーチャーやモンスターの幻想的な世界が重なり合っている、心のこもった物語を描いていると思います。ジブリの細部へのこだわりやパステルカラーへの愛情は、まさに私の大好きなものです。
Q.BGMが効果的に使われていると感じました。音についてのこだわりをお聞かせください。
コーネリア 冒険の重要な場面では、ムードを盛り上げるために曲を使用しています。ほとんどのBGMを環境音として設定したのは、プレイヤーが自分の世界に没頭できるようにするためです。
Q.襲ってくる友達を照明弾で浄化することがありますが、これは何かの比喩でしょうか?
コーネリア ゲームのあらゆる場面が何を意味しているのか、個々のプレイヤーがそれぞれ自分の考察を行っているのは素晴らしいと思います。私から言えることとしては、ゲーム中に登場するクリーチャーやモンスターは、実際に物理的に存在するものではないということ。つまり彼らは、『恐怖』や『欲望』といった、人々が頭の中で生み出した存在なのです。
ただこれ以上話すとプレイ中の体験を台無しにしてしまうかもしれませんので、このくらいでご容赦ください!(笑)
Q.登場キャラクターのカラーリングにはどのような意図がありますか?
コーネリア それぞれのカラーリングは、ケイや、ゲーム内で出会う他のキャラクターの感情を表しています。家々の色については、青空をできるだけ美しく表現したいという想いを込めています。
家のてっぺんがカリブ海に浮かぶ小さな島々、そして傾斜した屋根の部分はビーチのように見える、水没都市を想像してデザインを行いました。例えばベルリンの家々の屋根のようなリアルさは残しつつも、砂浜を思い起こすような色に微調整したりしています。
Q.水位の変動は何を示しているのでしょうか?
コーネリア ケイとモンスターの両方の感情の変化を表しています。『悲しみ』と『幸せ』は水位に大きく影響しますが…おっと、これ以上はネタバレになるのでここまでにしておきましょう!
Q.ディレクターズカット版でセリフの再収録が行われましたが、どのような所に注力されましたか?
コーネリア 本作では脚本全体にかなりの力を入れています。手始めに、言葉ではなく経験によって伝わってほしい部分を精査して、元の台本から多くの言葉を削ることにしました。その上で、核となるメッセージをより効果的に伝えるために、言葉遣いに更なる磨きをかけています。
Q.後半のビル内で赤い炎のような風が吹き出す機械があります。なぜケイは触れても大丈夫なのでしょうか?
コーネリア これはちょっとしたネタバレですね!(笑)  赤い炎は、ビルの最上階にいるモンスターが、自分の人生でチャンスを逃したことや人間関係について憂うときに発する痛みの音です。彼の痛みはビル全体に響き渡っており、ケイを怖がらせ躊躇させますが、物理的にダメージのあるものではありません。
Q.1行で表される章タイトルの表現に至った意図はどのようなものでしょう?
コーネリア ここで私が申し上げられるのは私自身が音楽や歌の大ファンであり、人々がそれらの中に意味や感情を見出す過程に感銘を受けているということです。
Q.「Quantic Dream」初のサードパーティタイトルをNintendo Switchで出した思い出を聞かせてください。
ギョーム それぞれの作品のパブリッシャーになることによって製作ラインをしっかりとコントロールでき、完全な創造の自由と、当社のビジョンを達成するために必要な手段を提供することができました。また、クリエイティブなスタジオを開発期間を通してサポートすることにより、一流のパブリッシングの機会を提供することも可能になります。それは自由に満ちてスリリングなことであると同時に、我々にとっても、パートナーとなるスタジオにとっても、重要な責任を伴うものです。
我々はこれまで任天堂のゲームに携わったことがなかったので、すべてを一から学ばなければなりませんでした。しかし、任天堂のみなさんはとても親切で、一緒に仕事をするのは楽しく、これによってプロセスが本当にスムーズになりました。また、任天堂のゲーム機ならでは特徴に迅速に対応してくれた私のチームについても、本当に誇りに思っています。おかげで問題もなく、予定通りに作品を完成させることができました。

 

 

 

 

 
▲「Quantic Dream」ギョーム・ド・フォンドミエールさん

Q.『ディレクターズカット版』の新要素はどのように決まっていったのでしょうか?

ギョーム 私たちにとって「Jo-Mei」とのコラボレーションは、非常に面白い経験でした。1年半ほど前にドイツでディレクターのコーネリアに会ったのですが、彼女は「オリジナル版の発売前にもっと完成度をあげておきたかった」と語ってくれました。その後、私はそのオリジナル版をチームとプレイしてみたのですが、私たちも彼女と同じ意見を持ちました。つまり、素晴らしい体験かつ感動的なストーリーではあるものの、いくつかの要素はまだ改善の余地があると感じたのです。また、ディレクターズカット版を出すにあたり、Nintendo Switchをプラットフォームとして選ぶことは、ごく自然のことのように感じられました。
後日、私は「Jo-Mei」に電話をかけて、Switch専用の、より洗練されたバージョンを作りたいと申し出ました。私たちは『Sea of Solitude』の体験をより良くするために何ができるのか、また、Switchに最適化させるにはどうすればいいのか、長い間議論を重ねました。シナリオの完全なリライトおよび数か国語での新規音声収録のほかに、カメラの調整や操作方法など、ゲームプレイの完成度を高めようと決めました。ディレクターズカット版では、ジャイロスコープを使用したフレアコントロールなどSwitchならではの機能を追加したほか、フォトモードも充実しており、ゲームの演出を思う存分に楽しむことができます。


●初期コンセプトアート


▼ケイの家に襲い掛かった災害
▼舟の行く手に立ちふさがる嵐
▼さまざまなモンスターたち

Sea of Solitude – The Director’s Cut  ©2019-2021 Jo-Mei GmbH. Published by Quantic Dream. Quantic Dream and the Quantic Dream logo are trademarks of Quantic Dream. Nintendo Switch is a trademark of Nintendo. All other trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.

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