【インタビュー】都市伝説が生まれたきっかけを特定!『都市伝説解体センター』解体秘話

ゲームを最後までクリアしてもらうのが墓場文庫のこだわり
ここでは、ゲームシステムに込められた思いや、作り手によるストーリー解説(ネタバレあり)などを聞いていきます!
ゲームオーバーにならないシステムの理由
―― 都市伝説の「特定」など重要な局面で選択をミスしてもゲームオーバーにならないのが印象的でした。
おでーん 僕らの作品はゲームオーバーがないんです。理由としてはクリアしてもらわないと墓場文庫が作るゲームのおもしろさが理解してもらえないのでは、と思っているからですね。
―― 選択肢も減って見えるんですね。
おでーん そうなんですよ。とにかくクリアしてもらうためにいろいろなことを手厚くしていこうと考えていたんです。ゲームオーバー時になにもなくただ冷たく突っぱねられるよりも、なにかちょっとおもしろいことをいわれるバリエーションがあればゲームオーバー自体がデメリットでなくなりますし。
林 ゲームオーバーではなく間違った選択ですね。そんなときにもなにかユーモアがあれば楽しく思えるし、もう1回やってもらえるんじゃないかと。
おでーん そうですね。開発段階では…ちょっとひどい内容でしたけど(笑)。
林 僕は墓場文庫のメンバーはユーモアのある人が多いと感じてるんです。なので、作り手の顔がそういうところに見えるのが墓場文庫の魅力のひとつだと思っています。
―― たしかにわざと間違えて反応を試しました。
林 方針として、ゲームを最後までクリアしてもらうのが墓場文庫のこだわりでもあるので、それはもう徹底してやってもらいました。たとえば、3択を間違えたときに選択肢が減るというのも、そうしたほうがユーザーは最後までやってくれるから。細かいところは僕からオーダーを出すことが割と多かったです。
―― あきらかに狙っていると思える選択肢もありました。
林 あれは墓場文庫のユーモアですね。絶対間違ってるのに選んでみたくなるものが結構ありますね。
名は性格を表していた? 主人公の誕生秘話
―― 主人公の名前はどんなふうに決まっていったのでしょうか?
おでーん 廻屋渉は、当初の企画段階からもう既に決まっていました。最初はプレイヤーキャラクターで考えてたんですけど、あまりにも人間離れしすぎていたんです。クールでいろんなことを見抜くので現場に行って物事を発見するというよりは、別の場所から安楽椅子探偵のようにすごい推理をしてくれるキャラクターのほうが向いているとなったんです。
―― たしかにそうですね。

おでーん それで、新たに今のあざみポジションとなるキャラクターを作ったんです。企画当初は別の名前で、廻屋渉が、廻って歩くというイメージから生まれたのに対して、直里翔子っていう、まっすぐ飛んでいくというイメージのキャラクターでした。ジャスミンは止木休美なので、休むというイメージからですね。だから廻る、まっすぐ行く、止まるというような移動にちなんだ名前になっていました。
―― 今のあざみとはかなり印象が違いますね。
おでーん はい。翔子を作ったときに、もう少しオカルトめいた分かりやすい名前のほうがいいだろうと考えたんです。そこで20世紀初頭に日本で透視実験を行った福来友吉博士から福来姓を使わせていただきました。名前については見た目はハツラツとしているし、かわいらしく服装が黒ゴスな女の子にあざみという名をつけて違和感を狙っています。

―― キャラクターのビジュアルですが、ジャスミンは「やすみ」という名前のわりに活発ですよね。
おでーん あざみと好対照なキャラクターというのが原点ですね。最初はダルいキャラクターで、ヘアスタイルもツインのお団子でギャルっぽく。服装もちょっとラフなイメージで作りました。
―― おばけでも実体があったら殴れるっていってるんですよね。
おでーん そう、そういうちょっと姉御肌なキャラクターではあります。
林 そうですね。ふたりの関係もジャスミンが助けているばかりじゃなく、あざみが助けてみたりもしますので、そんなところも見ていただければと思います。
おでーん チーム内ではジャスミンはもうひとりの主人公だと思っているんです。1番人気のキャラクターですし、そういう意味ではジャスミンに肩入れしたシナリオになっているのかなと思います。

林 集英社ゲームズの中でもジャスミンが人気なんです。弊社の執行役員の森通治もジャスミン推しです。逆にSNSのファンアートでは圧倒的に廻屋が多いんですね。発売前の段階からもう予想だにしないクオリティのものを上げていただくのでびっくりしています。
おでーん チームメンバーはほぼ全部拝見しています。
林 広報セクションやマーケティングのメンバーもすごいすごいといいながら拝見していますね。レスはご迷惑かと控えて「いいね」だけだったりしますけど、ほんとに感謝してうれしい限りです。
物語に散りばめられた都市伝説について
―― 都市伝説への思い入れをうかがえないでしょうか。
林 ゲーム中のSNS調査をしているといろんな都市伝説が見つかって、コレクションページに解説が出るようになるんです。これは我々の情熱の、ひとつの現れなんです。
―― 結構な数がありました。
林 本当はもっともっとシナリオに都市伝説を絡めたかったんですが、ボリュームが大きくなりすぎちゃうんで入れられなかったものなどをSNSの噂として散りばめていました。
―― 両面宿儺の話題もありましたが、これは集英社さんだからですか?
林 僕らはオーダーしてないので、墓場文庫が忖度してる可能性はありますね。
おでーん 多少はあります。ただ、どちらかというとネットの巨大掲示板の怪談についての書き込みが、最近の都市伝説では結構大きな幹になっていると思うんです。そこで両面宿儺という呪物の話が盛り上がっていたので触れた感じですね。
林 ネットから発生してる都市伝説みたいなものは、結構調べて入れていますね。
―― アフリカのモケーレ・ムベンベというUMAが話題に出たので驚きました。
おでーん 都市伝説って比較的範囲が広いじゃないですか。UMAもいればUFOもあるし、あとは神話や歴史的なことまでたくさんあったんです。
林 日本のものと海外のものと両方入れることで、ワールドワイドに都市伝説に触れてほしいという思いがあります。日本人は知っていることから世界的に誰でも知っているようなものまで広範囲に扱うため、選定時に「入れる入れない」論争は結構やりましたね。
おでーん 随所にいろんな都市伝説を入れたいという視点でいうと、都市伝説の「特定」シーンで出てくるマヤのピラミッドやイルミナカード。そういった形で入れるようにしています。

―― 都市伝説を解説してくれるトシカイくんは、どのように誕生したんでしょうか。
林 企画当初にいろんなビジュアルイメージを固めていく中で、墓場文庫の方が都市伝説解体センターがあるなら、マスコットキャラがいるんじゃない、みたいな流れで生み出してくれたんですね。で、その後センターの役割がいろいろ変わっていく中で、実は1回ゲームからいなくなってるんですよ。
―― リストラされてしまったんですね。
林 なんですが、ストーリー中に見つけた都市伝説をコレクションするページで、トシカイくんに解説してもらえばいいんじゃないと復活したんです。

都市伝説やオカルトの雰囲気はシンセで表現
―― 曲はどのように作られていったんでしょうか?
おでーん メインテーマは作詞・作曲がMURASAKIさん、ボーカルをかたたかんな(Kanna KATATA)さんにお願いしていますが、ゲーム中のBGMは墓場文庫のあだPという音楽家に作ってもらいました。彼はもともとジャズ畑の人間で『和階堂真』のときはジャズっぽい曲を書いてもらってたんです。
―― アドベンチャーはジャズ系も似合いますね。
おでーん ですが『都市伝説解体センター』を作るにあたって、都市伝説とかオカルトを表現するにはどういうものが合うか考えたときに、シンセサイザーを使って現代的なものや抽象的なものをイメージできるような曲にしてほしいという注文を出して作ってもらったという流れになります。
林 僕とおでーんさんは音楽の趣味が結構合うんですが、ふたりともシンセサイザー系の音楽が好きすぎるんですね。なので、割と音楽については口うるさかった気もします。
おでーん そうですね。
林 それがあだPさんに届きすぎたかもしれません。限定版のCDには主要な曲は全部入れたと思うので、ゲーム中にいいなと思った曲はほとんど入っていると思います。
これから都市伝説を解体したいと思う方へ
―― 今まさにプレイ中だったり作品に興味を持たれた方へメッセージをお願いします。
林 プレイ中の方はぜひ最後まで遊んでほしいと願っています。僕らもシナリオ的にも最終話が一番おもしろいように作っていますので、エンディングからスタッフロールのラストまで全部見てほしいと思っています。
おでーん 基本的にはネット配信のドラマのテンポをイメージして作りました。ひとつのストーリークリアが2時間くらい。ドラマを1シーズン最終話まで見るような感覚で、今までゲームで遊んでない人でもクリアまで楽しんでいただける作品になっています。ホラーが苦手な方でも楽しんでもらえるオカルト作品ですので、そこは安心して楽しんでいただけると思います。
林 興味を持ってくださっている方へ。今回は本当にがんばって手に取りやすい価格帯に値段を抑えてます。3連休ですべてクリアできるくらいのボリュームですので、手軽な気持ちで手に取っていただき小説やドラマを見るような感覚で楽しんでもらえたらいいなって思っています。
おでーん クリアした方はぜひSNSでネタバレに配慮しつつ感想を書いていただけないでしょうか。墓場文庫チームがすごいスピードでいいねを押すと思います!
林 また、発売記念企画として、2月18日から3月9日(現在は終了)の期間、動画と電話を使って謎解きをするオンラインイベントを開催しています。詳細は、集英社ゲームズのX(@ShueishaGamesJP)「集英社ゲームズ【公式】-NEWS-」などをご覧いただけれたらと思うのですが、本編ではボイスのなかった廻屋くんの“声”を声優の岡本信彦さんにお願いをしており、とてもステキなものになっているので、ぜひお楽しみいただければ幸いです!
―― ありがとうございました。次回作はもう動いているんでしょうか?
林 おでーんさんには話を振っているんですが…。
おでーん しばらく休みつつ新しい作品のアイデアを練りたいと思っています!
林 集英社ゲームズとしてはぜひ次もいっしょに創りたいと思っています! まだ今作が完成したばかりなので、ゆっくり相談していければと思っています。
【ネタバレ注意!】作り手によるストーリー解説
まだ本作を遊んでいない方は、薄目で飛ばしてくださいね。
作品全体について
おでーん 『都市伝説解体センター』は1話につきひとつの都市伝説が登場して、それを調査するという1話完結の構成になっています。なので各話違った都市伝説を楽しんでいただけると思います。
あとは、それぞれ別々のものを調査しているはずなんですけど、うっすらなにかがつながっていくという連続ドラマ性も楽しんでいただけると思います。最終的になにがどのように繋がるのか、ぜひプレイをして体験いただきたいと思ってます。
一話 「闇から覗く目」
林 最初のお話なのでどういうキャラクターなのか理解してもらえるよう、すごくこだわった感じですね。

二話 「鏡像から迫る死」
おでーん 心霊ものと事故物件がテーマです。SNSがどういう反応をしているのかを含めて身近な出来事のように感じられると思います。だんだん明らかになっていくジャスミンの正体も楽しんでいただけると思います。

三話 「辺獄への階段」
林 ゲストキャラがたくさん出るところは三話ならではです。
おでーん 1番ミステリーっぽいストーリーです。クローズドサークルのような場所で登場人物がひとりずついなくなったり、異界と呼ばれるところに入り込んでいく今までの調査と少し毛色の違ったシナリオを楽しめます。

四話 「漏れ拡がる邪悪」
おでーん 僕が大好きな横溝正史の世界です。因習が強く根付いている村で呪いの正体を探り、呪われてしまった依頼者やジャスミンを助けようとするお話です。
林 プロットを読んだときに、これはおでーんさんの趣味だなと思いました。

五話 「罪人の影」
林 ここから全体のお話が急変していきます。これを機にエンディングに向かって大きく舵を切る、すごく大きな山場として作っています。

ニンテンドードリーム5月号では『都市伝説解体センター』総力特集を掲載!
廻屋渉の表紙が目印のニンドリ2025年5月号。
ゲームを手がけた墓場文庫の開発チーム4名&「奇々解体」の作詞作曲家・シンガーの方と魅力を掘り下げた総力インタビューを掲載! ぜひこちらもチェックしてください。

▼こちらの記事もお楽しみください



<商品概要>

発売日:2025年2月13日(木)
対応ハード:Nintendo Switch / PlayStation 5 / Steam
価格:パッケージ版 3,740円(税込)/ ダウンロード版 1,980円(税込)
ジャンル:怪異を解き明かすミステリーアドベンチャー
CERO:15歳以上
プレイ人数:1人
▶︎公式サイト
ⓒ Hakababunko / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES